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挑戦

投稿日:2001年12月12日


全シャード
険しい崖から独りジュカの要塞を見下ろしながら、ダーシャ(Dasha)は気に入っている皮の鎧を脱ぎ、その金属部分を磨いていた。暖かい風が彼女の斑模様の毛皮を撫でるように吹いた。その黒曜石の様な目は、炎の合図を確認しつつ、目の前に広がる谷を捉えていた。

彼女の背に広がる夕焼けは、空を広大かつ豪華な劇場へと変えていた。しかし、谷の下から空を見上げる者に高く、隆起した岩山の間にある彼女のシルエットを捉える事は出来なかった。彼女は要塞の壁の上で警備に当たっていたり、要塞の周りを取り囲むように建っている家に住んでいるような、個人としてのジュカを理解出来ずにいた。町から窺える唯一の動きといえば、ランタンの灯火を点けている事くらいであった。調理の際の火が羽状の煙となって空に立ち昇っていく。夕刻の風は、秋がやがて来る冬を拒絶しているかの如く、穏やかな微風となって谷間を吹き抜けて行った。

そのミーア戦士は、先端が平坦になっている巨礫の上に、鎧を整理しながら腰掛けた。その時は鎧を必要とはしていなかった。ジュカの警備兵がこの岩の多い坂をよじ登って来る事は無かった。これらの乾いた山々の唯一の住人は、訳の解らぬ言語を用いる人間の一種族であり、彼らの荒い造りの武器は、彼女にとって恐怖でも何でもなかった。風の中で鎧を着た時、重要なその一夜を導いてくれる偉大な先祖の魂を呼び出した。ジュカがトーチに火を灯し、二つの種族の試練が始まろうとしている。

腹の辺りに僅かばかりの刺激を感じ、彼女は魂の到着を悟った。その感覚は手足や顔に広がっていき、やがて全身に力と冷静さがみなぎっていった。彼女は魂の到着を歓迎した。先祖達はミーアの叡智を構成していた。そして長く、充実した人生を送り、後により純粋な存在になっていくのであった。クリスタルの尖塔にある天上の都市から、彼らは大地と木々とを駆け抜ける若い魂に手助けしながら、下劣な王国を覗っていた。ダーシャは彼らの助けに感謝した。彼女は尊敬を受ける戦士であり将校であったが、彼女の生命は二百回の夏至を迎えるには及ばない物であった。彼女はまだ光明を見出すには若すぎた。もし、彼女が今日死ぬのならば、彼女の魂は若いミーアの体に宿り、物質的な存在における戦闘や交渉といった事について教えることになるだろう。そして、彼女の高い功績から、数世紀の経過だけで、彼女は来世にある聖なる尖塔に住む高尚な先祖の列に加わる事になるだろう。

もちろん、今夜死ぬ訳には行かなかった。彼女は屈強のジュカ戦士に対面し、彼から説明を求めねばならなかった。ジュカの軍はミーアの故郷である森林を破壊した。彼女は敵が名誉の伝統を破ってまでそういった事をした理由を知りたかった。古来からのジュカとミーアの均衡は、その回答にかかっていると言っても過言ではなかった。新たな光が街の中で光った。一点の星のような炎が石壁の要塞にある高いタワーの頂上に現れた。鼓動が高鳴るのがわかる。それこそ合図であった。ウォーロード・ケイバー(Warlord Kabur)が彼女の提案に応じ、1時間以内に現れるというサインであった。

永遠の存在である先祖達の導きによって加護されながら、彼女は肩に掛けた鞄の中に装備を詰め込み、薄暮の中へと進んで行った。

かつてダーシャが古の森に住んでいた頃、夕暮れはゆっくりと眠りにつく前の瞬きのようにしてやって来るものであった。彼女はその安らぎを覚える光景を目にする事は無くなった。この辺りの山々では、夜は石や雑木林を飲み込みながらやって来る黒い影が押し寄せるようにして訪れるのであった。彼女は迷宮の薄暗がりを音も無くそっと歩いた。彼女の目的地は、二つの鋭い角を持った岩に挟まれた洞窟であった。そしてそこでは安らかな風が吹いていた。地上で洞窟の扉が開くまで、彼女はクロスボウの矢を装填していた。そして彼女は冷たく暗い入り口に歩み寄り、装備を付け始めた。そのような事をしつつ、彼女は一世紀の間に渡って戦ってきた敵に関する知識を思い起こしていた。

ジュカは強固な肉体と意志とを持った粗暴な種族であった。高度な技術と文化がありながらも、それらは生きている事の究極の実感を彼らにもたらす事は無かった。この荘厳なまでの喜びへの衝動が戦いへの強い欲望に変わるのは至極当然の事であった。ジュカの氏族たちは情け容赦ない熱情を以ってお互いに戦った。そして、ある一つの氏族がやって来て、他を支配するようになると、その結合したジュカ全体が、今度は隣人であるミーア社会へと攻撃対象を変えてきた。二つの種族間の戦争は伝説と歴史とを通じて知れ渡る事になった。

更に、ミーアと違って、ジュカは生命の再来という事に重きを置かなかった。これらの翡翠色の肌をした戦士達は、一回限りの人生を送った。その死に名声を伴えば名誉の大聖堂へ、不名誉な死であれば忘却の彼方へと送られるのであった。その様な事から、ジュカは躍起になって栄光と名誉とを追求するのであった。彼らの社会の中核には、揺ぎ無い徳、勇気と率直さ、そして敵への敬意という伝統が根付いていた。彼らの魂は、それらの掟と言ってもいい物への忠実な厳守を基盤としていた。ジュカはその事を道(the Way)と呼んだ。まるで、それ以外の物は存在しないかの如く。

ジュカの軍はミーアの森を焼き尽くした段階で、彼ら自身の道を踏み躙った。彼らの謎多き、新たな支配者であり、奇妙な名前のエクソダス(Exodus)がそうするように命じたのだ。しかしダーシャは、ジュカが不名誉に繋がるような事を説得されても強要されても決してしないという事を知っていた。薄汚れた呪法。それのみが、この劇的な変化を説明する事が出来た。彼女はウォーロード・ケイバー自身に問い掛ける事で、その真偽を確認しようとしていた。それを知ることによってのみ、ミーアが復讐を果たす術を知る事が出来るのだ。

先祖達はダーシャの心に平静をもたらしてくれた。それは、ミーアの古来からの故郷を破壊し尽くした将軍に会って逆上してしまいそうな彼女にとっては、ありがたい物であった。

中から見ると、洞窟の入り口は目立たないようにした逆茂木のようであった。巨大な影が、その隙間を埋めた時、光が消えた。ダーシャはたじろいだ。とても低い声が轟いた。『お前が私のようにしても、私は驚いたりはせぬがな。お前に残されている勝利への希望はただ一つ。戦う事であろう。』

ウォーロード・ケイバーは洞窟にランタンを持ってやって来た。もう一方の手にはクロスボウを持っていた。彼の手に比べると、それは小さく見えた。ケイバーは大柄なジュカの中でも巨人戦士と呼ぶに相応しい体格をしていた。強固な鋼の鎧と金のすね当てが、彼の大きさをより強調していた。全てのジュカと同様に、彼もまた彼女にとっては気難しく思われた。鼻はなく、爬虫類のような目をしており、その口は小さく、そして硬かった。しかし、ケイバーの表情はそれ以上の何か他のものを明らかにしているようであった。何かは解らないが、その何かが彼の視線をより険しいものにした。彼女は自らも睨みつける事で対抗しなければならないような気がした。

『私に会いに来たのだろう。』彼女は言った。『ブラック・デュエル(Black Duel)の儀式に則って。私はお前が為した不名誉な行いの説明と贖いを求めにやって来たのだ。』

将軍は低く唸るような声で言った。『お前の残していった通牒とシルクのスカーフは確かに受け取った。ジュカの習慣について、よく知っているようだな。』

『私はお前の祖父が生まれる前から、お前達ジュカと戦ってきているのだ。ジュカはいつでも道を尊んできた事も知っている。だからこそ、お前はブラック・デュエルを尊重し、秘密裏に私に会いに来たのだろう?』

ケイバーのエメラルドの唇がねじれて作り笑いとなった。『私はお前達の故郷である森を焼き尽くした。それなのにお前は私がまだ古い掟などに囚われているとでも思うのか?』

『お前の祖父や父は名誉の決闘を重んじてきた。お前の一門への名望がお前に同じ事をさせるはずだ。』

『私は新しい価値を創造しようとしているのだ。勝利という名の価値が私を手招きしているのだ。』彼は狭い入り口から、より天井の高い洞窟の奥深くへと入って来た。洞窟の外からは多くの足音が金属音を伴って鳴っているのが聞こえてくる。彼女は目を細めて言った。『邪魔するなら、外のものは全て消す。』

『邪魔するべきブラック・デュエルなどありはしない。ここに来たのはお前をエクソダス様の御前に連れてゆく為。一族の中でも多くの事が変わったのだ。尤も、ミーアに解って貰おうとは思わぬがな。』

その時、彼女は生命の危機にある事を理解していた。ケイバーは道を捨てたのだ。彼は一対一の決闘を彼女を捕らえる策略として受け入れたのだ。すぐに突入してくるジュカの戦士の嵐のような足音で洞窟中が満たされる事になった。槍の先端がケイバーのランタンの灯りを受けて光った。

全てのミーア戦士と同じく、彼女の武器無しでの戦闘の技術はジュカの戦士のぎこちない戦斧の振りを圧倒していた。霧の如く彼らの周りや、その間を動き回って彼らの皮のような体の継ぎ目を撃ち、彼らの鎧自体を武器にしてしまうかのように、鋼の鎧を血管や骨に当たるように打ち当てた。戦士達が一山の塊となった時、彼女は洞窟の闇を破るような光を放つ呪文を素早く唱え、彼らを蹴散らした。数秒後には岩肌のあちらこちらで無残な死体が散らばっていた。

外では他の戦士達が叫んでいた。ダーシャは深呼吸した。全軍を壊滅させる事は不可能だ。しかし、目標は目の前にあるのだ。ウォーロード・ケイバーに斬り込む直線位置に障害となるジュカはいなかった。彼女はその巨大な戦士のもとに跳んだ。彼は彼女が飛び掛ってくるのを見て大声をあげ、彼女の方向に向けて倒れた戦士のハルバードを振り回した。彼女はその必殺の一撃をかわし、その武器の長い柄を掴んだ。光のような速さで動き、彼女は地面に倒れた。それと同時にケイバーは洞窟の奥へと投げ飛ばされた。

彼はダーシャが洞窟の床で唱えたルーンを通り越すと同時に消え去った。

彼女も素早く後を追った。魔法の呪文は彼女を光で包む。彼女は山のより深い場所にある他の洞窟の中に現れた。彼女は足元にある同じルーンを他のジュカがやって来ないようにブーツでかき消した。そして、装備を付け直し、驚いているウォーロードを目の当たりにしながら、自らの高貴さを取り戻した。

彼らは決闘の場所として設けられた輪状に並べられた蝋燭の中にいた。巨大で暗い窪みが彼らの周りに浮かんでいた。来世のような凝縮された静けさの中で、ダーシャは腕を組み呟いた。『ブラック・デュエルに訴え出たのは邪魔なしで話ができると思ったからです。後でどうなっても構いませんから、どうか暫くこのままで。』

揺らめく蝋燭の火がジュカの目の中の憤激を明らかにした。彼はハルバードの柄を二つの拳で互いに握り直していた。『お前が戦いによって私を説得しようというのなら、ダーシャよ、お前はもう成功していると言っていいだろう。偉大な母の名にかけて、ミーアの森をそうしたように、お前も切り刻んでやろう!』

嵐のように彼は彼女がわからない位の連続した攻撃を浴びせてきた。彼女は彼のハルバードによる打撃を避けるため、宙返りして後方に押されざるを得なかった。その隙に、彼は次の攻撃の用意をした。ほんの暫くの間、ダーシャは再びウォーロード・ケイバーについての判断を誤っていないのだろうかと考えた。高貴な先祖達は彼女の中にいた。しかし、彼らですら不名誉なジュカなどに遭遇した事はないのだ。古の叡智はこの奇妙なジュカの軍の暗黒の復活に打ち勝つ事が出来るのであろうか?

ダーシャは自分自身に向かってぼやいた。まず戦おう、それから尋問すればいい。もし誤りの弁解よりも死を選ぶのならば、私が殺したも同然だ。それはそれでいいだろう!そして彼女は図体の大きいウォーロードと同じ位に猛然と攻撃を開始した。彼女の目は復讐への強い欲求に燃え立っていた。








5:22 2017/05/24

by horibaka | 2017-05-07 05:21 | その他 | Comments(0)
BNNアーカイブ はじまり

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はじまり

投稿日:2001年11月27日


全シャード
偉大さは時間により泡沫へと帰すが、栄光は忘れられる事は無い。古き時代の風は、とても静かに過去を歌う。
―ミーア(Meer)の諺

ダーシャ(Dasha)は木の枝に腰掛け、黒の軍勢が彼女に向かってくるのを眺めながら、微笑んでいた。手元には小さなクロスボウがあったのだが、急いで矢を装填しようなどと慌てる事も無かった。森が厄災から彼女を守ってくれる盾となってくれる事を、彼女は知っていた。故に、その様な事は百年の間繰り返され、そしてこれからも続く事だろう。

谷の隆起した部分に朝日が差し掛かると、まるでダムが崩壊したかの様に、黒い軍勢がスロープからなだれ込んで来た。太陽の光で照らされたヘルメットと矢じりが鈍く光る。その場の空気が、無数の軍靴の音で揺れ動いた。しかし、谷底の背の高い入り組んだ森は、断崖が波を押し返すかの様に彼らの前進を妨げた。木の障害は丹念に織られた織物のようで、軍の陣形は単なる一列の縦隊にさせられてしまうのだった。軍の流れは、森の内部の暗い一本の紐の様にして消え失せてしまうのだった。

立ち並ぶ木の端に身を隠されて、ダーシャは彼女を支えていた丈夫な枝の下で起き上がり、足を組んだ。朝日のベールが彼女の頬を包んだ。彼女はその暖かさに微笑んだ。銅色の光が、上等な毛皮のコートに照り返した。長身で活動的な彼女の体格とは対照的に、細やかな班模様が入っていた。若いミーア人の女にしては、ダーシャは特に危険な女に見えた。彼女はドレスを着る事も無かったし、スカーフを巻く事も無かった。むしろ、一見して戦士とわかる様な、金属や皮を凝らした装備を好んで身に付けるのだった。薔薇色の髪の毛が、彼女の肩に血を散らすかの様に広がっていた。朝の風を受けて、彼女の高く尖った耳は、引っ張られるかの様に立っていた。

また始まった、と彼女は苦笑いを噛み殺し、そう思った。ジュカ(Juka)は攻撃し、私たちはそれを追い払い、永遠の均衡と言う物がまた新たに明らかとなるのだ。何世紀にも渡る失敗で、ジュカ達が懲りなかったのか、と思うかもしれない。それでも、彼らは攻撃の手を緩めようとはしない。戦闘こそ彼らの本能なのだ。先祖は遙か昔にそんな事を記している。

どこか遠くで、金切り声を上げて騒いでいるのが聞こえて来た。彼女は苦も無く、今いる枝から頭上にある非常に高い枝まで飛び上がった。森の天蓋を破り、木の海とも言える森全体を見渡した時、その騒動の元を見つけた。すると、葉の間から、北へ向かって深紅の何かが飛び出した。大きく、赤い羽根が空にはためく旗の様に広がっていた。それは森から逃げようとしているガーゴイルの部族だった。侵略者達は、それらを追い払おうとしている。しばらくの間ダーシャは、その野蛮な生き物が低く浮かんでいる朝の雲の中へ、滑り込む様にして行くのを眺めていた。それは、彼女が不本意にも魅入ってしまう様な、野性的な美しさと言えるものを持っていた。

葉の間から何かが立ち昇って来た。それは風に揺らされながら立ち昇る煙の柱だった。しばらくすると、遠くの緑樹の方に黒とグレーのカーテンが出来上がっていた。何かの燃え殻の臭いがした。耳を澄ましてみる。野営の場所を確保しているのだろうと彼女は思った。今回、ジュカは長期戦を練っているに違いない。それはそれで私の望むところ。森は秋の喜びに満ちている。ジュカの執拗な包囲攻撃は、秋と言うその喜びの季節へのスパイスの様なもの。思いっきり楽しんでやろうじゃない。ウォーロード・ケイバー(Warlord Kabur)には、足をへし折って追い返す前に、お礼を言っておかなくちゃ。

長老達は、彼女の報告した事態の進展に興味を持っていた。報告が終わると、彼女は音も無く木々の間に潜り込み、森の奥深くへと潜行していった。眺めていると目が回りそうな、膨大な枝のもつれは暗い海の様だったが、ダーシャにとっては束縛から解放される場所だった。その中で彼女は何物も追いつけない、班模様付きの稲妻となるのだった。鋭敏なミーアの特性とはその様なものであり、彼らは自然と古くからの盟友だった。どこに住もうと、その土地と友となり、風のスピードで大地を駆け抜けた。

ミーアの堅牢な要塞は、森の中心に位置する孤島の如くそびえ建っていた。その塔や胸壁は魔法建築の不思議さと言う物を体現する物だった。その巨大建造物を構成する石の一つ一つが、力の流れを魔法のそれと同じくしているルーンによってマークされているのだった。過去に稀ではあったが、ジュカの軍がやっとの思いでその魔術の要塞に辿り着いた事があった。しかし決して彼らの衝角は、その呪文のかかった壁に穴を開ける事は出来なかった。その城は不屈のミーア文明の象徴であり、彼らの古代文化の中心だった。

グレーの獣毛を身にまとう長老達は、城の中のそれぞれの豪奢な部屋の中に居た。彼らは古の知識の守護者であり、上質で光り輝くシルクのローブと、黄金を縫い込んだかの様なマントで自らを優美に覆っていた。魔導師アドラナス(Adranath)は、彼らの中でも最も偉大な長老だった。銀色の獣毛に身を包む彼は長身で威厳に満ちており、彼は人々の永い歴史を通して、何世紀にも渡る伝説を漂わせつつ、堂々と歩くのだった。アドラナスは知識を司る者の中で最年長であり、要塞の半分くらいの年齢を重ねていた。その年齢が彼に不思議な雰囲気を与えていた。彼の心構え、手法は、世界が人々に苦痛を与える場でしか無かったとき、その時代を生きた人々に知れ渡る事となった。

時々、彼がダーシャの方を向いていない時、彼女は年月がその老人の感覚を鈍らせているのかと思う事がある。そんな事を考える自分に嫌悪を覚えながら。今、彼女は謁見の間で報告を提出していた。そこは影と香りの支配する厳粛な場所だった。飾り気のない壁は彼女が話すのを聞いているかの様だった。

アドラナスがその知らせを聞いたとき、憂鬱さが溜め息をより深くした。彼の年老いた目は暗くなった。『我が子よ、何とも悲運な前兆を運んで来たものだな。我々の要塞の魔術は森の活力に依存している。それ無しでは、要塞の壁は脆くも崩れる事だろう。ジュカが木々を焼き払えば、我々の力も弱まってしまうのだ。』

ダーシャは頭を垂れた。『偉大なる我が主に、恐れながら申し上げます。彼らにしてみれば、要塞の壁を役に立たなくする為に、全ての森林を焼き尽くさなくてはならなかった事でしょう。彼らは今までその様な卑怯な行いをした事がありません。』

『して、ジュカ達がそれをせぬと言い切れるのか。』

『彼らは確かに好戦的、攻撃的です。が、彼らは確固たる名誉の伝統を守っています。彼らは自らの徳を裏切る様な種族ではありません。私はそんな彼らと何世代にも渡って戦って来たのです。』彼女は成し遂げた事を誇るかの様に、顔を上に向けた。

アドラナスは背もたれの高い椅子にもたれ掛かり、唸る様に言った。『お前は姿を見せない彼らの主を見くびっているのだ。彼はここ10年の間に、ジュカに大きな変化をもたらしたのだぞ。』

『彼らがエクソダス(Exodus)と呼ぶ存在の事ですか?顔を見せる事すら恐れる者など、脅威でもありません。』

『彼はジュカに魔術を教えた。』

彼女は眉をひそめた。『治癒とちゃちな魅了の術ですよ。ジュカがどれほど頑張ったって、私の方がまだまともな魔法使いです。偉大なる我が主よ、私にはあなたの不安が理解できません。ジュカとミーアの間にある古よりの均衡は、今まで揺らいだ事がありません。今回の攻撃の何が危険だと言うのですか?』

『エクソダスが危険であるのだ。』魔術師は低く唸る様に言った。『彼は、言わばこの世界にあってはならぬ存在。私は、奴が古よりの均衡を忌まわしく思うだろう事を恐れているのだ。厳しい冬は間近だ、我が子よ、ジュカが我々を打ち倒せば、我々は破滅に直面するだろう。我々は恐らく生き残れないだろうと、私は危惧しておるのだ。』

その一言を聞いた瞬間、ダーシャはアドラナスの重ねた年齢が、彼を弱気にしているのだろうと考えた。伝説ですら時が経つにつれて色褪せていく運命にあるのだ。妖しい優雅さを纏いつつ、彼女は老魔術師の部屋を辞して、森へ戻っていった。そこでは彼女の同志達が、彼らの魔法の故郷を守る為に集まりつつあった。彼女は、アドラナスの予言を忘れようとした。それは老いぼれた頭の生んだ妄想に過ぎないと。

遥か昔に先祖達は、年輩の者の忠告を無視してはならないと、子孫達に警告を残していった。しかし、ダーシャや同志の戦士達には、その教訓が故郷を滅ぼすものにしか思えなかった。

恐怖は故郷に迫り来る火の壁である。防衛戦を戦っている間、ミーア達は同時に二つの敵と戦っていた。ジュカの戦士の執拗な猛攻撃と、彼らが放った怒り狂う炎だ。ジュカの軍は、地獄の大火を消そうとするミーア勢の、全ての努力を退けた。太陽は黒い煙の嵐の向こうに見えなくなった。ダーシャは恐怖を覚えながら、起こっている事を把握した。攻撃目標は城ではないのだ。ジュカの指導者であるウォーロード・ケイバーは古代の森その物を焼き払おうとしていたのだ。それはダーシャが知るジュカの誇りを大きく傷つける禁忌だった。

敗北は、灼熱の赤い炎と灰や燃え殻の吹雪の姿を取りやって来た。ミーアが崩壊した要塞を放棄すると、ジュカの軍勢が煙の中から現われ、ミーアをまるで朽ちかけた木を切り倒す様に打ち倒していった。ダーシャは、大虐殺が青々と茂る森の大地を蹂躙する中、生存者と共に逃げ出した。その森は百年の間、彼女の故郷だった。それは一週間たらずの内に消滅したのだ。

彼女と同志の戦士達は、長老達の救出に成功した。この様な状態になってさえ、魔法での復讐をと考える者もいた。しかし、ダーシャは違った怒りを抱いていた。目眩がする様な憂鬱さを感じた途端、彼女の黒曜石の様に黒い目が鋭さを増した。何を為すべきかを知ったのだ。

アドラナスは正しかった。彼はエクソダスが想像もつかない様な魔術によって、ジュカ達を蝕んで行ったと言っていた。敵に対抗する作戦を練る為には、ジュカに何が起こったのか知る必要があった。それは彼女が、ジュカの指導者であるウォーロード・ケイバー自身に問い質すべき事だった。顔を突き合わせて、説明を求めるだろう。もし、満足行く回答を得なければ、剣を突き合わせる事になるであろう。

そうなれば、自分は満足できると彼女は知っていた。そして長老達は、今度はジュカの上に虐殺を降り注ぎ、永遠の均衡はまた新たに明らかにされるだろう。それが、脇道にそれ得ない歴史の正しい道筋という物だ。それを祖先達は、はるかな世代の昔から予見していた。ここにおいて、それを為す以外の選択肢がないのなら、ダーシャが迷うことは何も無かった。








5:27 2017/05/23

by horibaka | 2017-05-06 05:26 | その他 | Comments(0)
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到来

投稿日:2001年11月5日


全シャード
パワークリスタルの鈍い輝きが、ニスタル(Nystul)の薄暗い研究室中に光を散りばめ、様々なガラスの実験器具がその光を映し出している。研究室の窓から入る月の明かりが彼を優しく包みこんでいるかのようであった。その年老いたメイジが気だるそうに腰掛けると、パワークリスタルの微かな紫の明かりは、彼の顔の心労から来るしわを、より深くしていくようにも見えた。かなりの時が経過したようだった。彼の助手をある会議を召集するために遣わしたのだが…。太陽がとっくに暮れてもその姿を見せることなく、蝋燭はすでに捏ねた蝋の塊と化していた。その間ずっと、彼はクリスタルを眺めながら、研究室のテーブルを殆ど離れてはいなかった。

この世界は力を持った指導者を必要としている、と彼は思ったが、だからといって、彼の信念を曲げるわけにはいかなかった。紫の光がしばらくの間、彼の目に映っていた。そして、少し目を細めてそれを見ていた。王はいつの日か、これがブリタニアにやってくる事を知っていたに違いない。姿だけを変える不死の邪悪…。その邪悪が地を這うようにしてこの地に再びやってくる事はない、と考えていた自らの愚かさに恥じ入っていた。もっと長く、彼をこの地に留めておくべきだったのだ。彼は行かねばならなかった。それは分かる。しかし、この地は彼の不在により苦しんでいるのだ。私は民衆が彼が居なくとも、この邪悪を追い返せること願うのみだ…。

軽く肩を叩かれたことで、ニスタルは目線を上へとやった。彼の実習生であるクレイニン(Clainin)は目が合うと、少しばかり驚いた。自分の師匠の邪魔をしたのではないかと、その実習生は不安げだった。ニスタルはすぐに振りかえり、またクリスタルを眺め始めた。

『申し訳ございません。あの・・・、お邪魔するつもりはなかったのですが・・・、。よろしいでしょうか?』クレイニンは年老いた師匠と彼の友人の陰鬱な表情を気に掛けながら、ゆっくりと話した。『こんな暗い研究室、先生、お好きでなかったでしょう。蝋燭をつけましょうか』

『放っておいてくれ、クレイニンよ。余計な事をするな。年を取ったのじゃろう・・・、お前が近づくのに気付かなかったのじゃよ』彼はゆっくりと立ち上がったが、その視線はクリスタルに注がれたままであった。『皆、集まったのか?』

『はい、ニスタル先生。皆、玉座の間に集合しております。彼らを集めるのに手間取り申し訳ございませんでした。クレット(Krett)に至っては、作業場から連れ出すのに、もう少しの所でフレームストライクを使うところでした。クリスタルが手に入って以来、彼は昼夜問わず、ゴーレムを作り続けているのです』

『クレイニンよ、お前にはよく説明できたじゃろうか?』ニスタルは突然振り向いて、彼の目前の弟子を見た。

『何でございましたでしょうか?』クレイニンは困惑した。その時、彼は師匠の顔に、今まで見た事のない不安げな表情を見たのだ。

『お前への訓練は十分じゃたろうか?私はお前に自らと一体となれる魔法の知識を授けたじゃろうか?それらはエーテルの謎を自らの力で切り拓いていけるものじゃろうか?それらはまた、この国を守るべく、本当にお前に全ての魔法を駆使させる事が出来るものなのじゃろうか?』

『私は…、私が思いますに、才能という点であなたの力と比較する以前に、私は何年という間、あなたの下で修行してまいりました』クレイニンは彼の師の様子をうかがいつつ、戸惑っていた。『今まで受けてきた教えの中で,あなたからの教え以上のものは受けた事がありません。あなたが城を留守にしているとき、研究室を整理整頓しておく事だって出来ます。あの…、スライムと魅惑の魔法で少しへまをやらかしましたが、階段の酸で解けたところはきちんとカーペットで隠しておきましたし…』

『お前はずっと従順で献身的な私の弟子じゃ、クレイニン』ニスタルはそのメイジの肩に手を置いた。『いつの日か素晴らしい魔導師になるじゃろう』

クレイニンは少しばかり不満げであった。『あの…、私に期待してくださっているのは、とても光栄なのですが…、一体どうなさったのですか?』

ニスタルは悲しげに微笑んだ。『また、次の機会に話そう』彼はクレイニンをドアのほうへと導いた。『まさに今、ブリタニアが我々の智慧を必要としているのじゃ』





城の玉座の間は静まり返っていた。ただ、クレッツが床一面にクロックワーク=アッセンブリー(clockwork assembly)を散らかして作業する時のカチカチという音を除けば。シャミノ(Shamino)は椅子にもたれかけ、容易そうにダガーを宙に投げては、それを器用に掴んでいた。玉座の側にはデュプレ(Dupre)が立っていた。その戦士の体格は広間を照らし出す蝋燭の明かりの中でより威厳を増していた。彼はまるで彼の主君がまだそこに座っているかのように、王の席のすぐ横でそれを守護するかの如く立っているかに見えた。

クレイニンが歩いて行き、集まっている者達に静かに一礼した。彼らは頷きで彼を迎え入れ、そしてニスタルが部屋の入口の二人の衛兵に話し掛ける間、それを待っていた。衛兵は広間から出て行くと、ニスタルの後ろで扉を閉めた。彼は集まった者達より、一段高い場所に立ち、そこにいる者の興味を引くかのように、周りを見渡した。『皆、ご多忙の中、万事多難を排し、お集まりくださった事、恐れ入ります』

シャミノはダガーを掴み、音をたてずにそれをベルトに収めると、もたれかかるのを止め、背筋を伸ばして座り直した。『クレイニンがせかすので、出来る限り早くやってきました。彼が言うには、ニスタル殿、あなたが何か発見したとの事でしたが?』

ニスタルは頷いた。『その通り。そして、ここにいる皆に、それがよい知らせであったならばと思う…』

『やけに恐ろしい顔つきだな、旧友よ』デュプレが玉座の脇から言った。『あなたが見つけたという物が、一体全体どのような物なのか、我々に教えてくれ。我々は共にそれと対峙しようではないか』

その年老いたメイジは溜め息をつき、彼の前に集まった人々を見渡した。『クレットとシャミノが見つけてきたクリスタルを念入りに調べたのじゃ。ここ数日というもの、イルシェナーで見つかったものと併せて、その秘密を解くべく時間を費やしてきた。今から説明する事は…、本当に恐ろしい知らせになるじゃろう。しかし、今、目前に迫っている危機がどれほど深刻なものであるか理解する為にも、どうしても聞かせておかなければならんのじゃ…』

彼は話しながら、床をゆっくりと歩いた。その間、彼の影は蝋燭の明かりに照らされて、それが集まった者達の上で揺らめいた。『ここにいる皆が知っての通り、魔術はそれを使うメイジ個人と、とても密接な関係を持っている。魔法のエーテルが呪文を唱えるものによって使われるという現象は、その者の声や表情と殆ど同じくらい、その個人に密接に関連するのじゃ。このクリスタルは…』彼はその人工的な物をローブから取り出して言った。『…魔法により作られており、そして作成者のエナジーを宿している。発しているこの力を感じられる方もいるのではなかろうか』

『そうすると…、そのクリスタルを作った人物を…、えーと、あなたはご存知なのですか?ゴーレムの背後に…、えーと、誰がいるのかもご存知なのでしょうか?』クレットが興奮気味に尋ねた。

『残念じゃが、攻撃者がどのような者であるか、いまだ謎のままじゃ。‘エクソダス’という言葉が、仮に意味を持っているとしたら、それが何を意味しているのか、今のところ不明じゃ。しかし、いま知らせしたいのはそんな事ではない。ブリタニアに攻撃を仕掛けてきている者は皆、共通した魔法の力を持っている。そして、それは私の人生で、以前ある他者にそれを見出した事があるということなのじゃ…』ニスタルは立ち止まり、集まった者たちの注目が彼一身に集まっているのを確認しながら、彼らの方へと振り向いた。『私の言う他者とは、ミナックス(Minax)の事じゃ』

シャミノ、デュプレ、そしてクレットは驚きを共有しているかのような感覚に陥った。

『ミナックスはゴーレムを作り出す元となる物を持ってはいない。そしてゴーレムはフェルッカで、彼女のために派閥戦争を戦っているとは思えないが』デュプレは言った。その声は信じられないという事からか、雲がかかったような声だった。

シャミノが素早く立ち上がって言った。『すると…、モンデイン(Mondain)…?』

『いや、モンデインではない』ニスタルは即座に応えた。『遥か昔に死んでいる。いや、この魔法の力は奴らに通じる物はあるが、幾分違うところもあるのじゃ。ではあるが、私はこの脅威を深刻な物として恐れずにはいられないのじゃ』

『えーと…、あの…、質問、よろしいでしょうか?』クレットが言った。その声はその場の緊張感からか、小刻みに震えていた。『モンデインとかミナックスとか…、えーと…、どうして私がここにいるのでしょうか?私はただの細工師ですよ。腕には自信ありますが…、あの…、そんな大それた邪悪に立ち向かうなんてとても…』

『クレット、君の知識が必要なのじゃ』ニスタルは言った。『敵はこうしている間にも姿を隠している。魔法のサインを発しているクリスタルが、奴らの居場所がどうやって隠されているのか、その詳細について幾つか興味深い事を教えてくれたのじゃ。クレットよ、君はクリスタルとゴレームとがどういう関係にあるのか、ゴーレムがどうやってクリスタルの力を使うのかを理解している。その知識が必要なのじゃよ』

『実際には、何をするのですか?』シャミノが尋ねた。

『クレットと私は敵の居場所を特定する装置を作る予定じゃ。イルシェナーからの情報を総合すると、ピラミッド型の建造物が敵の潜伏場所へのある種の出入口なのではないかと思っている。それが発見されて以来、相当な量のエーテル=エネルギーを用いた呪文で封印されているのじゃ』ニスタルはクリスタルを高く掲げた。彼の顔にやわらかな光の影が出来た。『これのお陰で、エネルギーがどこからやってくるのか知る事が出来る』

『お話を聞いて不思議に思うのですが、』クレイニンが言った。『そんなにも強力なバリアを維持していく魔法エネルギーでしたら…、それは…、あの…、世界中から集めなければならないのではないでしょうか…』

『その通りじゃ、クレイニン』落ちこんでいるその場の雰囲気に反して、ニスタルは弟子に対して微笑みかけた。『そして実際に、イルシェナーに魔法を唱える者は、ピラミッドを閉じこめておくために必要な量を越えてしまっているのじゃ。その事が何か他の下劣な目的に利用されていなければいいのじゃが』

『それがどういう結果を生む事になるのでしょうか?私達はブリタニア中に調査隊を派遣してきました。そして、その様な膨大な魔力に繋がる手掛かりを何一つ見つけられないでいます』クレイニンは部屋をゆっくりと行ったり来たりしながら言った。『エネルギーを集めようとする者なら誰しも…』彼は立ち止まった。その顔は紅潮していた。『そのエネルギーは魔法で隠しておかなければならない…!?』

『その通りじゃ』ニスタルは実習生の肩に手を遣った。『私は何がこのエネルギーを集めているのか知る為に、様々な魔法を使った。今のところ、その魔法はトランメル、フェルッカ両面のあらゆる場所から引き出されている事位しか私には分からぬ。そこでクレット、私が君の助けを借りて作ろうとしている装置は,敵の力の根源を暴き出すための物なのじゃ。いったん見つけたとなれば、あとはそれがどのような物であっても破壊するのみじゃ。ピラミッドはきっと開く。ガーゴイルを奴隷としている者の正体も分かるかもしれない』

『そうなったらもっと多くの事が分かるかもしれませんね…』クレットは夢でも見ているように、宙を見上げていた。彼以外の人が、僅かばかりの好奇心を伴って彼を注目している事に気付くと、現実に押し戻された。『それはそうと…、私達が…、ああ…、私達はあなたの言うその装置を、まず最初に作らなければならないのですか?』クレットが尋ねた。

『そうじゃ。第一段階としてな。』ニスタルは溜め息をついた。『容易な事ではないことは分かっている。恐らく我々が集められる以上の、膨大な量の素材を必要とするじゃろう。クレイニン、全ブリタニア市民に告知してくれ。我々は素材収集の為、相当な助力を必要とする。城の中庭にその装置を作ることになろう。全市民がそこに必要な物を持ってくる事が求められているのじゃ』

『あなた方がその装置の作成を終えたら、私はトランメル中を偵察して回りましょう』シャミノが言った。『魔法を収集している敵の正体が暴かれたなら、それを出来る限り早く発見し、破壊せねば。デュプレよ、あなた方にはフェルッカをお任せできますか?』

『わかった』重装甲のパラディンは答えた。『だが、他の派閥の連中が、事を複雑にせねば良いのだが。フェルッカでその魔法収集の何かしらを見つけたとしても、恐らくはミナックスの連中や、或いはシャドーロード(Shadowlord)の連中ですら、我々がそれを破壊するのを食い止めようと、手薬煉引いて待ち構えているかも知れぬ。奴らが本気で事を構えようとしているなら、我々に勝ち目は無いぞ』

『その様な状況が発生すれば、メイジ評議会(Council of Mages)の助力を得ることが出来ます。』クレイニンが言った。『リーダーの中に、影響力がある友人が数人いるのですよ』

ニスタルは部屋の中央まで歩き、集まった者一人一人の顔を見つめた。『これで、各人のなすべき事が御分かり頂けたはずじゃ。友よ…、今回の新しい脅威が全ソーサリアにとって、どれほど致命的な物になるかなどと言っている場合ではない。全世界がこの邪悪を根絶するべく、ブリタニアに住む全ての人々を頼みにしているのじゃ。さぁ、仕事に取り掛かってくれ。やる事は山ほどあるぞ』

そこに集まった彼らは、各々の仕事に向かうのに先だって、立ちあがり、お互い軽い別れの挨拶をした。ニスタルは無言で彼らを見つめ、そして自らも振りかえり、その場を立ち去った。

私には確信がある。彼ら、そして私は‘エクソダス’が何であったとしても、それを食い止めて見せる。ただ望むとすれば、私が王の下に行ったとしても、彼らが私なしで戦い抜いてくれる事だ。ニスタルはそんな風に思っていた。








5:15 2017/05/22

by horibaka | 2017-05-05 05:14 | その他 | Comments(0)
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真意

投稿日:2001年11月3日


全シャード
揺らぐ松明の炎だけを微かに響かせ、マントに身を包んだ男が静かに暗い廊下を歩いていた。男がその廊下の終わりに近づくと、石と金属とがきしみ合うような音を立て、扉が重々しく開いた。一歩中に入ると、男は片方の手でわずかな仕草を取った。その瞬間、扉は彼の後ろで、耳をつんざくばかりの雷鳴と共に一瞬にして閉じていた。

『エクソダス(Exodus)』彼は低い声で話し始めた。『あなたには人間どもがこの計画の遂行全体を台無しにしてしまうかも知れぬ、という認識が薄いのではないか?』突然、金属の手が飛び出し、矢のような速さで部屋の中を横切ると、反対側の小さな像を打ち砕いた。遠くの壁の小さな光は、宝石を通して見た火の光のように輝いていた。

『落ちつきなさい。人間どもはまだ我々の秘密の方策に気付いてさえいない』その声は、鳴り続く虫の羽の音のように、淡々と続いた。『Ver Lor Regは私の完全な支配下にあり、働き手たちは増員された監督官の下で建設を始めたところ。制御装置はきっちりと守られている』

『今朝方、スパイの一人がブリテインからやっとの思いで私に報告を持ち込んできた。それによれば、王の古くからの腰巾着のニスタルがパワークリスタルの一つを手に入れ、こうして我々が話している間にも、それを調査しているとの事』彼がゆっくりと動き始めると、それに合わせてマントも微かに動いていた。

エクソダスは一時言葉を失った。しばらくの間、その光は揺らめいていた。『しかし、あの魔道師は我々がブリタニア中にばらまいた装置の秘密をつかむことはできなかったはず』

『ああ。だが、奴は今ごろ十分なことを知っているだろう!エクソダス、あなたはいかなる局面においても人間を過小評価し過ぎるのだ!』彼は振り返り、光の壁に面した。彼が話すにつれて、その距離は短くなっていった。『私はこの男が災いとなるであろう事を以前にも警告し、あなたはそれを無視した。そして人間どもが我々の居場所を見つけるかも知れぬと警告した時も、あなたは再び無視をした。今となっては、この忌々しい魔導師が研究所にパワークリスタルを持っているだけでなく、今は亡き者となった、奴の派遣した調査隊が我々を見つけ出し、そして、まさにあなたの名前が全ての人間の間で囁かれているのですぞ!』

『我々が…失敗するとでも…?』

『私はあなたより人間について良く知っているつもりだ』彼は再びゆっくりと歩み始めた。『私のこの世界への理解、そして知識こそ、あなたが私に近づいてきた理由ではなかったのか?』『その通り。そして、あなたがかつて人間であったことも理由に入りましょうか。この世界を支配しようとするその意志が、私のそれと通ずるものがある。また、今、玉座にある王の知恵より優れた物を持つ人間、それらこそ、私があなたに力を授けた理由に他ならない。私は時が経ち過ぎたといえる程、ブリタニアを離れていたのだから』

『あなたには、我々が征服しようとしている世界を過小評価することなく、この地に慣れて欲しいと願っている。私はサベージとオークの混乱を作り出すよう頼んだ覚えなど無いし、このままでは一体のゴーレムを完成させる間もなく、人間どもはあなたの存在が見つけ出されていただろう!』その影はエクソダスの声の元となるものへ、怒りを込めながら指差した。『我々はガーゴイルの奴隷とゴーレムを失う危機にある!そうなったらどうするのです?あなたに助力を始めて以来、どのようにこのブリタニアを軍隊なしで征服するのか、あなたの口から聞いた試しがない!』

『この件についてお考えのことがあるようですな』エクソダスは静かに返事をした。

その影は腕を下ろし、落ち着きを取り戻した『あなたが提供してくれた今回の記録を調査しておこう。きっと他にも選択肢があると信ずる。でなければ、ガーゴイルシティーを失うのみだ』その暗い影は光の元を離れ、扉の方へと向かっていった。『やらねばならぬことがある。戻ってきたらまた話をしよう』

『お気の召すままに』

マントを身にまとったその影が手を動かすと、重たい扉がゆっくりと開いた。彼はエクソダスのほうに振り向くと告げた。『以前にも言ったと思うが、勝利が完全なものでない限り、私は満足することはない』

『あなたのブリタニアへの復讐は果たされるはず』エクソダスは言った。『しばらくの後には、全人類があなたをソーサリアの支配者、ロード・ブラックソーン(Lord Blackthorn)として知ることになるだろう』

ブラックソーンが振り向きその部屋を出るとき、彼は不敵な笑みを浮べずにはいられなかった。








8:34 2017/05/21

by horibaka | 2017-05-04 08:32 | その他 | Comments(0)
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ブリテイン市長、西部ガードを発令

投稿日:2001年11月1日

Morlice Johnson, BNN Reporter
全日本シャード
フィニガン(Finnigan)市長は今日未明、「西部農業地区の緊急保護措置(西部ガード)」適用を決定した。即日実施される見通し。


西部ガードとは
・他都市からの該当製品の積極輸入(市民有志による)
・市民有志による食料供与(今回は西部農家への収穫物寄付)
からなる保護措置である。


「被害は深刻だべや」ラムゼイ(Ramsay)さん(35才、農業)は畑の土を手に取りながらそうつぶやいた。
「土地開発の影響がここまでとはさ・・・」ブリテイン西に広がる畑地帯は、その立地条件の良さから、催し物や集会に頻繁に利用されてきた。それらの活動がブリテインの商業を支えてきた事は確かだが、畑本来の姿である、農業に深刻な打撃を与えている。
「昔は畑全部、キャベツやかぼちゃで土が見えないほどだったさ。」ラムゼイさんは昔を思い出したのか、遠くを見つめ語った。
「それが今じゃ、岩とねずみ以外なんも無いから、どうしょうもないしょ。」ラムゼイさんはしゃがみ込んで、荒れ果てた畑を見つめた。ラムゼイさんを始め、西部の農家は畑の再生に努め、収穫を維持しようと必死に努力したが、荒れた畑を整え、新しい苗を植えた頃には次の催し物が開催された。その繰り返しに農家は疲弊しきったのだった。
西部農業地区の調査報告を受けたフィニガン市長は、
「この一帯からの食料供給はブリテインにとって不可欠だ。急ぎ西部ガードの実施を検討する。市民の善意ある協力に期待したい。」と真剣な面持ちでコメントした。

また、西部ガードが実を結び、冬を越えるに十分な収穫物が集められた時は、「畑に優しい収穫祭」を計画中である事も明らかにした。しかし、その市長が企てた数々の催しに恨みを持つラムゼイさん達農家は、
「西部ガードなんて名前から格好悪いしょ」と懐疑的で、鍛冶屋憎けりゃバシネットまで憎い勢いだ。「収穫祭どころか、月末にはタロイモのへたすら無く、ブリテインを飢饉が襲うだろう」と一部ではささやかれている。初の適用となる西部ガード、その真価は月末に問われる事になる。
市民からの食料供与は、市設営の西の畑貯蔵テントで受付けている。








0:19 2017/05/20

by horibaka | 2017-05-03 00:17 | その他 | Comments(0)
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血文字の伝言

投稿日:2001年10月26日


全シャード
ドアが強く叩かれ、仕事中のクレット(Krett)は飛び上がり、何か重くて分厚い物に頭をぶつけた。低い、銅鑼でも鳴らしたような音が彼の小屋中に響き渡った。両手で後頭部をしっかりと押さえて、ゴーレムの頭を調べようと、片目で上を見上げ、クビの付け根部分の上で、ゴーレムの頭を揺すって見た。クレットはその機械の本体から後ずさり、頭蓋骨が起こしている、ちょっとした激震にたじろぎつつ、油だらけの布で両手を拭った。ドアを叩く音が続いており、彼は布きれを放り投げた。『今行くよ!』口ごもりながら彼は言った。

彼は研究品が山積みの、筋向かいあたりの階で仕事していた。半分組み立てられた状態のゴーレムの部品が、障害物コースとして認定されるだろう程の複雑さで散らばっていた。また、上にそびえる大木から降って来たかの如くちらばった書類も、一緒にばらまかれていた。壁一面に時計が並んでいた。もっともその半分は、殴り書きしたピン留めの計画書で覆われていたが。彼が歩ける場所全てを迷路と化してしまったので、彼の背後には書類の山が溢れ、床では小さな工具がカラコロと鳴っていた。クレットがドア近くまで来た時、またドアが叩かれ、そしてドアは開かれた。

『クレット!なんだ居るじゃないか!』皮の鎧を着て、背中に弓を担いだ男が言った。

『シャミノ(Shamino)? あ・・・なんだ、早かったね!入って、さあ入って!』

クレットは脇に立ち、その高名なレンジャーに入るよう促した。ただ、その小屋に入る事ができる余地は少なかったが。シャミノは、半ば分解された機械部品の山を見て、ちょっと邪魔をしてしまったかと気がついた。

『早く着き過ぎたかな?時間通りに来たはずなんだが。』そのレンジャーは床に置かれたギアの塊を興味深そうに足で突いていた。

クレットは反対側の部屋に置かれた、ほぼ完成されたゴーレムの方へと後ずさった。『私はどうも、ええと、そこの相棒の世話で時間を忘れてしまってたようだね。今何時だろう・・・』

彼の声は、何十もの時計が一斉に鳴った音で遮られた。シャミノは、細工師の時間にまつわるその小道具が出す金切り声に辟易していたが、ちょっとして、友人を見て笑いを浮かべて見せた。

「おお、6時だ。時間通りだったね。』クレットは、ゴーレムの頭をテーブルの上に持ち上げながら言った。

『クレット、私が会いに行くと連絡したのは、君の助けが必要だからなんだ。君の専門家としての意見が、非常に有効な物となると思っている。』シャミノは何気なく、上向きに置かれたゴーレムの脚に腰掛けた。

『私が?』クレットは問い返した。『なん、ええと、具体的には、私が何に、必要なんだい?』

『この機械仕掛けの連中の知識だよ』

『ゴーレム・・・』クレットが上の空で言った。

『なんだって?』シャミノが聞き返した。

『シャミノ、彼らはゴーレムと呼ばれている、“Por-Xel-Agra-Lem”だ。人間とは全く異なる。彼ら、ええと、彼らは人間見たいに見えるかも知れないが、自由な意志を全く持たないんだ。君の弓や、私の工具見たいな物なんだ。』

『Por-Xel・・・なに?』シャミノは混乱したようだった。『なんと言うんだって?』

『ええと、私が知っている事は、それはガーゴイルの言葉で”ゴーレム”という意味だと言う事なんだ。私は、彼らの言語を多く学ぶ機会があって、ええと、冒険者達が戻った時に持ち帰った、色んな小片からね。全く心を奪われるよ。』

『そうか・・・』シャミノはクレットの小さな作業場を見回し、『友よ、ガーゴイルの技術に関して、君より多くを知る者は恐らくいまい。君は現在ブリタニアにおいて、ゴーレムの大家だ。そしてだからこそ、私は君を連れて行きたい。君の知識が大変有効な物となるかもしれない。このガーゴイル達について学ぶ事に関しても、君は助けとなってくれるかも知れないな。』クレットが、彼に向かって床に座り込んでいる巨躯のゴーレムに、手際よく工具を使っている所を見るのに、シャミノは立ち上がり彼の方へと歩いて行った。『これらの物がどこからやって来たか、より多くの情報を得る為に、ニスタル(Nystul)はイルシェナーへ探索隊を送り込んだ。彼らはまだ戻っておらず、ニスタルは私に、彼の地へ赴き探検隊を探すよう頼んできたんだ。』

『君はどうして、私が一緒に行く必要があると言うんだい?私は、うん・・・精密に調査できるとも、ええと、君がそれを、持ち帰って来てくれれば。』

『そうだな、だが、君は我々が見逃すかも知れない何かに、そこで気が付くかも知れない。ブリテインから衛兵を二人連れてきているから、君の身は安全だ。』シャミノはそう請け負った。

クレットはちょっとの間、まるでいま初めて会話に気を止めたかの様に、仕事の手を止めて顔を上げた。『シャミノ、私はその、そんな立派な、冒険者なんかではないんだ。私は、ここで仕事をしている方が、ずっと気が楽だ。私は細工師だ。私は・・・そう、細工師、なんだよ。』

シャミノは、クレットと彼の研究品の周りをゆっくりと歩いて回った。『聞いた話だが、君も知っているだろう、ゴーレムが初めて現れた頃と、ちょっと変わってきている事を。』『それは本当さ!』クレットの声は、彼が作業中のゴーレムの胸の空洞から響いて来た。『ゴーレムを作ったのが誰だろうが、1回以上は設計を変更しているんだ。内部の部品が違うように見える、その、新しい方の奴と。ゴーレムがまた変化しても私は驚かないよ。』

『その新しい方の奴を見る、最初の人になろうと思わないか?一緒に来いクレット、お前の機械人形が実際に動いている所を見るチャンスなんだ。ガーゴイルの都市その物すら発見できるかも知れない。』彼は笑いを浮かべながら、近くにかがみ込んで来た。『そこにある学ぶ事ができる物全ての事を考えて見ろ』

クレットはため息をつき、仕事から手を離し、ゴーレムの頭を今度は慎重に脇へ押しのけた。彼は床にじっと目を落とし、長い間考えていた。

『私は、ええと、荷物を取って来るよ。』








クレットは馬から降り、このような獣の類に頻繁に乗らなくて良い事を喜んだ。彼には、彼のゴーレムの一体が息を吹き返し、彼を一時間揺さぶっていた様に感じられた。彼は工具と文献が全て揃っているか、自分の荷物を調べあげた。シャミノと二人の屈強な衛兵も馬を降り、周囲を探索し始めた。

『イルシェナーへようこそ。クレット、調子はどうだ?』シャミノは尋ね、彼の表情に微かな笑いの様な表情が浮かんだ。

クレットは立って友人に顔を向けた。『1時間の間、ええと、脳味噌が頭の中をはね回っていたよ。君が私に、その、何かを学べと言うのなら、それは、学ぶなんて言う望みはもう無いという事だと、思うよ。』

シャミノは友人に向かってにやりと笑った。『君は良くなるよ。ただ馬に慣れてないだけ・・・』シャミノは立ち止まり、じっくりと凝視する様に周囲を見回した。『近くにゴーレムがいる・・・こっちだ。』衛兵に目配せし、衛兵は肯いてレンジャーが指示した場所に向かって走りだした。

クレットは当惑していた。『君、君は、ゴーレムの物音が、聞こえたのか?』

『聞こえなかったか?』シャミノは片目をつぶって見せた。

二人は衛兵が走り去った方に歩き出した。歩き始めて数分後、二人は衛兵達が、まるで道端にある切り株の様なゴーレムの残骸の周りを、うろうろと歩き回っているのを見つけた。衛兵達は、その物体を破壊するのに汗一つかかなかった。洞窟は彼らの背後に口を開けている。シャミノは、クレットが興奮してゴーレムに近寄って行き、書き付けている分厚い本と一緒に、細工道具を引っ張りだしたのを見て、笑みを浮かべて見せた。

『トーマス(Thomas)、クレットとここに残って、彼の新しいおもちゃを調査しろ。』クレットはゴーレムの胸の鉄板を外しながら、シャミノを見上げてにやりと笑った。『ウィリアム(William)、一緒に来い。我々はちょっとこの洞窟を探索するぞ。地図によればこれはガーゴイルの都市に続いている。』

シャミノと衛兵は洞窟へと歩み入り、洞窟の闇に覆われていった。トーマスが傍らに立ってしげしげと見つめる中、クレットはゴーレム内部の部品を外し続けていた。時には厳格な衛兵も、ゴーレムのかけらを彼のハルバードでつつこうとした。 

『これはなんだ!』クレットは、機械仕掛けのその物体の隙間から、一つの部品を引っ張り出して叫んだ。『この部品は、ええと、そう、ええ、従来のゴーレムと違っている!部品が少ない・・・』その金属の部品の中から、微かに光がさしているのが見えた。クレットは猛然と細工道具を使って作業を続けた。『ここ・・・に何か見つけたと思うんだ。』『本当ですか?』トーマスは、クレットが夜の暗い道では決して聞きたくないような、野太い声で聞き返した。

『ああ、うん・・・そうだ。分かるかい、従来のゴーレム、私がその、いじる機会に恵まれた方の奴は、この部分に追加の部品があったんだ。私が言えそうな事は、これは何かのスイッチで、ゴーレムが休止する時にオフになるんだ。それは全て、ええと、何らかの水晶の一片が中に仕込まれている。けれどもこのゴーレムは・・・』クレットは別のパネルを開けた。『やっぱりだ。こいつの中にある水晶は無傷のままだ!従来のゴーレムは動きを止めると、水晶が破壊されるタイプの装置が付けられていたんだ!』

衛兵は顔をしかめた。

『このクリスタルをどうするかわかるかい?』クレットは興奮で跳ねたり縮んだりしていた。

『クレット!』シャミノの声が洞窟の入口からこだました。『こっちへ来い!早く!』

クレットは衛兵を見て、そして二人とも洞窟へと駆け込んだ。松明に火を点けると、今やクレットにも、その新たに掘られた洞窟の周囲に、血と死体とが見えた。具合が悪くならないように、彼は全力を尽くした。彼は戦士ではなく、今まで死人を見た事が無かった。

『すまない友よ。気分の良くない光景である事は分っているが、ここに手がかりがあるかも知れないんだ。』シャミノは洞窟の深部へとクレットを連れて行った。『これが数日前、ニスタルが送った探索隊が残した物だ。何が彼らを殺したのか私にも分らないが、なんであれそいつは、仕事をきっちりやり遂げた訳だ。』クレットは、洞窟の壁に視線を合わせようと努めて、死体には合わせない様にした。『クレット、お前の肌に合わない事なのは分かるが、衛兵がお前を守る。お前の知識が必要なんだ。』

松明を持って、クレットは周囲をゆっくりと歩き回った。人の手の感触がブーツの下に感じられた時は、ちょっと飛び上がり唾をぐっと飲み込んで、臆病さをしまい込もうとした。死体の全身を明らかにする為、松明を低く構えた。この男はここで死んだ。だが、それは自分の血で洞窟の壁に字を書いた後の事だった。『シャミノ、ええと・・・その、思うに、何か見つけたぞ!探索隊の一人が、彼が、その、私たちに、その、メッセージを残そうと、したんだ。たった一語だが、しかし、うん、私は、その、私には、何だかわからない。』

『ガーゴイル語で書かれた何かなのか?』レンジャーの声がこだました。

『調べてみる・・・うん・・・今調べているよ。』クレットはガーゴイル語について彼がしたためた分厚いノートを隅までめくった。彼は自分の知識が限定されている物だと知っていたが、壁の言葉が何を意味するか判別できない事が分かると、落胆を隠せなかった。彼にはそれがガーゴイル語なのかすら分からなかった。

『すまないシャミノ。私には、その・・・これが何だか、ええと、これがどんな意味なのか、言い表せない。名前かも知れないし、場所か、街かも・・・私には分からない。それは、その、私の資料には無くて、でもそれが何なのかは、学ぶべきだと思うんだ。この人は、君にこのメッセージを残そうとしながら、死んだんだ。』

『クレット、これは何という言葉なんだ?』松明の明かりに近付き、シャミノは尋ねた。クレットは友人を見て、そして壁に視線を戻して言った。『それには、”エクソダス”と書かれているんだ。』








0:10 2017/05/19

by horibaka | 2017-05-02 00:09 | その他 | Comments(0)
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改造

投稿日:2001年10月12日



主の暗い居室は、部屋の反対側に現れたムーンゲートの鈍く青い光にゆらゆらと照らし出されていた。ムーンゲートからは漆黒の外套に包まれた人影が次第に輪郭となって現れ、一人のコントローラーがよろめきながら出てくると、前かがみとなり、ずたずたになった神秘のローブに隠された膝に手を当てて立っていた。

『フォゼフ、報告を聞かせてもらおうか』主の声が部屋の暗闇の部分からこだました。

フォゼフは両手についた血を破れたローブの端で拭き取ったものの、立っているのがやっとの状態だった。『ご主人様、外部の者達が忍び込んでくる為のトンネルをついに発見いたしました』

ムーンゲートから、転がる鉱石のような音をしたゴーレムの足音が響いてきた。次の瞬間、ゴーレムは姿を現すと、躓くような奇妙な間隔で一歩一歩その足を進めた。その身体を覆う岩でできた外殻の隙間からは、ゼンマイ仕掛けの人形のそれのように、歯車やロッドなどの部品が見えていた。強力そうな腕はガーゴイルの死体を抱いていたが、その後ろでムーンゲートが消えたとき、ゴーレムは死体を無造作に床に放り出した。

黒い外套の男は前へ出ると静かに死体を見下ろした。『背教者…』

『未完成のトンネルエリアをパトロール中、背教者の一味がそこにいたようです。恐らくこの者はパトロールの目を盗み、わずかな合間に掘削作業を進めていたのでしょう。』フォゼフは膝の痛みに顔をゆがめた。足を置いた床の周りには血が溜まり始めてていたが、フォゼフは意識的にそこに視線を向けることなく報告を続けた。『死体を見つけたとき、外部からの一味は驚いて反撃に打って出たのです。我々のパーティーも殺され、ゴーレムは粉砕され、ここに残ったゴーレムもご覧のように修理が必要な有様です。』

その言葉に反応するかのようにゴーレムが小刻みな機械音を立てると、次第にその音は不快なほど大きくなっていった。音が突然に止まると、ゴーレムのグロテスクな身体は腰のあたりからばらばら崩れ始め、床には鍋とフライパンのガラクタのような山が築かれていた。頭部は冷たい床の上で回りつづけていた。フォゼフはそれを見て次のように発言した『少なくとも、パーツだけは使えるようです…』

人影はゴーレムの残骸を少しの間に見分した。ゴーレムの外殻は、まるで何千もの刃で切り刻まれたかのようだった。『ブレードスピリットだ』

フォゼフは頷いた。『外部の連中はその唱え方を知っています。現状、我々の作成方法では、ゴーレムの装甲はこの攻撃にそう長く耐えられません。』

『あってはならぬ事だ』黒い外套の人影はうなりをあげた。『ゴーレムがブレードスピリットごときに耐えられなければ、都市の防衛には役に立たん。私は外の連中を知っている。この弱点が広まれば、奴等はさらに多くの魔法使いを差し向けて来るだろう。都市を守らずにいれば、より多くの使役ガーゴイルを失う事になる。直ちにゴーレムの改造に着手せよ。』

フォゼフは頭を低くし、ゆっくりと答えた。『恐れながら閣下、閣下のご賢察に疑問を差し挟むつもりはありませんが・・・もしゴーレムを強化する為により多くの資材を費やせば、都市の防衛部隊を作成するには資材が不十分になります。そして、奴隷ガーゴイルの数は外の一味が攻撃してくる度に減少しています。ガーゴイルがいなくては十分な資材の収集が出来ず、ゴーレムの作成を継続できないでしょう。』

『命令の如くせよ、フォゼフ。』主の声は、部屋の四方で小さな光が白く瞬いた時、その影が最も濃い部分から響いた。『必要なだけの資材を使い、ゴーレムが召喚物を消去できるよう強化するのだ。都市を守る手段は他にもある。』

人影は声の方へ振り向いた。『どんな方法がある?』

『フォゼフ、お前は使役ガーゴイルの一団を生産センターの中の小部屋に連れて行くのだ。奴等の鎖を外せ。』

『ご主人様、奴等の鎖を外せと仰るのですか?』フォゼフは驚きに平静を取り戻せずに、とまどいながら言った。『ご主人様、鎖は彼らの魔法能力を封じています。彼らの鎖は決して解いてはならず、安全の為、鎖につながれていない使役ガーゴイルは即座に殺せ、とご主人様は私達に仰いました。』

『使役ガーゴイルは都市を守る為に魔法を使う必要があるのだ、フォゼフ。』主はうなりの様な声で言った。

外套を着たその人影は静かに部屋を歩きながら、ゆっくりと言った。『危険は伴う。しかし、人間に対しては非常に効果的であり得るのだ・・・』

『使役ガーゴイルがでございますか?』フォゼフは驚き、足元の出来た血だまりに足をとられそうなり、苦痛にあえぎながら言った。『奴等は外の連中を押し止められる程強くはありませんご主人様。魔法を使おうともです。』

闇に包まれた外套は、部屋の中をフォゼフに向かって飛び上がり、腕を飛ばして、手の甲でコントローラーを床に叩き付けた。眼前で揺らめく光の中、フォゼフは主人の一人が自分の上に静かに佇んでいる姿を見た。『お前は十分考えを述べたな、フォゼフ。これ以上の意見は不要であろう。』フォゼフは強烈に打ち付けられた為に流血し、暖かい血が頬を伝うのが感じられた。

『行け』外套を着た人影は言った。『都市が守られる様、使役ガーゴイルを用意せよ。』人影は主の声がした方へと戻っていったが、一旦立ち止まった。『ああ、フォゼフ、お前の傷の手当てもするのだな。血が出ているぞ。』

『はい、閣下。』フォゼフは歯ぎしりして答えた。彼はよろめきながら部屋を出て行き、血の足形だけが残されていた。

フォゼフが去るとすぐ、黒い外套の人影は再び話し出した。『使役ガーゴイルを強化する事が、本当に良い考えだと思うか?奴等にそんな力を与える事は危険を生む。今のガーゴイルは非常に脆弱だから、その処置に耐えられはしないだろう。』

『実験において、いくらか損失を出す余裕はある。処置中に死ぬガーゴイルからは有益な情報が得られる事だろう。ただ、その手順が既にほぼ完璧である事は、お前も同意する所であろう。』カチカチ、ブーンと言う機械音が一瞬強くなった。

闇に包まれた人影は佇み、動かなかった。『ああ、本当にな。』

主は続けた。『強化すれば、ガーゴイルは十分都市内で人間に対抗できるだけ強くなるだろう。我々の部屋が見つからなければ、奴等を操る私の力は絶対だ。ゴーレムの改造は、ブリタニアへの攻撃をより効果的にするだろう。勝利は依然として手堅い。』

『そうだとは思うが』人影は答え、彼が振り返った時、外套は彼を取り巻いて浮き上がった。『私はそれが絶対の物となるまでは満足できないのだよ。』








6:05 2017/05/18

by horibaka | 2017-05-01 06:02 | その他 | Comments(0)
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最後の希望

投稿日:2001年10月7日


全シャード
誰に聞かれても構わない。苛立ちを隠せないそのガーゴイルは壊れたピックアクスをトンネルの壁に投げつけた。三日三晩掘り続け、彼の体力はその斧と同様に疲れきっていたのだ。トンネルの壁に背中をもたれ、自分自身を落ちつけようとしていた。

床をぼんやりと見ているうちに、彼の思いは、残してきた物へと移っていくのであった。彼らはその過酷な運命には似合わない、気のいい人種だった。だが、思いつく限り人生とはこんな物だった。征服前の時代については長老のガーゴイルたちしか知らないのだ。今となっては、そんな時代はまるで寓話のようなものであり、自由な人生など彼には想像を超えた物なのだ。

自由なんてありはしないのだ!彼はひどく深刻に考えた。あるとすれば、力のあるものだけのための物だと。しかし、すぐにそのようなことを考えた自分を呪った。そして開いた手のひらにこぶしを打ちつけると一人唸った。違う!もう一度故郷を取り戻す方法があるはずだ。彼は本来であれば幸せであるはずの人生をこんな物にしたままにしておきたくはなかったのだ…。

彼と同様に穴を掘るものたちがいることも彼は知っていた。脱出への希望を抱きながら、救助の希望を抱きながら…。その昔、追手を逃れて別の地へ渡った仲間たちがいることも知っていた。コントローラーたちの会話を盗み聞きしたところによれば、奴らはどこかの地で敵と戦っているらしい。汚らわしい生き物と目されているその敵を自分の兄弟たちであるとは考えていなかったが、それでもモンスターとして富と名声のために遠い地で虐殺されているのだ…。

選択肢など無い、何かしなければならない。それこそが最後の望みだった。

リーダー達は、無限の広さを持っているとも思われる山々をつらぬく道が見つかることを期待しながら、特定の場所を掘るためにガーゴイルたちの小さな集団を組織していた。強い羽根があるにもかかわらず、いかなるガーゴイルも山頂を超えることはできなかった。かつてごく少数の者が挑戦したが、帰ってくることは無かったのだ。過去のいくつかの挑戦から、ガーゴイル達は全員それが無理であることを悟っていた。山に吹く風は彼らの命を奪っていってしまったが、少なくともその者たちは今自由であろう。ガーゴイルは小さな笑みを浮べ、その勇敢な、向こう見ずな友人に静かな祈りを捧げるのであった。

彼はたった数日前まで、彼と共に穴を掘ってきた友人達のことを思い出していた。彼らはコントローラーに捉えられたのだ。しかし、幸いなことにコントローラーの下僕達は洞窟の入口を見つけるには至らなかった。ガーゴイル達はどんな運命が待っているか分かっていたし、その運命について考えると身震いした。彼らは恐らく町に連れ戻され、そして誰であるか、何のためにそこにいるかさえ分からない存在にされてしまうのである。下僕達はてきぱきとその仕事を行う。’再教育’(彼らはそう呼ぶのだが)されたいかなるガーゴイルも、以前の状態に戻ることは無い。彼らは今となっては、喜んでいかなる命令にも従う忠実なコントローラーの軍隊の戦士であり、何のためらいも無く他のガーゴイルを殺すであろう。

そんなことはガーゴイルへのプライドへの究極の侮辱である、そんな風にそのガーゴイルは考えていた。しかし、このような時代にこそ、そのプライドも飲みこんでおかなくてはならない。ガーゴイル達は何度も都市の奪還を試みたが、いったんメイジ達が彼らの親類を使って攻撃を仕掛けると、ガーゴイル達には、なす術が無かった。そのガーゴイルは先の戦いを思い出す度に、その表情は硬くなる。

今でも忘れることはできない。彼は3人の親類を殺してしまったという嫌悪の念に常に駈られているのだ。しかし、もはや手のつけられる状態にではなかった。彼らの苦しみから解放してやるにはそれしか選択肢がなかったのだ。そのことはいまだに彼の心を痛めつけ、怒りで一杯にするのだった…。

かつての高貴なガーゴイルの街に、まるで昔から自分達の物であったかのように居座っているコントローラーたちのことを想像すると、彼の怒りは強くなった。掃き清められた階段、美しい彫刻、大理石の道、そして忘れられないくらい美しい塔。これらは全てガーゴイルの物であり、あの薄汚い生物の物などではなかった。拘束から逃れるために常に隠れて暮らし、荒野の中で育ったので、彼は本当の故郷としてのその街を知らなかった。しかし、心で、魂で、彼はその不思議な街が自分達の住むべき所であると感じていた。

囚われの身となっている彼の親類、赤いローブのメイジ達に荒らされたかつての美しい都市、主人と呼ばれるもののために意志の無い雄蜂にまでおとしめられた誇り高いガーゴイル達に残された物、全て彼には耐えられない物であった。

彼は立ち上がり、そしていままで掘ってきた壁を握りこぶしで強く叩いた。突然、岩が唸るような音を立て、彼は驚いて飛び退いた。壁が崩れると眩しい陽光が注ぎ始め、その眩しさに彼は目に手を当てなくてはならなくなった。そのガーゴイルは忘れ去られた土地への入り口を前に呆然と立ちすくんだ。余りにも多くの感情に満たされたために、呆然と立ちすくむことしか出来なかった。

トンネルは貫通した。しかし、助けは到着するのであろうか…。








6:07 2017/05/17

by horibaka | 2017-04-28 06:06 | その他 | Comments(0)
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戦いの報酬

投稿日:2001年9月28日


全シャード
疲れきっていた…。ギルヘムは持っていた槍を力なく地面に落とすと、沼地の岩に重々しく腰を降ろした。サベージの生き残りたちは彼の怒りに触れぬよう、用心深くその場を離れていった。数週間前、ギルヘムの主はサベージ族による街への攻撃回数を増やすように命じたのだが、彼らの軍は敗れ、この沼地に居ざるを得なかったのだ。彼はたった1つの街でさえ占領できる可能性はゼロに近いとわかっており、そのことを主に伝えようとも努力したのだが、ひとたび命令が為された時には、その内容に忠実に従うことが要求されるのもわかっていた。過去に命令に背いたことで罰を受けたことのあるギルヘムは、同じ思いはもう二度としたくなかった。彼は罰の内容を思い浮かべ、身震いした。

主から最初に彼に与えられた使命は、彼にとって侮辱とも思えた。そのことを表情にすら表さなかったが、粗野な部族の寄せ集めを率いてオークの居所を襲い、オークをその地から追い払うという嫌気のさすものだった。部族と生活を共にし、彼らの信頼を得ることが求められていた。しかし、ギルヘム自身も驚いたことだったのだが、実際に原始人たちと生活を共にしてみると、それは実に快適なものだった。彼らの伝統としきたりを学び、それに友達と呼べる存在までができるようになっていた。彼の人生で今まで罪悪感を感じたことは一度たりとも無かったが、今になって彼は罪の意識に苛まれていた。それは、サベージたちを住処から遠ざけ、自分が殺戮の場へと送り込む引き金になっていることへの罪の意識に他ならなかった。

心落ち着かぬまま、苛々とあごをこすっているうちに、サベージペイントの一部が剥げ落ちてしまった。すぐにでもペイントを塗りなおさねばならないだろう。やがて何故だろうか、痒みが腕から脚へと広がり、少しすると体全体を包み込んでいた。とたんに彼の肌は何も感じなくなり、動くことも話すこともできなくなってしまった。動こうという感覚はあったのだが、彼の目からは光が失われ、心も空っぽになっていたのだ。すでに意識からは沼地にいるという覚えはなくなり、ただ冷たい岩の上に身を横たえていた。周囲からはかすかにカチカチという音が聞こえ、閉じたまぶた越しに微かな光が動き回っているのが見えた…。

「ギルヘム、私はかつて重大なことは一度も中断したことは無かったと思うが?」主人が言った。

「何週も前に報告できたんじゃないのか!説明してもらおう!」続けるように主人にへつらう下僕が声を荒げた。

ギルヘムは出し抜けの罵倒に耐えつつ、部屋の強い明かりの中でぼんやりとした目を瞬きながら、身を起こしてその場に直立した。主の下僕をひどく嫌っていたギルヘムだったが、彼は慎重に軽蔑の表情を浮かべないようにと努めた。失敗の報告をするにあたって、その状況から生き抜くあらゆる可能性を残しておきたかったのだ。

ギルヘムはしっかりとした口調で答えた「数日間で人間たちは我々から完全に街を取り戻しました。彼らは強すぎるのです。サベージ軍の勝利の余地は全くありませんでした。我々は沼地へと退却せざるを得なかったのです。ご主人様、どうぞこの私の失敗をお許し下さい。あなた様にお仕えすることこそが私の望みなのです。」言葉には出したが、最後の言葉は嘘だった。

少しの沈黙の後、主が口を開いた。「ギルヘム、お前はよくやった。私は今回のお前の乱心を失敗とは考えていないのだよ。」

「乱心ですって?!」ギルヘムは叫んだ。主人の怒りを起こすまいと必死だった。何百、いや何千もの仲間たちが虐殺されたというのに…それが全て乱心のためだというのか。「乱心……ご主人様、私には理解いたしかねます…。あなたが私にサベージ族を街へ送り込み制圧するよう命じられ、そして私たちは敗れたのです。」

「確かに」主人は続けた。「お前の率いた部族どもは十分ブリタニアの民を苦しめた。おかげで我々のここでの作業が明るみに出ることは無かったからな。おとりとなってくれたことには礼を言うぞ。」

「しかしだ。我々の資産は安全というには程遠いのだぞ。」低い声にギルヘムは驚きを隠せなかった。興奮のあまり、彼は光の影に立つ暗いクロークに身を包んだものに気づいていなかった。

「我々はまだ脱走者という問題を抱えておるのだ。」謎めいた低い声だったが、その中には力強いものが感じられた。「やつらはすぐにでも我々のことを暴露しようとしておる。今人間にあの街が見つかってしまえば、我々の力の結晶も水の泡だ。サベージを使ってブリタニア民の気をそぐことはできた。しかしこれでは発見される日もそう遠くはなかろう。我々にはまだ時が必要なのだ。」

ギルヘムは緊張してその場に直立していた。彼は今まで主人の前で、例え同格であってもこのような物言いをする人物を見たことが無かったし、罪とは程遠い理由で主人に殺された者を何人も見てきた。しかし驚くべきことに、主人は謎の人物にこう答えたのだ。「どうすれば良いと思う?」

「今こそゴーレムを放つべき時だ。ブリタニア民はまだオークとサベージに巻き起こされた混沌から抜けきってはおるまい。いずれにしても脱走者は鬱陶しいままだがな。十分な数のゴーレムは用意できている。これだけあれば、我々が"コントローラー"を使って脱走者を見つけ出し、我々から注意を逸らしておくには十分なはずだ。安全を確保するには十分な時間となるだろう。」

羽虫が飛び回り、止まる様子がよく聞こえるほど長い沈黙が続いた。「フォゼフよ、コントローラーたちにこの新しい計画を伝えるのだ。すぐに実行せよ、と。」下僕が主人の命をスクロールに書き留め部屋を出て行く間、ギルヘムはじっと待っていた。「ギルヘム、前へ出よ。」

ギルヘムは一歩前へ出した脚が小刻みに震えていることも、顔に浮かんだ不安な表情も隠すことができないとわかっていた。彼の心には怒りと困惑とが駆け巡っていた。謎の人物の方は見ないように努めていたが、その人物はゆっくりと部屋を横切るように歩くと、ギルヘムに影を落とし、その背後で立ち止まった。

「ギルヘム、私に隠し事ができると思わん方が良いぞ。お前はよく仕事をこなしはしたが、あの部族どもへの愛好の念が生まれているのもまた事実。」主人はいつもと変わらない口調で言った。

「私は……私は、彼らのことを良く知るようになったのです。ご主人様、私の目的は常にあなた様に……」

「目的を決めるのはこの私だ。それを報酬として感じ取るのがお前の役目。いまだに原始人と同じ格好をしているのは、お前が奴らの一員となりたいからに相違ない。」暗く青い光がギルヘムを包み込み、ギルヘムの体は冷たい床から少し浮き上がった。彼は叫ぼうとしたが顔は驚愕と恐怖のために硬直していた。「つまりお前は奴らのように絶えるべきなのだ。」ギルヘムは温かいものに気がついた。それは背後からあの謎の者に突き刺され、迸り出る自分の血であった。背骨をふたつに圧し折るような痛みの中で、彼はサベージたちの故郷を思い描き、小さな、血にまみれた微笑を浮かべた。直後、彼の体は床に叩きつけられていた。

「かの地へ赴かねばならぬ。我々はまだ安全を確保していないのだ。」クロークにかかった血のことなど気にとめる様子も無く、闇の者が言った。

「さしあたり、」主人が答えた。「いや、すぐにでも確保できるだろう。ブリタニアの民は我々の力にかなうまい。脱走者もすぐに見つかり、そして国は我々の手中に落ちるだろう。」

背後に転々と深紅の雫を残しながら、その者は部屋を後にした。








6:03 2017/05/16

by horibaka | 2017-04-27 06:02 | その他 | Comments(0)
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星空の散歩

投稿日:2001年7月9日

Jay Lambert, BNN 文化部
全日本シャード
「Hello!アレはどこだろうね」

ブリテイン西の畑にたたずむ一人の男。何やらちょっと変わった情報を握っているようだが、彼の言う「アレ」とは一体…?

「知らないの?」

と得意げに語る男。
結局彼から有益な情報を引き出す事は出来なかった。
街を彷徨う私の耳に、一組のカップルの声が。

「サーペンツ ホールドに星を見に行こうよ」

星…?サーペンツ ホールドに星が見える所なんてあっただろうか?!
好奇心でカップルの後をつけてサーペンツ ホールドへ。
カップルは街の北にある、ホールの階段をのぼっていく。
そこには一面の星。まるで夜空にかかった川。そしてその星の川をはさむように光り輝く二つの星。

「タナバタ!タナバタ!」

人々が口々に叫んでいる。何かの呪文であるようだ。
そこにいたカップル達の話によるとこの二つの星には、年に一度だけ会う事を許された愛し合う恋人にまつわる、悲しい言い伝えがあるという。

星空の周りには「ササ」と呼ばれる物が飾られ、側にある「タンザクケース」の中には人々の願いが書かれていた。タンザクに書けば願いが叶うと信じられているらしい。私もそっと願いを書き込んでおいた。

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星空の散歩から帰った後、畑の男に「タナバタ」について話してみた。
彼は実の所、「アレ」が何処にあるか知らないらしい。








19:53 2017/05/15

by horibaka | 2017-04-26 19:52 | その他 | Comments(0)