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ローカルニュース [戻る] 契約と代償 投稿日:2003年2月14日 Mizuho こんばんは、諸君。昨日は良い夢を見れたかな?これから話す物語は、ある有り触れた農夫に巻き起こった、それでいて類稀なる、奇奇怪怪な品物だ。常人には理解する事が難しいだろうが・・・。しかし世の中には、確かにこんな話が実在するのだ。そういう話を聞くのも良い経験になるだろう。どうか足を止めて耳を傾け、私の話を聞いて欲しい。もし機会があるならば、是非とも貴方にも体験して欲しい物語だからね。*evilgrin* 昼間の晴天が、まるで嘘のような嵐の晩だった。激しい風の中、館とは呼べぬぼろ小屋が、家主を風から守ろうと頑張っている。その家主である農夫は、ふとドアをノックする音に気付き、歩み寄った。こんな晩に、いったい誰の来訪だろう?ドアの取っ手に手をかけると、何時もなら軋んだ音を立て不平を鳴らす木戸が、すーっと開いた。 「どなたさんかね!?」問い掛け、ランタンで照らしたその先には、真っ黒な、そう、漆黒と言っていいほどの、深い黒味のあるローブに身を包んだ男が立っていた。そして、目の在るべき所からは、異様な赤い光が放たれている。 「!!」この客は・・・、人間ではない。農夫は知識からではなく、本能から悟った。そして次の瞬間、その彼の声が耳からではなく、直接頭に聞こえてきたのである。 黒衣の男「農夫よ・・・、農夫よ」 農夫「・・・・・・」 黒衣の男「そう脅えるでない、農夫よ」 農夫「おらは、死んだだか?いや、殺されるだか・・・」 黒衣の男「殺す!?それが望みなら今直ぐにでも叶えるが?」 農夫「!!」 黒衣の男「それがお前の望みでは無いはずだ。そうだろう」 農夫「おらの、望み?」 黒衣の男「貴族となり大きな屋敷に住み、美人の嫁を貰って裕福に暮らす、それがお前の見る夢だ。そうだな?」 農夫「・・・。そうだ、おらは金持ちになりてぇ・・・」 黒衣の男「ならばその願い、私が叶えてやろう」 農夫「本当だか?いや、そんな上手い話あんめぇ」 黒衣の男「なぁに・・・、お前には直に娘が授かる事になっている。その娘を私に差し出すだけでいい。それがお前の夢を叶える条件だ」 農夫「おらん所には、嫁っこなんぞ居ねぇ、誰も来ねぇだよ」 黒衣の男「貴族に成ってしまえば、此の世の殆どは思いのままだ。金も、女も力もな。違うか!?」 農夫「本当だか?生まれてくる娘を差し出せば、おらは貴族になれるだか!?」 黒衣の男「ああ本当だ、約束しよう。さぁ誓え、契約の時間だ」 永遠とも思われる一瞬が過ぎ去った後、農夫は絞るように声を出した。その表情からは迷いが消え、決心と打算が見て取れる。 農夫「・・・誓う、誓うから望みを、おらを貴族にしてくれ!」 黒衣の男「クックックックックッ、良いだろう。契約は成立だ。娘が二十歳になったその年に、必ず迎えに行くからな。ゆめゆめ忘れるな?」 農夫「・・・・・・」 強風が吹き荒れ、ドアを力強く叩き閉める。その音で農夫はやっと我に返る事が出来た。悪い夢だったのか!?いや、そうではない証拠に、雨と汗の滴りでその体は冷たく濡れそぼっていた。農夫は薄ら寒い思いを感じながら、口の中でなにやら呟くと、ベッドへともぐり込み寝入ってしまった。 この後、農夫がどうなったかだって?どうやら興味が出てきたようだ。教えてやるのは簡単だが、そうもいかない。今度は自分のその足で情報を得て、自分の目で真実を見つめる番だ。冒険者諸君よ、この物語が諸君らと共に在らん事を私は祈っているよ。それじゃあまた、何処かで会えることを楽しみに・・・。 5:28 2017/06/22
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by horibaka
| 2017-04-26 05:26
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