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カテゴリ:その他( 147 )
BNNアーカイブ 倒れ行く同志

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倒れ行く同志

投稿日:2001年5月25日


全シャード
Gebrekのハンティングパーティーは、太陽が空に高く届くほどの時刻まで、森の中をさまよっていた。野営地に戻ったとき、その視界に入った光景に、彼は唖然として膝を落としてしまった。野営地には鮮血が飛散し、胸に突き刺さった長い槍を両手でつかんだ死体を含め、20体以上もの同志の生々しい姿が横たわっていたのだ。そんな中でもテント類はキャンプファイアーと同様に無傷のようだ。彼は膝を落としたまま、これほどのオーク戦士の群れを一瞬にして倒すことができるのは、一体何者なのだろうかといぶかった。背後のパーティーが互いに唸るようなトーンで会話を始めると、Gebrekはこの状況下で自分が唯一の新しいリーダーのポジションにいることに気付いた。振り向くと、喉頭音に近い命令をパーティーへ向けて発した。

パーティーは野営キャンプ全体に散開すると、Gebrekが具合の悪そうなため息をついた。オーク族は年齢に関係なく常にパワーを持つ者への服従を誓うことは分かっているが、それでもGebrekは神経質になっているようだった。年上のパワーリーダーからの訓練もないままリーダーの一員となってから、まだそれほど太陽が空に昇っていないのだ。そして、彼が魔法を使える優れたオークとして仲間から十分に認められるためには、いくつもの季節を越えていなければならないはずだ。言ってみれば修行中の身、それにも関わらずパワーリーダーとしてパーティーの最高責任者となってしまったのである。

何故こんなことになってしまったのだろう?以前にも増して年端の行かない若いオークが、戦士や魔法使いの称号を持つようになっている。若者達を駆り出さねばならないほど、そして若者達を使ってまで守らねばならないほど、我々オーク族は危機に瀕しているのだろうか?そして彼は、魔法を使うオークが戦士のヘルメットを前に、何らかのパワーを封じ込めている光景を思い出した。Gebrekは未だかつて、オークメイジがオーク戦士のために魔法を使うことなど見たことがなかった。そして、戦士達もその魔法の使い方についても聞くことはない。彼らは基本的に誇りが高く、互いを必要ともしていなかったのだ。

彼のパーティーの半分のオーク達は、戦士と呼ぶには若すぎ、そして要塞から離れる年齢でもなかった。経験の少なさから戦闘に恐怖を覚えるなどもってのほかだ。戦いから逃げるオークなど聞いたこともない。もちろん、そのことで彼らを責めるつもりはない。振り返ると、怯えた目つきの若いオークロード達がいた。彼らは野営キャンプで横たわる仲間も装備していたはずの、パワーを封じ込めた新品のヘルメットをかぶっていた。恐らく、ロード達を倒した者は、容易にその新しいヘルメットを入手したに違いない。

Gebrekは何か使えるものがないか、キャンプ周辺の死体の間を歩き回り調査を続けた。どうかこれらの死体が若いオーク達の恐怖を煽らないように祈りながら…。やがて…キャンプファイヤーの周りには物資の山が築かれていった。Gebrekは物資のことではなく、すでに次の思考に移っていた。ロードの集団を一掃した奴らにしてみれば、自分の率いている若いパーティーなど容易に撃退できる考えるだろう。攻撃は始まれば、若いロード達に勝ち目はない…。

若いオークがGebrekに近づくと、おもむろにオークの顔に似たものを差し出した。Gebrekは振り向くと、興味深げに首をかしげた。周りを見回しても、顔を失ったオークの死体はない。気の進まないまま、震える手でその顔に似た何かを受け取ると同時に、思わず「それ」を地面に落としてしまった。それは顔ではなかった、そしてパワーを帯びていたのだ。オークにこんなことをする力はないはずだ…。

彼は再び野営キャンプを見渡した。最強のオーク戦士達はもがくこともできず、すでに息絶えている。神秘の力を秘めた仮面、姿を見せぬ殺戮者達、Gebrekは心底恐怖を感じていた。何かが確実にオーク族を破滅の道へ向かわせている…。しかも、その時は刻々と近づいている…。



by horibaka | 2017-04-16 07:58 | その他 | Comments(0)
BNNアーカイブ 船の遭難相次ぐ - Vesper市長出港自粛を勧告。

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船の遭難相次ぐ - Vesper市長出港自粛を勧告。

投稿日:2001年5月21日

Morlice Johnson, BNN Reporter
全日本シャード

1週間前から、Vesper沖合で船の遭難が相次いでいる。1ヶ月近く天候は平穏で難破の可能性は低い。また、同時期から正体不明の船が目撃され、遭難との関連が疑われている。

正体不明の船を目撃した船員の中には船上に幽霊がいたと証言する者もあり、Vesper港は幽霊船の噂で騒然としている。Vesper周辺の海岸でもUndeadの目撃が数件報告されているという。Vesper西端の墓地では以前より目撃例があるが、その他の場所での目撃はまれ。

Vesper市長は正体不明の船に関しての明言を避け、原因不明のまま出港の自粛を勧告した。

「大型船よりもでかくてな、舳先(へさき)に骸骨がぶら下がってやがるんだ!いやあ不気味だったね。しかも甲板はSkeltonやらのUndeadだらけでよ。しかもとんでもねえ事によ、Lich Lordまでいやがった!もう一目算で逃げ出したね。死ぬかと思ったよ!」
甲板越しに船員のDanielsonさんが幽霊船遭遇時の恐怖を語った。

船内には骸骨や肉片が散乱している、船倉にはぼろぼろの航海日誌が残されており、「・・はじまり・・」と読みとれた。港で釣りを装って聞き込みを行った所、船員達は口々にそのような噂話を交換していた。

Vesper市長は未だ原因不明である事を強調しながらも、
「さらに被害が出るようなら、(幽霊船を)調べる必要がある」と調査に乗り出す可能性を示唆した。








7:10 2017/05/06

by horibaka | 2017-04-15 07:09 | その他 | Comments(0)
BNNアーカイブ そして誰かが見つめている

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そして誰かが見つめている

投稿日:2001年5月17日


全シャード
地上を見下ろす大木の樹幹に腰掛けたオークスカウトのMilugは、小枝の隙間から前方に見える街を凝視していた。店先で品物の取り引きをしている人間達を観察していると、いかつい表情を維持することにも難しさを覚えているようだった。あまりにも静かな時の流れのせいだろうか、彼は住処であったコーブ近くのオークキャンプでホームシックにかかっていた。木を組んだアジトの居心地のよさ、日々の争い事、そして時には略奪を求めて森の中をうろついたことなど。最も懐かしいのは、焦げた肉の香りと、神秘的なスキル訓練のためロードの1人がオークメイジをいたぶっているときの笑い声だ。

彼が受けている命令はごく単純なものだった。「人間を殴ることなく街を見張り、奴らが何をしているのかを報告せよ。繰り返す、殴ってはいかん。次の命令を受けるまでは殴ってはいかん。」Milugは命令を受けることが好きではなかった。特に「殴ってはいかん」と注釈が入るものについては大嫌いの部類に入っていた。しかも、今回彼の上官であるオークロードは3回もそのことを付け加えた。さすがにこれでは後になって命令を忘れてしまったとは説明できないだろう。「オークロードは頭が良すぎる…」Milugは感慨にふけっていた。潜在意識だろうか、Milugは手の拳を頭に打ち付けながら、前回ロードの命令に背いたときのことを思い出していた。オークロードが怒りを覚えたときの攻撃力は凄まじいものがある。Milugは殴られることも嫌いだ、それならば殴る方がいいに決まっている。しかし、命令を受けてからすでに1週間が過ぎようとしているのに、キャンプからは何のためにここで見張りを続けるのかについて説明がない。Milugの辛抱は他のオークでも同じだろうが、すでに限界に耐えがたくなってきていた。

地響きに彼のオーキッシュ思考は中断された。そこには凶暴そうな斧を振り回すオークが、木々を伐採している。彼もまたリスクを負ってでも街の近くに新たなキャンプを設営しようと、命を受けているようだ。そうは言っても森の中、そう単純には街から見破られることはないはずだ。もちろん、興味津々な人間達が近づいてくれるのは大歓迎でもある…いずれにせよオーク達には鍋に入れる食料が必要なのだから。

気が進まないまま彼は注意を街の監視へ再び戻した。しばらく眺めていると、低くきしるような声を発して、周りのオークたちに静かにするように伝達した。オーク達は即座に伐採を止めると、木々の後ろへ姿を隠した。Milugは長い間の禁欲に息を殺した。人間が自分を見つけてくれることを切に願っていたのだ。

「人間キャンプきた。殺してもMilugのせいじゃない」彼は口がほころんだ。Milugは人間達の気を引こうと餌となる音を立ててみようとも思ったが、拳を頭に擦り付ける方がよいと考えを変えたようだ。他のオーク達も斧を握り締める手が震えていた。彼らを人間への攻撃から遠ざけているのはロードからの強い抑制の恐怖だけなのだ。人間達が何事もなかったかのようにその場から立ち去る1分程の間、その絶えがたい辛抱は最高潮に達していた。

オークスカウトのMilugが街へのスパイ行為を続けようとしたとき、喉から絞り出るようなオーク語で誰かが話し掛けた。要塞からの最新ニュースを理解したMilugは、街を覗き見るたびに微笑みを止めることができなかった。そのニュースは彼の期待通りだったのだ。

しかも、そう遠くない将来に…。








7:32 2017/05/05

by horibaka | 2017-04-14 07:31 | その他 | Comments(0)
BNNアーカイブ Dudagogの物語

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Dudagogの物語

投稿日:2001年5月7日


全シャード
前回の作戦会議中でDudagogの受けた「祝福」と呼ばれる片目への血の洗礼は、長老シャーマンから受けた不可欠で刺激的な長い儀式の一端であった。シャーマンたちは何かに急いでいる。ここへ来てたった20度目の生活の火をおこしただけで、部族移動のための準備を始め、合図のための骨でドラムを掻き鳴らしたのだ。Dudagogは小枝と骨の山でできた住処と呼んでいる場所の記憶さえ、まだおぼろげだと言うのに…。

Dudagogは、かつて獲物の多かった場所を覚えている。常に腹を膨らませてくれるだけの新鮮な鹿や人間達が徘徊していた。その地に集う仲間はゆうに数百を超え、敵のいない贅沢な暮らしから肥満になるオークさえいたものだ。若い頃のDudagogも放浪的な生活を好んでいたが、年齢からくる悪癖だろうか最近は、獲物を追い求めるよりも、座って食事を摂ることで肥満傾向にある。その性格が災いとなり、若いオーク達への新しい丈の長い武器の訓練についてシャーマンへ相談をしたときにも、長老は素早い杖のひと振りをぶざまなDudagogの片目に平然と振り下ろした。ただし、Dudagogは仕返しを考えるほど馬鹿ではなかった。シャーマンの恐ろしい力は、オークの周りに溶岩が煮え立つほどの熱気を発生させられることを知っている。

今朝、生活の火もようやく燃え上がるころ、Dudagogは思っていたよりも早く目を覚ました。その身体はくたびれて錆びてしまった拷問用の玉に共通するようなしびれと痛みを伴うはずだった。シャーマン達は朝早くから夜遅くまで訓練を行うことで、早期に攻撃部隊の準備を整えることを望んでいた。一体何に対する準備なのだろうか?この見えない危機は、新しいオーク占領地の拡大計画にも増して大きな噂を部隊へ呼んでいた。何故、より多くの占領地が必要なのだろうか?オークに何が必要なのだ?オークキャンプならすでにあるではないか?随所に点在するエッティン部隊とは友好的な同盟関係を持っているにも関わらず、我々オークは彼らの生活地域とは遥かに離れた地に生活しているのだ。Dudagogはシャーマンのように頭脳明晰ではないかも知れないが、考えるに心強い同盟者の地から立ち去ることは間違いだと信じていた。その彼の考えとは主に「腹減った、食べる」「邪魔だ、どけ」「疲れた、寝よう」「まだいるのか?また邪魔だ」など、とても通常のものだった。

Dudagogが斧を研ぐのは、唯一憂鬱なときだけだった。家から持って出たときには新品だった研ぎ石も、今では小さな石の塊に姿を変えている。訓練開始までにはまだ少し時間があるようだ。そして斧に目を落とすと、切れ味よく仕上がったそれは彼の喉を乾かし始めていた。もちろん空腹感もあるのだが、たとえ食べたとしても空腹感はなくならないのだ。それがこのところの彼の悪癖にもなっている。しかし、喉の渇きに対しては適切な対処をすることができた。Dudagogは近くの小川まで歩き水を飲もうと考えた。例え新鮮でなかろうがビールの方がいいに決まっているが、彼は訓練の前に飲酒することを禁じられていたのだ。仕方なく決心をすると、彼の脳は脚へ命令を伝え、彼を小川へと向かわせた。

驚いたことに、小川にはすでにDudagogの生徒の1人が陣取り、こともあろうか小川に入っていたのだ。Dudagogは立ち止まり、この光景に目を釘付けにされていた。オークはもともと水を飲むことを嫌い、ましてや水浴びなどをすることはありえないはずだ。水の中に長時間いたとしても、泳ぐというコンセプトを本来持ち合わせていないし、それが出来ることはオークにとってなんの自慢にもならないのだ。Dudagogは目の前の出来事が腹を満たすためのことではないにも関わらず、即座に判断を下すことができた。その痩せた馬鹿者を一刻も早く水から出してやらねばならない。さもなければ、きっとその若いオークは朝の肌寒さで命さえ危険にさらすことになるだろう。

最初のショックはここで起きた。その無能なオークはDudagogの掛けた命令を一切無視したのだ。風呂を浴びているのではない以上、昨夜からの一件ですでに寿命が縮まりそうな彼としては、無視されたことにショックを受けるのも当然だ。Dudagogが突如として命を落としてしまうまでには、後3段階ほどショックを受けるステップがあるのだが、まずはこれが最初の一歩だった。研ぎ石を小川に投げ込むことを思いついたDudagogは早速それを実践した。2回目のショックは痩せ細ったオークが研ぎ石をつかんだとき、そして、直後に3度目のショックがDudagogを襲った。若いオークの皮膚が緑色に輝き出すと、首のあたりから自分で皮膚をめくってしまったのだ。唯一ショックを受けることがなかったのは腰を抜かすことなく、その不気味なオークに背を向けることができたことだった。

遂に最後のショックがDudagogを襲った。Dudagogの右足は着実に歩む動作を始めたのだが、背後から後頭部への強烈な研ぎ石の一撃が走ると、あまりの勢いに喉を突き破っていた。Dudagogはそれ以上、喉の渇きに悩まされる必要はなくなった。朝が終わる頃にはすべてがまた静寂に包まれていた…。


注意:この物語の内容は必ずしもゲーム内でのシナリオと一致するわけではありません。








9:01 2017/05/04

by horibaka | 2017-04-13 08:59 | その他 | Comments(0)
BNNアーカイブ 鎧を愛でる祭事

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鎧を愛でる祭事

投稿日:2001年5月6日

Jane Bryant, BNN Reporter
全シャード

いつもは閑散としているTrammel SkaraBraeのホールに、大勢の物見客が訪れていました。それはというのも、ホールの奥に鎮座する奇妙な甲冑のおかげなのです。

ホールはある種奇妙な雰囲気に包まれていました。ドアをくぐって程無くして、皆馬を降り、それが当たり前であるかのように靴を脱ぎ捨てて先を急ぎます。
床には荒い繊維を編み上げたと思われる、分厚い絨毯が何枚も敷き詰められ(それは皆が言うには「タタミ」という敷物とのことです)、直に座り込む者、「セイザ」という組み足を試みる者も現れました。これといった模様も見受けられないこれらの敷物には心が宿っていると皆は言います。
床に直に座り込む人々の隙間を縫うようにしてホールの奥に歩を進め、ひときわ大きな人だかりの先に視線を移すと、そこには皆の注目を一身に集める甲冑が飾られていました。
所々を紐で結ばれ、継ぎはぎであつらえた奇妙な甲冑は、隙間も多く一見して素晴らしい出来映えとは言い難いものがあります。装飾品としての鑑定眼を持ち合わせているわけではないにしろ、ここまでもてはやされるには何らかの美術品的価値のあるものなのではと思わせます。
端でぶつぶつとウンチクを垂れる、少し腰の折れた中年の男が語るには、武勇を奉り、男子のたくましく力強く成長することを願った催しとのこと。小脇に吊られた魚のイミテーションの意味するところは結局分からずじまいでしたが。








0:40 2017/05/02

by horibaka | 2017-04-12 00:39 | その他 | Comments(0)
BNNアーカイブ 巨大イカ捕獲される

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巨大イカ捕獲される

投稿日:2001年4月27日

Morlice Johnson, BNN Reporter
Asuka

身の丈が大人10人分、重量255ストーンはあろうかと言う巨大イカが捕獲された。Vesper所属の網漁船が沖合で操業していたところ、何かに衝突し船が船尾左舷に大きく傾いたという。幸い衝撃は小さく転覆は間逃れ、急ぎVesper港に引き返し、入港するために税関前を通過したところ、税関職員が網にからまった巨大な下足を船尾に発見した。Vesper港に引き上げられた時点で既に死亡していたという。これだけの大きさのイカの捕獲はVesperでは例がない。

網漁船の船長Calebさんは衝突した直後座礁と勘違いしたが、衝撃が「岩にぶつかったにしては柔らかい感じもした」という。いずれにしろ船が大きく傾き今にも転覆しそうな状態だったため、急ぎ帰港したという。
「こんな大きなイカは漁師になって以来見たことがない」
「こんなのがひっかかっていてよく転覆しなかったもんだ」
巨大イカを前に船員達は興奮した面もちで語った。Vesper周辺に生息しているかどうかを含め、生態については不明。








5:22 2017/05/01

by horibaka | 2017-04-11 05:20 | その他 | Comments(0)
BNNアーカイブ イルシェナー伝:パート III

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イルシェナー伝:パート III

投稿日:2001年3月20日

ジャーノ・ミリク
全シャード



ファセットこそ違えども、徳は確かに存在しているようだ。我々の探検隊が全てを目撃したわけではないのだが、イルシェナーのどの地域でも8つの徳の神殿についての話を聞くことができた。最も古いとされる、慈悲の神殿(Shrine of Compassion)を建造したのはイルシェン自身だと伝えられている。しかし、実際には彼女の存在を明らかにできる文献は非常に乏しく、わずかに残されたこの詩に詠われている程度である。
『イルシェンは輝きに満ちていた
  音もなく遥か太陽の高みへ向け
 アンクがそびえ立った
  この慈悲の大地に』
奇妙なことに、混沌の神殿(Shrine of Chaos)もまた発見されている。きっとロード・ブラックソーンが聞けば喜ぶに違いない。

人々と神秘

我々が直面している最も大きな疑問は、イルシェナーの人々に何が起こったのか?ということだ。ほんの僅かずつながら、我々は手がかりを見つけだし、我々はその発見の度に驚かされることとなっている。そう、我々の物事を見据える目を変えることとなる知識に。

「粉砕」のおよそ150年の後、最も驚くべき事が起こった。アルボル(Ulvol)という名の非常に優れた魔法使いがファセットを越えたゲートを開いたのである。アンスキスタスの民はそれをファセットとは呼んでおらず、"アンクタマール(Anktermar)" - "秘密の世界"(hidden worlds)と表現していた。アルボルは彼自身がそれらのゲートを、あたかもリュートの弦のように調整することが可能であることに気づき、新たな目的地を発見することができた。我々はこの驚くべき方法に関する記録を見つけだしたいと思っているが、今のところ成果はあがっていない。イルシェナーの人々は、ちょうど読者や私がブリテインからスカラブレイに移動するかの如く、ファセット間を行き来していたのだ。これは非常に驚くべき事である。次なる疑問点は、それらのゲートはどこにあるのか?ということだ。"ヴァスグレス"(Vasgres)と呼ばれる固定ゲートに関する文書が世界間の交易に用いられている。今までにそのようなものを発見した者は誰もいないが、我々はミスタスのいくつかの文献において、通路に関するものを発見した。
『4人の反逆者が正義のヴァスグレスから虚空へと送られた。残りの bal-lem も投獄されている。アンクタマールと繋がる献身の地(Sacrifice)の最後のヴァスグレスは封印された。私たちの民と外界に存在する者との安全が確認された。私たちは正しい行いを為し、ミスタスを復興させてきた。自らの身を捧げた友よ、徳の神殿が常に共にあらんことを。』

『bal-lem |/|/|/|(解読不能)|||/// が北の塔を占領し、破壊するに及んでいる。』

『 |/|/|/|(解読不能)|||/// がやってきた。彼は bal-lem だ。彼は Anilem になろうと目論んでいる。』

『bal-lem はAnorlorの仲間たちと軍団を作っている。彼らは私たちの破滅を目論んでいる。』

『bal-lem |/|/|/|(解読不能)|||/// を私たちが作った牢獄に永遠に封印するために、8人が名乗りを上げている。彼らに徳の導きがあらんことを。』

『ヴァスグレスからの移住は完了しつつある。もし |/|/|/|(解読不能)|||/// が戻ってくるようであれば望む者は逃げた方が良い。』
bal-lemとは "邪悪なる者"(Evil one)を示している。全ての箇所で、この "邪悪なる者" の名前は削除されてしまっている。bal-lemが誰であったにせよ、現在は投獄されており、イルシェナーの殆どの住民は他のファセットに避難してしまっているようだ。これはちょっとした混乱のようだ。何故この "獣" が捕らわれたというのに彼らは戻ってこないのだろうか? 何故ファセット間を通じるヴァスグレスを破壊するのだろうか? 繰り返しになるが、これに関する文献や古文書が早く届くことを願っている。

結論

多くのことが未だに語られていない。これは、ソーサリアの異なるファセットであるフェルッカとトランメルのように、このイルシェナーについて要約しているかのようだ。不死の珠玉が粉砕されたときに断絶した世界。徳の考えが存在し、従われた世界。強大なる悪が存在し、投獄された後にも恐れられ、かつての住民さえ戻ろうとしない世界。この単純な事実によって、我々の中にも無意識のうちに発散している恐怖のために冒険を中断する者がいるかもしれない。それは既に投獄されているというのに。
ジャーノ・ミリク
ライキューム 上級学術研究員









7:26 2017/04/29

by horibaka | 2017-04-10 07:25 | その他 | Comments(0)
BNNアーカイブ イルシェナー伝:パート II

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イルシェナー伝:パート II

投稿日:2001年3月20日

ジャーノ・ミリク
全シャード

復興

残された人々は徐々に復興を遂げると、その集団の中から指導者が現れた。強く確信して言えることだが、イルシェン(Ilshen)は人々をまとめ上げ、秩序を復活させた。イルシェンは僅か22歳の若さにして、文明の再構築に乗り出したのだ。世界中の全てのものが適切に配されるように尽くし続けた彼女の献身以外のことで、彼女について言及された記録は殆ど残されていない。我々は世界の再構築を始めたこの若い女性についての文献をもっと集めたいと願っている。

世界の北東部に集まった人々は山際に街を形成し、モントール(Montor)と名付けた。その昔、ソーサリアには同じ名前の都市が存在しており、それは皮肉にもロード・ブリティッシュにより統治されていた。当初、私はこの名前は親しみのあるかつての街の名前を流用したのだと思っていた。しかし、読者諸氏はこの名前を "山の情熱(Mountain Passion)" と直訳することができるだろう。後者の方が正しいようだ。別の文書では、この名前は "Mont-Or" と表記されている。後者の名前は災害の中を生き抜く人々の都市の名前として実に適している。この都市ができあがるまでには40年ほどかかった。全ての文献を総括するに、この都市は山と街との間を滝が流れる楽園であったようだ。イルシェンと学者たちの議会によって法と政府機関が定められ、平静に統治されていった。

モントールは、完成から20年後に破壊された。何が起こったのかについての文献は発見されていないが、モントールは火山の噴火に遭ったのではないかと思われる。形成された都市は完全に振り出しに戻ってしまったのだ。また、モントールの人々はこの噴火を予期しており、避難していたとの話も残されている。

再生と分離

モントールという単一の都市は、いくつかの党派に分かれていった。この分裂は、都市が破壊されるより以前に既に生じていた。都市は破壊されてしまったが、その場に留まった人々もいた。彼らは山を下り、テントやワゴンを設置してキャンプを続け、噴火が収まるのを待って街に戻ったのである。

西方に向けて道が延び、山は分かれていた。途中には砦が築かれていて、越えてくるものを防いでいた。世界の北西部は巨大な森でジャングル化しており、南部へと広がっていた。この地域の中心部には "Terort Skitas" - "知の聖堂" がある。我々が手にしているイルシェナーに関する情報は、殆どがこの神殿で発見された古文書である。この神殿は都市が破壊されるよりも昔に建設されたものであり、破壊される前のモントールに似ている。そして、モントールから逃げ延びた人々のうち、ここを訪れた人々もいた。彼らは自分たちを "アンスキタス(Anskitas)" と称した。それは大まかに、"覚醒された知識"として翻訳されている。そこは学問と熟考の場所となっていた。殆ど空の本棚にある記述から判断するに、ここは恐らく我々のライキュームに匹敵するものであったのだろう。

西方へと移り住んだアンスキタス民は全体の一部にすぎなかった。残りの人々は学問と黙想に身を置くことを好んではいなかったのだ。ある古文書に拠れば、彼らは『…禁欲的で力強く、あらゆる物事の均衡を追い求めている』と表現されている。彼らは南へと向かった。南方で、彼らはあまり友好的ではないリザードマンの種族を発見した。南西部は、沼地化したジャングルが広がっていた。最南端には、彼らを常に悩ませることとなったリザードマンの巣窟となっていた。これは恐らく彼らが街を形成していたということを意味しているのだろう。トリンシックに匹敵するような砦のように、壁に囲まれた都市があったのだ。彼らはそれをミスタス(Mistas)と呼んだ。街の西には二つの塔があり、地下に広がる巨大砦の入り口となっていた。我々の得ている全ての情報に拠れば、彼らは非常に高貴な人々であったということが示されている。

モントールを離れたまた別の一団は南方へ向かっていた。ここで発見されたものについて、我々にはまだ解明できていない部分が残されている。世界の南東に位置する場所に、水上に設けられた都市がある。これに関しては未だに謎に包まれた部分が多い。彼らは全く第二言語を用いなかったのだ。彼らはその都市を "レイクシャー(Lakeshire)" と呼んだ。その一方で、アンスキタスの人々はその地を "マイレグ(Mireg)"と表現している。これは翻訳すると "水上の家(Water-Home)" となる。また、ミスタスの人々は、そこを "不幸の地(lacking will)" と呼んだ。全体として、非常に混乱を招いているのだ。我々がもっと沢山の情報を集められれば、解明されることになるだろう。

この地域の周辺のいたるところで、見慣れない魔法が研究されていたようだ。湖の中心には城が確認されている。まだ誰も調査として訪れたことはないのだが、知の聖堂で発見された文献にその地への通路があると記されている。
『Est ven lem was mani』

翻訳: 『高寿を求める者』
これは一体何を意味しているのだろうか。

レイクシャーの北側には、また一風変わったも地域を見ることができる。巨大な木の中に作られた村で、ピクシー(Pixies)と呼ばれるものが生息している。そんなばかげた話を信じるのは容易いことではない。南にはさらなるミステリーが広がっている。そこには恐らく境界線を示していると思われる石塚が見つけられることだろう。あるパーティーの報告によれば、森の中で風変わりな造形物を見たということだった。街の西には、廃墟と化した鍛冶場があり、そこはまるですぐそばの洞窟から掘り出された鉱石を加工していたかのようである。今ではすっかり害獣に占拠されてしまっている。この地域に関する最後の点は、山のすぐ横に築かれている大きな要塞だ。中に入るほどの勇気を持ったものは未だいないようだが、外側には骨や頭蓋骨までもが堆く積み上げられている。この場所に関して、アンスキタスのとある本に記述がある。
『korp ku-nte reg de por-ilem-mani-lemi』

翻訳: 『生命を蝕むその住処での死』
この地を最初に訪れる者は誰なのだろうか。








5:39 2017/04/28

by horibaka | 2017-04-09 05:36 | その他 | Comments(0)
BNNアーカイブ イルシェナー伝:パート I

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イルシェナー伝:パート I

投稿日:2001年3月20日

ジャーノ・ミリク
全シャード



モンデイン(Mondain)は1000年に渡って不死の珠玉(Gem of Immortality)を支配し、ソーサリア(Sosaria)を思いのままに操ってきた。この支配は、遙か彼方よりやってきた見知らぬ男によってモンデインが打ち倒され、不死の珠玉が粉々にうち砕かれたことで幕を閉じた。これはこの世界に住む我々にとっては暗黒期が終結した最初の時代であったのだが、イルシェナー(Ilshenar)では事は終わっていなかった...。その話を進める前に、まずは我々が知る限りのシャード(shard)とファセット(facet)について話しておかねばならないだろう。

不死の珠玉が粉々にうち砕かれたとき、それぞれの破片(=シャード)が誕生し、その一つ一つにソーサリアが存在することとなった。我々の知る限り、それぞれのシャードには固有の歴史があり、異なる人々が生活している。近年では、それぞれのシャードの中に、独自の歴史と人々を持つ別の面(=ファセット)が発見されている。この無限の可能性、無限に続くものは多くの人々を混乱させることだろう。今自分たちがいる層の下にもさらに別の層があるのだろうか? その層のさらに下の層に行くことができるのか?……この話は哲学者たちに任せるとしよう。

現在我々が知っている世界には、旧来からあるファセットのフェルッカと、新しいファセットのトランメルが存在する。ここで1つ考えておかねばならないことは、ミナックス(Minax)もまた、別のファセットから到来したということだ。奴が元来住処としていた世界のことは殆ど知られていないが、ここで少し脇道に逸れるとしよう。トランメルは、ロード・ブリティッシュ(Lord British)とニスタル(Nystul)がそのための魔法を使うまでは存在しなかったはずである。この魔法がどのように作用したかというのは、私の貧弱な知識を遙かに凌駕しているが、ロード・ブリティッシュとニスタルの徳の力が作用している事は間違いないだろう。

では、イルシェナー(Ilshenar)とは最近発見された新しいファセットなのだろうか? この地を最初に訪れた勇気ある人物が、地図といくつかの文献を携えて帰還している。連日してさらなる情報が我々の元に寄せられ、この神秘なる新たな土地の謎は徐々に解かれようとしている。私は寄せ集めた文書類を纏め、イルシェナーの歴史を追いかけようとした。そう、モンデインの支配が終わってから、つい近年までの間に何が起こったのか。イルシェナーの民は、一度に二つの言語を話すことがたびたびあるため、この作業は困難を極めた。学者に拠れば、第一言語は我々がよく知り、使用している言語と共通しているもので、第二言語はまったく異なるものだという。第二言語の中には、我々が魔法を詠唱するときに用いる力の言葉(words of power)に酷似したものが多く含まれている。簡単な例を、ウィスプ(Wisp)の文献の中で見つけることができた。彼らの言語では、Wispの表現に用いられる言葉は "Orlor"。これは我々の世界の "Ort Lor"にもよく似ていて、 "魔法の光"(Magic Light)と翻訳することができる。実際、魔法や神秘的学問で用いられる言語の大部分は、それぞれ微妙に異なる方言で用いられることが多い。力の言葉の起源に関する議論は、これまでにも長い間行われてきているが、イルシェナーにはその答えを導く何かが見つかるのかも知れない。もしかすると、イルシェナーの人々は我々よりも多くの魔法を知っているのかもしれない。そう考えるようになったが、ここで話を戻して、先に進めるとしよう。

粉砕

モンデインの支配期に立ち戻ってみるとしよう。彼は、その見知らぬ男によって最期の時を迎えるまでは、誰の手も及ぶことのないソーサリアの支配者だった。この話は小さな子供たちでさえ知っているもので、且つこの時代から、つい最近の混乱期を越え、発見と学識、そして平和の現在に至るまでがよく知られている。しかし、イルシェナーは我々のこの幸せな運命を共有することはなかった。モンデインが打ち倒された日は「粉砕(Shattering)」として知られている。『~それは死と災害により汚された日なのだ。その日、全てが正しい方向に進まず、全てが破滅していた。世界の全てが変わってしまった。』これはイルシェナーで発見された文献 "残されしもの"(All That Remains) の中の一節である。この時点では、私はまだこの話が事実であるのか、それとも創作されたものであるのかは自信が持てない。しかし、次の箇所から何が起こったのかが非常によくわかる。私がまだ発見していない何かが伝わってくるようである。
『世界は堕ちた。そこに至る断絶と破壊は復元されたが、それは異質な世界。一歩たりとも歩んではいないが、それはかつて私が存在した場所とは異なっている。世界は運命に飲み込まれ、再び吐き出されたとき…混迷と破壊と変化が起きた。私たちは自らの大地を彷徨うこととなった。』
これはつまり、彼らの世界は我々の世界とは全く異なるものに様相を変えてしまったということを意味しているようだ。今なお生き延びている人々は恐怖に戦いているということが想像できよう。この最初の日以来、物語は次々と展開していった。私はこの歩みを、最初の冒険隊が持ち帰った古文書の中に見つけだすことができた。
『全てはっきりした。"Anorlor" がこの堕落した世界を清め、モンデインは打ち倒された。"Mistas" は復元された。』
前述したように、"Orlor" はウィスプを示す言葉だ。この点から、"Anorlor" はダーク・ウィスプ(Dark Wisps)を指すものではないかと推測される。しばしば登場する "Mistas" は、調和を示す単語であると思われる。恐らくこの文書の筆者は、ダークウィスプが原因だとしているのだろう。ひょっとすると、彼らはアルマゲドン(Armageddon)の魔法を詠唱したのかもしれない。ちょうど遙か彼方にゾグ(Zog)がそうしたように。この考えは、最後まで私の頭から離れることはなかった。ここでフォロワーズ・オブ・アルマゲドン(Followers of the Armageddon = FoA)と、彼らのオブシディアン・ウィスプ(Obsidian Wisps)に頭を戻してみるとしよう。


その他の著書:
『全ては無のために。モンデインは"Anilem"なり』

この著書では "Anilem" とは何であったかということについて説明されている。最も有力な解釈では、これは "破壊した者" を示すとされている。この筆者が世界の破滅の原因はモンデインであると考えたのであれば理に適っているだろう。彼がねじ曲がった人物だったとすれば。

最後の引用は世界の北西部での大きな神殿で発見された本からのものである。この神殿は "Terort Skitas" として知られている。直訳すれば、"知の聖堂"(Temple of Knowledge)である。次の一行は、我々の歴史と非常に近いものを示しているように訳すことができる。

『Avenlem est Anilem. Mondain est korp-kat. Sosaria est bal-kans』

翻訳: 『失われし者は破壊者。モンデインは死を迎え、ソーサリアは焼き尽くされる。』

これを解読するのは容易なことではない。"失われし者" は、文字通りには "発見できない者" となり、この筆者が、見知らぬ男がモンデインを打ち倒し、世界を破壊することになったという伝承を意図しているのではないかと推測できる。解釈次第になるところではあるが。


全ての説から、イルシェナーはモンデイン陥落前後で想像を絶するほどに変化してしまったと言うことができる。








5:52 2017/04/27

by horibaka | 2017-04-08 05:50 | その他 | Comments(0)
BNNアーカイブ 戦火に残された希望 - III

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戦火に残された希望 - III

投稿日:2001年2月11日

JP Reporter
全日本シャード

『デュプレ、俺は心配でたまらない。ニスタルは俺達の知る限り最も強力な魔道士のはず。レブロはその彼を指先1本で跪かせる力を秘めているんだぞ』

『ああ、その通りだジョフリー。だがどうしてそいつは俺達の前から逃げたりしたんだ?』

『さっきも言ったろう。おまえさんの口臭に違いないってな』ジョフリーは笑顔を見せた。

『そうだったのかもな』デュプレはクスクスと笑い出した。『さあ、本を取りにいくぞ』

『ああ、そうしよう』ジョフリーはうなずき、そして2人は旅立っていった。







デュプレがニスタルの部屋の扉を叩いた。しばらくすると、まだやつれを隠せないニスタルが姿を現して彼とジョフリーを部屋に招きいれた。

『本は持ち帰れたのか?』ニスタルは自分の机に向かって足を進めながら訊ねた。

デュプレは悪戯そうな笑顔でバッグから2冊の本を取り出すと、疲れ果てた魔道士の前にそれらを置いた。

『途中、何事もなかったのか?』ニスタルが問い詰めた。

ジョフリーが話に割って入った。『些細なことです。適当にこなしておきましたよ』

ニスタルは怪訝な顔で訊ねた。『どのくらい殺したのじゃ・・・』

デュプレが答えた。『ただの1人も殺していません』

『ただ…衛兵には2名ほど休んでもらいましたがね。意識を取り戻せば元通りになるはず』ジョフリーが笑った。

ニスタルは安堵のため息をついた。『派閥抗争は血生臭いものじゃが、使命を忘れることなくよく頑張ってくれたな。誰の命をも奪うことは避けたいが、時としてそれは贅沢な望みとなることもある。何事もなくこれらの本を持ち帰ってくれたことに礼を言うぞ。後はわしに任せてくれ』

『ニスタル殿、お身体の方はもう大丈夫なのですか?』デュプレが眉をひそめて訊ねた。

『ああ、ありがとう。悪魔との遭遇で確かに疲れてはいるがな』ニスタルは渋い顔をした。
『さあ、おまえたちはいつもの仕事に戻ってくれ。デュプレ、おまえはタイボール(Tyball)を探し出すための手がかりを見つけたのだろう?2人とも出て行くのじゃ』ニスタルは優しく言った。

デュプレがジョフリーに視線を投げると、ジョフリーはうなずき、2人はニスタルの部屋を後にした。







ジョフリーとデュプレは城の中庭を歩き始めたがすぐに立ち止まってしまった。

『デュプレ、どうもニスタルが心配なんだが…』ジョフリーが言った。

『ああ、私も同じだ。あれほど怯えるニスタルをかつて見たことがない。新たな鐘を作り出すことで少しでも自信を取り戻してくれることを祈ろう』デュプレが応えた。

『まったくだ。神殿を清めることでフェルッカでの命に活力をみなぎらせ、あの魔女を倒すきっかけになって欲しいものだ』

デュプレは振り返ると再び歩き出した。『あの魔女が鐘の在り処を知り得、そしてそれを破壊することができたということを、私は事実として受け入れるしかないようだ』

『鐘、蝋燭、そして古書に魔法が宿っていたとしても、それらがまた同時に物質的な存在であることも事実だ。そうであるなばら破壊という行為には屈することができない可能性は十分にあるんじゃないか?』

『恐らくな。では、私はこれで帰ることにする』デュプレはそう言い残すと城門に向かって歩き始めた。

『じゃあな』ジョフリーはそう言うと城の中へと消えて行こうとした。

『ジョフリー』デュプレが呼び止めた。『おやっさんを頼んだぞ』

『ああ、そうだな。そうするよ』







翌日、デュプレとジョフリーはニスタルの部屋にいた。疲労の残っているだろうと予測されたニスタルはそれ反して今日は自信に満ちているように見えた。彼は探していた知識を手にいれたようだ。

『勇気の鐘を製造するための材料リストを書き出しておいた。わしが最も恐れているのは、このうち一部の材料についてじゃ』ニスタルは腰掛けると巻物を机の反対側のデュプレに示して見せた。

デュプレとジョフリーの2人は巻物をじっくりと読んだ。

『ニスタル殿?これはあまりにもレアと呼べるものばかりのようですが…』デュプレは困惑した。

『そうかも知れん』ニスタルはにやけて見せた。『おまえたちならば、きっとこのすべてを、しかも短時間に見つけてきてくれるじゃろうと信じているぞ』

2人は互いに顔を見合わせると低く唸った。

『おまえたちは世界で最も尊敬されている人物のはずじゃ。きっと幾人もの優れた男女が材料を探す支援を申し出てくれるじゃろう。1つ注意しておかなければならんのは、敵対する他の派閥の者達は、巧みにおまえ達の行く手を阻み、そしてこの使命を阻止しよう狙うことじゃ。その1つ、魔道士評議会のアノンは我々がすでに真実の本、そしてフェルッカからおまえ達が借りてきてくれた2冊の本の存在に激怒するじゃろう。ミナックスの連中は鐘を破壊したらかには、おまえたちがこれらの材料を見つけ出すことを全身全霊を掛けて防ぐはずじゃ。そして最後に』ニスタルはそこで言葉を止めた。
『最後にレブロとシャドーロードの崇拝者達…奴らの恐ろしさには底知れぬものがあるじゃろう…。どうか充分に気を付けて行動して欲しい』

『ニスタル、あのときはふいで準備が整っていなかっただけのこと。決してあなたの力が及ばないなどとお考えにならないでください』ジョフリーが返した。

『まったくです』デュプレは続けた。『ニスタル、あなた以外に自分の背後を守ってもらいたい魔道士などこの世界には存在しません』

『優しい言葉に感謝しよう。しかし、わしは憶測はせんたちでな』ニスタルは静かに言った。
『さあ、2人とも出かけるのじゃ。どうか迅速にこれらの材料を集めてきて欲しい。長い間に渡って崩壊寸前の神殿を早々に清めなければならん。必要なすべての材料が揃った時点で役目を果たすべくシャミノ(Shamino)もすでにこちらへ向かっているはずじゃ。蝋燭と古書はすでに我らの手中にある。しかし鐘はどうしても作り直さねばならない。時間が経てば経つほど神殿を清めるには強大な力が必要となるじゃろう。さあ、一刻も早く行動を起こすのじゃ!』

ジョフリーとデュプレは同意のしるしにうなづくと、巻物をつかんで部屋を足早に出て行った。

ニスタルはゆっくりと椅子に身体を預けた。

『友よ、どうか安全に戻ってきてくれ…』








5:19 2017/04/25

by horibaka | 2017-04-06 05:17 | その他 | Comments(0)