BNNアーカイブ 黒い寺院の幻影 |
ワールドニュース [戻る] 黒い寺院の幻影 投稿日:2000年2月21日 Orrin Frye 全シャード 英雄を夢見たあの日 - そう、戦いの流れを変えようと敵地にひっそりと潜り込み、重要な情報を盗み出そうとしていたあの日が呪わしい。少なくとも私は自らを自信に満ち溢れた有能な戦士、つまり徳の守護者であると考えていた。そしてこの最悪な戦況の中で手柄を立てることができれば、上官にも一目置かれる明るい将来が開けると信じていたのだ。 しかし、その思いは邪悪な建造物の前にもろくも崩れ去った。かつて城壁の中で徘徊するいかなる生物でさえ倒せると信じいていた自分の愚かさを笑わずにはいられない。だが笑い声の変わりに口から出てきたのは、絞られたような耳障りなかすれ声でしかなかった。 事実、私はTrinsicの城壁の中を徘徊する邪悪な生き物の小隊から逃げ回ることが精一杯で、ひきずるような音を立てるアンデッドのパトロール隊の足音に全神経を集中させながら、暗い路地裏から路地裏へと身体を忍ばせた。街の中心部にたどり着くまでに数隊をやり過ごすと、そこに見えたのは邪悪な雰囲気を漂わせる、あの建造物だったのだ。 人々の集う憩いの場は今や恥ずべきその黒いタワーに完全に乗っ取られた形となり、薄汚れ、古代を思わせる石材は今にも崩れ落ちそうに見える。そして建造物そのものから放っていると思われる強力な魔力がなければ、間違いなく古代の遺跡と見まがったことだろう。 そのとき、アンデッドの小隊が横切り腐りかけた手で石材に触れた。それはまるで建造物に秘められた魔力を復活させる最後の儀式にも見えた。事実、やつらがその儀式を終えると同時に石材には命が宿ったようだ。建造物の上には有毒なガスが取り巻き、巨大な稲妻エネルギーが渦巻いていた。しばらくすると、息をするのもはばかるほどの悪臭と轟音の相乗効果は耐えがたいものになりつつあった。そのあまりの激しさにその場を去るべきだったかも知れないが、断固たる決意のもと私は最後まで調査を続けることを決意した。 そのとき女が前に歩み出た。それは前線からの土産話として途切れ途切れに聞かされた噂を寄せ集め、自分の思い描いていたMinaxと寸分違わぬ姿であった。だが、Minaxが黒い建造物から漏れる光の中へ足を進めるに従い、私は自分の間違いに気付いた。その姿は女ではなく悪魔という言葉がふさわしいだろう。すさまじい轟音と絶えがたい異臭に彩られた表情、そして狂犬のようにうなる姿を見たとき、私の身体は恐怖に凍り付いていた。身体のすべての健はその場から逃げることを望んでいるにも関わらず、立ち尽くしたまま凝視せざるを得なかったのだ。やがて彼女は集まったアンデットを見回すと両手を空中に高く掲げた。 彼女の凶暴な表情は悪意を隠さない冷たい微笑みに変わると、骨だけの軍団でさえも一歩後ずさっていた。そして彼女は近辺に生者を感知したかのように私に視線を向けると、腕を下げてその指先を私に向けた。その瞬間に狂ったように駆け出してTrinsicの街を一目散に逃げなければ、私はきっと恐怖にかられたまま彼女の意のままにされていただろう。 何時間も市内を走り回ったようにも思える。Nystulのゲートに走りこみ、今日こうしてカモメの鳴き声と舌に塩辛い海の風を感じながら目覚めることができたのは、まさに幸運であったとしか言いようがない。 Britainの港がこれほど安全で光輝いて見えたことは、かつて一度もなかったように思う。 21:51 2017/03/13
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by horibaka
| 2017-02-02 21:50
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