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カテゴリ:その他( 180 )
BNNアーカイブ ひとすじの光明

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ひとすじの光明

投稿日:2003年4月6日


Mizuho
希望というものは、とても残酷な代物だな。その存在を信じ、大局を見誤った者がどれだけいた事か。なまじそれがある御蔭で、痛い目をみるのだ。さっぱりと諦めさせてくれればいいじゃないか *evilgrin*。 信じて努力する、しかし、その結果報われなかった思いが、幾つ存在すると言うのかね。きっとあれは、人間に送られたもっとも最悪な災いのひとつだろう。冒険者諸君、それでも君たちは、箱の底に残った物をつかもうとするのだろうか?





商都べスパーの外れに、寂しげな木小屋がある。しばらく前からそこに住み着いている三人組の姿は、町の人々にも、そして行き交う冒険者達にも見慣れたものになっていた。どうやら彼らは、今まさに冒険を終えて帰って来たという様子で、くたびれた顔のまま荷物を解き終えようとしている。注意深い目をもつ者ならば、何時もよりひとり分姿が少ない事に、気が付いただろう。旅の後始末が一段落して落ち着くと、執事が夕飯用に作り置きしてくれていた子牛のシチューを娘と食べながら、貴族は先ほどの別れを思い出していた・・・・・。

Kyle: 「分かった、お前らは本気で私に協力すると言うのだな?今まで欺いてきたこの私に?」

Saul: 「無論じゃとも・・・、カ、カイル」

Kyle: 「・・・、カイルと呼んでくれて結構だ。しかし、いままで以上に危険な目に会うかも知れんのだぞ」

その言葉を聞いても、貴族とその娘は考えを変えようとはしなかった。固い決心で自分の想いを貫こうとする気持ちが、表情に表れている。「立派に成長した」、誰に向けた言葉か定かではないが、執事はそう心の中で呟くと口に出してはこう言った。

Kyle: 「ならば是非も無い。私も、やるだけはやってみよう」

いい終わるや否や、今度は娘が立ち上がって執事に詰め寄る。

Charlotte:「やってみる、じゃないの。貴方がやるのよ!?人間に成りたいんでしょう?」

凛としたその感情と視線を受け、執事は心地よい刺激を感じていた。どうやら、自分のとった行動は間違っていないようである。たとえ最終的な目的を果たせず、このまま滅ぶとしても。

・・・・・シチューを平らげ、スプーンを置くと貴族は呟いた。

Saul: 「ムーングロウ・シティまでの船便を、至急手配しなくてはならんな」

娘は、柔和さのある笑顔で頷いていた。悪魔を人間にするすべを探しに、二人はライキュームへと旅立つのである。自分達の希望も乗せて。





面白い、笑わせてくれるじゃないか。悪魔が人間に成ろうとするなんて、なんて馬鹿げた話だ。ましてや、それを人間が手助けするなど、聞いた事もない。クックックックッ、上級の笑劇だよ。悪魔のような人間が蔓延る中、その逆を行こうとはな。しかしだ、この世の中は甘いもんじゃない、悪しき心も、正しき心も、そう思い通りに行くとは限らないんだよ。冒険者諸君、そうは思わんかね?








5:23 2017/06/27

by horibaka | 2017-06-16 05:22 | その他 | Comments(0)
BNNアーカイブ 俘虜(とりこ)

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俘虜(とりこ)

投稿日:2003年3月29日


Mizuho
良いかな冒険者諸君、ひとつ君らに教えて上げようじゃないか。この世の中には、知らないでいる方が幸せだという事もあるという事を。目の前の真実が真っ赤な偽りだったら、君は明日からどうするのかね。それとも、まだ信じる事が出来ると言うのだろうか。偽りの中の幸せ、真実である故の苦悩。そして縛られた自由と、縛られない不自由。さぁ、君の心の音を聞かせてくれないか?





先日の行動で、「黒衣の男」の僕、Orcish Lordを見事捕獲する事に成功した貴族だったが、思いのほか捕虜の口は堅く、そこから情報を引き出すのに苦労していた。側には、衛兵隊長の姿も見える。

Saul:「なかなか口を割らんやつめ・・・」

Tab :「普通の人間ならば、精も魂も尽き果てておりましょうに」

Orcish Lordの体に刻まれた無数の傷跡が、拷問の凄惨さを物語っていた。虜囚の身になってから彼の口は堅く閉ざされており、貴族達の費やしたここ数日分の努力を無に帰しているのである。

Saul:「こんな姿、娘には見せられんな・・・」

薄汚れた手を見つめて呟く貴族に、衛兵隊長が歩み寄り、全てが解決するまでの辛抱だと語りかけた、その時である。不意に木戸がノックされ、三対の視線がそれを追った。

Kyle :「私です、少し休憩をお取りになりませんか?軽食の準備が整いましたが」

Saul:「ううむ。しかしな、見張りの者がおらんのでな」

Kyle :「それでしたらお任せください。暫しの時間であれば、私めにも務める事が出来ると思います」

煮詰まっていた事もあり、貴族は執事の言葉を聞き入れて休息を取る事にした。衛兵隊長を伴ない、母屋へ向う。二人が出て行き、扉が閉ったのを確認した執事は、Orcish Lordの方へ振り向いた。

Kyle :「酷い事をする・・・」

執事が手を翳し、奇妙な動作で何かを呟くと、Orcish Lordの体に刻まれた傷口が塞がり始める。

Orcish Lord:「Ack!」

Kyle :「そう脅えないで下さい、話がしたいだけですから」

Orcish Lord:「Ru’eeg’a!」

Kyle :「このままでは、分かってもらえない様ですね」

そう言い終えると、カイルは全身に「力」を漲らせた。体に可視出来るほどの魔力が纏わりだし、徐々に肉体を変化させていく。透視眼を持つ者がそこにいれば、小屋の中で対峙している一方の変化と、その後のやり取りに驚愕させられた事だろう。

Orcish Lord:「Ulg gimb- eem Shakh・・・」

Kyle :「時間がありませんので手短に話しましたが、彼方はあの方達に協力する態度を取って下さい、お願いします」

話声が聞こえ、ドアを開ける音がする。どうやら貴族達が戻ってきたようだ、執事は瞬時に身なりを整えた。

Saul :「変りはなかったろうな?残酷なようだが、娘のためだ。実りのある話を聞かせてもらうぞ」

鞭を取った貴族を横目に、今まで岩のような沈黙を守っていたOrcish Lordが、口を開く。

Orcish Lord:「もうその必要はない、何から聞きたいUga?」

貴族と衛兵隊長は、目を丸くして驚いた。そして、執事に向かい何かあったのかと尋ねた所、「余り物の食べ物を分けただけです、きっとお腹がすいて気分を損ねたのでしょう」との言葉を得、顔を見合わせてまた驚いた。何にせよ、気が変らないうちに聞き出さなければならない事は山ほどある。貴族は執事を下がらせ、尋問を開始したのであった。





どうやら物語りも佳境に入ったようだ、諸君達はこの話を楽しめているかな。所詮、他人の事だって?それは平和なことだな。何時同じような出来事が、その身に降りかかって来ないとも限らないではないか。君はその時の為の準備が、もう出来ていると言うのかね?*evilgrin*








5:30 2017/06/26

by horibaka | 2017-06-15 05:28 | その他 | Comments(0)
BNNアーカイブ 反撃の狼煙

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反撃の狼煙

投稿日:2003年3月21日


Mizuho
もしも、だ。もし、「全ての望みが叶う素敵な世界」があるから行かないかと誘われたらどう答えるのかね。「そんな世界はつまらないから行かない」だって?おいおい、似非道徳主義者みたいな事を言うのはよしてくれないか。自分の欲望のままに生きれるなんて、素晴らしい事じゃないか。*evilgrin*まぁ、その望みを達成するまでに多少の困難があるほうが、満足感は得られるものだがね。





ここは商都べスパーの辺境にある、皮取引所である。海からの潮風が、うらぶれた木小屋を煽っていた。

Saul:「落ちるところまでおちたな・・・、これじゃ逆戻りだ」

自暴自棄ともとれる溜息を吐いた貴族に、その娘が心配そうに歩み寄る。そしてそっと手を膝に置き、話し掛けた。

Charlotte:「何を仰るの、お父様。私は今の生活に満足しているわ。それに、これから頑張ろうって決めたばかりじゃない」

頷く貴族。だがその空ろな目は、失った物を追い求めているかの様であった。それも無理は無い、この半月ほどでこの男は、自分達の住んでいた大邸宅や貴重な宝物、そして様々な財産を失っているのである。ただ、それが一番大切な物、“愛娘”を守る為であった事が唯一の救いであった。

Saul:「うむ・・・。だが、このままでは如何ともし難い」

数秒の間を置いて、娘が答える。

Charlotte:「お父様、このまま待っているだけでは拉致があかないって、冒険者様達も仰っていたでしょう?私達に出来る事って、無いのかしら。いいえ、きっとあるはずだわ」

貴族は、昔から娘のお転婆には悩まされてきた。何度もおしとやかに育って欲しいと願ったものだが、今ではその聡明さや活発性が好ましくも、頼もしくも見える。そして、二人はその家の執事を交え、夜遅くまで話し合った。そして結論付けたのである。もう、一方的に恐怖に脅えて過ごすのはよそうと。

Saul:「今まで接触して来た者の内では、あのオークが一番御し易かろう。そこから何か解決の糸口を掴めれば良いのだが・・・」

Kyle:「やはりこのまま此処で静かに暮らすと言う訳には、まいりませんか・・・」

Charlotte:「カイル、彼方の心配は分かるわ、ありがとう。でもこのままでは、私は一生逃げて行かなくてはならないもの・・・」

貴族は頷きで答え、執事はそれ以上の譲歩を望むのを止めた。大体の方針は決まった、あとは協力してくれる冒険者達と細部を煮詰めるだけだ。衛兵隊長や守備隊も協力をしてくれるだろう。賽の目は転がった、あとは進むしかないのである。

「私も、覚悟を決めなければなりません」

退室した執事が呟いたその言葉は、誰の耳にもとどかなかった。たた、閉ざされた木戸だけがそれを聞いていたことだろう。





自分の生きたい様に生きる。そんな考えが非難されがちなのは、人間の根本的な部分に「悪」があることを、無意識に知っているからじゃないのかな。認めてしまえば楽になるのだよ。下手に崇高ぶるから、自分を追い詰める事になるんだ。楽に生きるのが一番だ、そうは思わないかね。堕落と快楽、素敵な言葉じゃないか、クックック・・・。








8:05 2017/06/25

by horibaka | 2017-06-14 08:04 | その他 | Comments(0)
BNNアーカイブ 悪魔が来たりて

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悪魔が来たりて

投稿日:2003年3月16日


Mizuho
突然だが・・・。諸君、こんな話を聞いた事は無いかね?食用にしようと思い、飼っていた家鴨に対して、愛情に似たようなものを芽生えさせてしまい、結局喰う事が出来ずにペットとして、共に怠惰な日々を過ごすような話を。なぁに、それが悪いと言ってる訳ではない。食材として、食べたければ食べる。愛玩用として、飼いたいなら飼う。どちらも正しい選択じゃないか。もし、非難されるべき事があるとしたら・・・。それらの決断ではなく、それを成し得ぬまま優柔不断に接する事じゃないだろうか。おっと、どうやら今夜は喋りすぎたようだな。何かのついでだ、昔々の話をひとつ、聞いていかないか。そう、瞬き程の昔話だがね。





禍々しい程に星は光り輝き、月は大地を照りつけている。そんなある日の事だった。ごつごつと荒い目をした岩肌に腰を降ろし、「彼」は考えている。辺りは、痛いほど静まりかえっていた。

暴力と快楽。殺戮、破壊、裏切。そして狡猾なる頭脳。
混沌の闇から生まれし、漆黒の肌と暗黒の羽を持つ者。

It’s a Demon. ―

そう、彼は人間からは悪魔と呼ばれる存在だった。奇妙な事ながら、幾度かの経験を通して彼は人間に興味を抱き、今では心を惹かれているのである。最初は、冗談めいた考えからだったかもしれない、別の人生を歩みたいと。

Another Life. ―

しかし、今では彼は固く決心していた。生まれ変わる為の肉体を、手に入れる手筈も整っている。あとは、計画を実行に移すだけだ。おもむろに力拳を握り締めると、魔力が迸りだす。この肉体でいるのも、そう長い事ではないだろう。彼は人間になるのだから・・・。





同じ生物であっても、理解しあえるのは難しい。それが他の生物であれば尚更だ。しかし、ひとりの悪魔が興味を抱いたように、人間というやつは時折予想外の結果を生むものらしい。面白いじゃないか。どうかな、私と一緒にこの話の顛末を聞き届ける気は無いかな?無論、時間が許せばの話だがね。*evilgrin*








8:42 2017/06/24

by horibaka | 2017-06-12 08:41 | その他 | Comments(0)
BNNアーカイブ 決意の表れ

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決意の表れ

投稿日:2003年3月8日


Mizuho
こんばんは、冒険者諸君。またお会い出来た事を、とても光栄に思っているよ。何しろ、死なずにこうして再会出来ているのだからね。どうかな諸君?前回、私の話した物語は気に入ってもらえただろうか。ある者は実際に、物語の片鱗に触れることも出来ただろう。ある者は人づてに話を聞いただけかもしれない。なぁに機会が無かった者も残念がる必要は無い、まだまだ続く・・・。そう、この物語はまだまだ続くのだよ。





春先の雨が優しく降り頻る中、苔むしたガードポストは佇んでいる。放棄されてから何年もたったそれは外見に変わりは見られないものの、中の様子は一変していた。埃が薄く積もり人間の代わりに蜘蛛が長い間の主であった。しかし再び人間の住人を得たそれは心なしかこれから起こることが判るかのように悲しく佇んでいるように見える。仮に作られた応接間の一室で、その館の主人とその娘が俯き座っている。執事が、見かねて紅茶を運んで行く姿が見える。

執事:「お茶が入りました」
貴族:「あ・・・、ああ」
娘 :「ありがとう、Kyle(カイル)」

その様子も無理は無い。つい前日に、魔物達の襲撃を受け、逃れてきたばかりなのである。その場は居合わせた冒険者達に救われなきを得たのだが、その襲撃の理由が貴族本人にあり、その目的がその娘である事が分かっている為、その行為は再来する物であろう事が予測された。

執事:「冒険者の方が、何名か外に護衛として残ってくれています。少し休まれては如何ですか?」

執事は、親と娘の顔を交互に見やったが返答は無い。やれやれと思いながらも複雑な思いで、その場から引き下がった。貴族は、過去の軽はずみな行為を悔いている様子である。器用なもので、腕を組替えるのと溜息を吐くのを同時に何度も行なっていた。しかし、なんら建設的な意見が出る訳でもなく、時折頭を掻き毟り、また溜息を吐いては苦悩していた。一方、娘は突然自分の身に巻き起こった、信じられない運命を甘んじで受ける意思は無い様で、聡明な頭をよく働かせ、解決策を導きだそうとしている様に見える。ただ、何事にも万事頼りになる執事が、こと今回の件に関しては曖昧な反応しか見せてくれず、困惑している事も確かだった。

娘 :「一体、その黒衣の人は何者なの?」

食器を下げていた執事が、珍しく物音を立てる。それを横目で注意しつつ、Saulは答えた。

貴族:「うむ・・・、正直私にも分からない。人の姿をしていたが、もしや人間ではないのかも知れぬ・・・」
娘 :「・・・」

諦めからか、強がりか。次に娘が顔を上げた時には、表情が引き締まり、力強い言葉が聞かれた。

娘 :「私、負けない。相手が何者だろうと、絶対負けないから。だって、私、お父さんの娘だもん」
貴族:「Charlotte(シャルロット)・・・」

二人の目には、薄っすらと涙が浮かんでいる。そして、それを単純にはなりえない表情で見守る、一人の男がいた。





ああ、あの滴る様な満月、今宵も面白い事が起こりそうで堪らない。あの晩、農夫が望んだ富と名声。黒衣の男が望んだ「生まれ変り」の肉体。ふたつの思惑が交差した時、来るべき悲劇の芽が生まれたのだよ。そして、その芽がつぼみになるまで二十年。我々にとってそれは瞬きほどの間だが、人間にとっては長い時間だ。どうやらつぼみは成長し、そのまま摘み取られるのを良しとしないようだが・・・。この先、どうなる事やら。*evilgrin*








5:23 2017/06/23

by horibaka | 2017-06-10 05:22 | その他 | Comments(0)
BNNアーカイブ 契約と代償

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契約と代償

投稿日:2003年2月14日


Mizuho
こんばんは、諸君。昨日は良い夢を見れたかな?これから話す物語は、ある有り触れた農夫に巻き起こった、それでいて類稀なる、奇奇怪怪な品物だ。常人には理解する事が難しいだろうが・・・。しかし世の中には、確かにこんな話が実在するのだ。そういう話を聞くのも良い経験になるだろう。どうか足を止めて耳を傾け、私の話を聞いて欲しい。もし機会があるならば、是非とも貴方にも体験して欲しい物語だからね。*evilgrin*





昼間の晴天が、まるで嘘のような嵐の晩だった。激しい風の中、館とは呼べぬぼろ小屋が、家主を風から守ろうと頑張っている。その家主である農夫は、ふとドアをノックする音に気付き、歩み寄った。こんな晩に、いったい誰の来訪だろう?ドアの取っ手に手をかけると、何時もなら軋んだ音を立て不平を鳴らす木戸が、すーっと開いた。
「どなたさんかね!?」問い掛け、ランタンで照らしたその先には、真っ黒な、そう、漆黒と言っていいほどの、深い黒味のあるローブに身を包んだ男が立っていた。そして、目の在るべき所からは、異様な赤い光が放たれている。
「!!」この客は・・・、人間ではない。農夫は知識からではなく、本能から悟った。そして次の瞬間、その彼の声が耳からではなく、直接頭に聞こえてきたのである。

黒衣の男「農夫よ・・・、農夫よ」
農夫「・・・・・・」
黒衣の男「そう脅えるでない、農夫よ」
農夫「おらは、死んだだか?いや、殺されるだか・・・」
黒衣の男「殺す!?それが望みなら今直ぐにでも叶えるが?」
農夫「!!」
黒衣の男「それがお前の望みでは無いはずだ。そうだろう」
農夫「おらの、望み?」
黒衣の男「貴族となり大きな屋敷に住み、美人の嫁を貰って裕福に暮らす、それがお前の見る夢だ。そうだな?」
農夫「・・・。そうだ、おらは金持ちになりてぇ・・・」
黒衣の男「ならばその願い、私が叶えてやろう」
農夫「本当だか?いや、そんな上手い話あんめぇ」
黒衣の男「なぁに・・・、お前には直に娘が授かる事になっている。その娘を私に差し出すだけでいい。それがお前の夢を叶える条件だ」
農夫「おらん所には、嫁っこなんぞ居ねぇ、誰も来ねぇだよ」
黒衣の男「貴族に成ってしまえば、此の世の殆どは思いのままだ。金も、女も力もな。違うか!?」
農夫「本当だか?生まれてくる娘を差し出せば、おらは貴族になれるだか!?」
黒衣の男「ああ本当だ、約束しよう。さぁ誓え、契約の時間だ」

永遠とも思われる一瞬が過ぎ去った後、農夫は絞るように声を出した。その表情からは迷いが消え、決心と打算が見て取れる。

農夫「・・・誓う、誓うから望みを、おらを貴族にしてくれ!」
黒衣の男「クックックックックッ、良いだろう。契約は成立だ。娘が二十歳になったその年に、必ず迎えに行くからな。ゆめゆめ忘れるな?」
農夫「・・・・・・」

強風が吹き荒れ、ドアを力強く叩き閉める。その音で農夫はやっと我に返る事が出来た。悪い夢だったのか!?いや、そうではない証拠に、雨と汗の滴りでその体は冷たく濡れそぼっていた。農夫は薄ら寒い思いを感じながら、口の中でなにやら呟くと、ベッドへともぐり込み寝入ってしまった。





この後、農夫がどうなったかだって?どうやら興味が出てきたようだ。教えてやるのは簡単だが、そうもいかない。今度は自分のその足で情報を得て、自分の目で真実を見つめる番だ。冒険者諸君よ、この物語が諸君らと共に在らん事を私は祈っているよ。それじゃあまた、何処かで会えることを楽しみに・・・。







5:28 2017/06/22

by horibaka | 2017-06-09 05:26 | その他 | Comments(0)
BNNアーカイブ Part I:復活 - 現実

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Part I:復活 - 現実

投稿日:2003年2月4日



「マラス(Malas)だって?」グレイン(Greyn)は地平線を見渡した。太陽は熱い砂の上で踊る陽炎に揺らいでいた。だが、彼の弟と、2人の親子と、彼らが乗ってきた馬以外は、生命の気配がまったく感じられない。「初めて聞く地名だ」

ファラ(Fallah)はグレインから目をそらして言った。「知らないはずです」彼女は歩き始めた。

グレベル(Grevel)は咳払いをすると、悲しげな目で兄弟を見つめた。「あんたたちには、この場所について言っておかなければならんことがある。聞いて嬉しい話じゃないがな。あの渦巻きに落ちて、2人揃って無事にここへ辿り着けたのは、本当に運がよかった」

「どうして渦巻きのことを知っているんだ?」モーディン(Mordin)が尋ねた。「近くに他の船はいなかったし、かなり沖合いのことだったから……」

「マラスの人間なら、みんな知ってるよ」グレベルはモーディンを遮って続けた。「みんな、そいつに飲まれてここへやって来たんだからな。だから、オレたちはこの湖を入口の湖“ゲートウォーター”と呼んでるんだ。渦巻きに飲まれた人間は、みんなこの砂浜に打ち上げられ」 グレベルは一呼吸入れた。「何十年もかけて、みんなでブリタニアに戻る方法を探したが、いまだに見つかってない。気の毒だが、あんたたちはもう、ここからは出られんのだよ」

モーディンは目を大きく見開き、グレインの脇に跳び下がった。「ボクたちは島流しってわけか?」

「いや、そんなんじゃない。ここの住民に悪い者はいない。みんな単なる漂流者だ。罪人じゃない」グレベルは水を一杯コップに注いでモーディンに差し出した。モーディンはそれを受け取り、ゆっくりと飲み下した。「ファラとオレは、今から10年前にここへ流されて来た。ここへ来てまだほんの数年っていう者もいれば、20年以上もここで暮らしている者もいる。ここから馬で少し行ったところに、オレたちの村がある」

グレインは水辺に歩み寄った。「だけど、ただの嵐だったんだ。たしかにかなり大型だったけど、元の世界に戻れないほど遠いところまで流されるなんて……、だけど、あんたさっき、これは湖だと言ったな?」

「ここには海はないのよ」ファラが優しく答えた。

グレベルは、兄弟たちの肩をしっかりと掴んで言った。「あんたたちには、話したり見せたりするものが山ほどある。村に帰れば、きれいな服も温かい食事もある。すぐには受け入れられないだろうが、とにかく村に帰ろう。砂丘の夜は冷えるからな」

グレインはうなづいた。「グレベル、あなたがたの親切には感謝するよ」彼はグレベルの手を握った。「私はグレイン・グリムズウィンド。そしてこれは弟のモーディンだ」

ファラとグレベルは一瞬身を凍らせ、表情を失った。

「グリムズウィンドと言ったかい?」グレベルは立ち止まり、悲しい目でグレインを見つめた。「ブレビノール・グリムズウィンド(Brevinor Grimmswind)と同じ、グリムズウィンドか?」

モーディンが振り返った。「それは父だよ!ここにいたのか!」モーディンはグレインの両肩を掴んで言った。「言っただろう、兄さん! 兄さんはあきらめようと言ったが、ボクは絶対に見つかると思ってたよ!」

「ここにいたよ。だが、1日に2つも悪い知らせを伝えるのは辛いんだが、父上はもういない」

「だけど、ここから離れる方法はないはずだろ!」モーディンが聞き返した。

「あんたたちの父上は、4カ月前に亡くなった。できることなら、こんな形で伝えたくはなかった。父上は、地図を作るための測量の旅から戻る途中に、クリスタル・エレメンタルに襲われたみたいなんだ。オレたちが発見したときには、もう手遅れだった。父上は、オレたちの村に欠かせない人だった。村の者たちはみんな、父上にはさんざん世話になった。オレたちは、あの人を元の世界に返すためだったら、なんでもした。あの人は、あんたたちにもう一度会えるとわかったら、どんなことでもしたはずだ。家に帰ってあんたたちの顔を見るという希望を、最後まで捨てていなかったよ」

モーディンの目に涙があふれ出た。彼は両手で顔を多い、その場に膝から崩れ落ちた。


--------------------------------------------------------------------------------

モーディンはグレベルの前に、グレインはファラの後ろに座り、4人は2頭の馬に分乗してゆっくりと村に向かった。砂丘を北へしばらく進むと、やがて緑の草と花に覆われた場所に出た。

「父さんは、相変わらず親馬鹿ぶりをさらけ出していたようだね」グレインは笑って言った。「父さんのことを考えると、オレたちが来たときに村のみんながわかるように、2人の肖像画を掲げていなかったのが不思議なくらいだ」

「そりゃあ、あんたたちを自慢に思ってらしたよ」グレベルは言った。「あんたはブリタニアで最高の騎士になる。モーディンは世界をひっくり返すほどの魔法使いになる。心の底からそう信じておられた。この村には、腕のいい鍛治師がいる。あんたには上等な剣を作ってくれるだろうよ。魔法用品の貯蔵所もある。何年か前に海岸で見つけたんだ。モーディンが使うと聞いて、反対する者はいないさ」

モーディンの表情は虚ろなままだった。彼の頭は、馬の歩調にまかせて左右に揺れていた。「そうですね」

「ひとつわからないことがあるんだ」グレインは言った。「ファラ、マラスには海がないと言っていたけど、山に囲まれているということか?」

ファラは大きな茶色の瞳を父に向けて助けを求めた。グレベルはニヤリと笑い、また前を向いた。ファラはわずかにグレインのほうに体を傾け、ささやくように答えた。「今にわかるわ」

馬がなだらかな丘の頂にさしかかると、グレインは皿のように目を見開いた。「こいつはたまげた!」グレインは馬の腹を蹴った。馬は早足になり、びっくりしたファラは小さな悲鳴をあげたが、やがてそれは笑い声に変わった。彼が遠くに見たものは、ファラとグレベルが話していた村だった。村は崖の縁に横たわっていたが、崖の下には何もない。ファラの上に身を乗り出すようにして、グレインはますます馬を激しく走らせ、村の真ん中に駆け込んだ。グレインが手綱を引いたのは、崖の縁から馬もろとも2人が転落しそうになる直前だった。グレインは馬を降りるとそのまま崖縁まで走り、滑り落ちないよう四つん這いになって崖の下を覗き込んだ。彼の目には、マラス全体が夜の闇の中にぽっかり浮かんでいるように見えた。「なんてことだ、こいつはまた……星の海だ! モーディン、見てみろ、星の海だ!」

グレインは誰かが肩に手をかけたのを感じて振り返ると、ファラが笑いながら立っていた。「これを海と呼ぶなら、そうね、たしかに海はあるわ」ファラはかすかに顔を赤らめ、やがてきびすを返して、こちらへ向かってくる父とモーディンのほうを見やった。

「おまえさんたちが来たことを村の連中に知らせてくる」とグレベルは言った。「ブレビノールの息子たちが来たと言っても、みんなすぐには信じないだろうな」

モーディンはゆっくりと歩み寄ると、グレインの脇に立って虚空の星々を眺めた。

「ねえ、兄さん」

「なんだ、モーディン」

「グレベルは、父さんがここでたくさんの地図を作ったって言ってたよね」

「ああ。それはオレたちのものだとも言ってたよ」

モーディンは、この数日間のこと、そして父のことを思い起こしながら、しばらくの間、虚空を見つめていた。

「兄さん?」

「ん?」

「ここを探検しよう」

暗闇のどん底で、2つの暗い心が重なり合い、ひとつの希望の和を生み出した。……地図を使おう。そこからまたすべてが始まる!








5:32 2017/06/21

by horibaka | 2017-06-07 05:30 | その他 | Comments(0)
BNNアーカイブ Part I:復活 - ゲートウォーターを抜けて

このストーリーは、「正邪の大陸(AOS)」でマラス大陸が追加されたときのお話ですね。
ちなみに八雲はAOS世代なので、はじめたときからマラスはありました(^^;;



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Part I:復活 - ゲートウォーターを抜けて

投稿日:2003年1月20日



グレイン(Greyn)が見張りを務めるマストのてっぺんからは、ブリタニアの大洋が果てしなく続いているように見えた。船の周囲では、嵐が近づくにつれてうねりが高くなっている。空は黒い雲に覆われ、まるで世界全体が使い古して毛羽立った毛布に包み込まれたようだった。彼はマストにしがみ付いた。風は次第に冷たく、船の揺れは大きくなり、波はますます機嫌を悪くしていく。甲板を見下ろすと、船首の近くに弟のモーディン(Mordin)が立っていた。彼が海図に見入るその姿は、間近の危険などまるで眼中にないといった様子だった。

「モーディン!引き返すぞ!」グレインは叫んだ。しかしモーディンは、海図を見つめたまま、黒い巻き毛を激しい潮風になびかせる以外は、身動きひとつしない。渦巻く波と風の唸りとハイウィーター号(Highwater)の船体がきしむ音に自分の声がかき消されてしまったのか、それとも弟は、また周囲の状況が見えなくなってしまっているのか、グレインには判断が付きかねた。

「モーディン!」グレインは怒鳴った。それでもモーディンは動かない。「あの馬鹿は、ドラゴンが突進してきても、ぼんやり突っ立ってるヤツだ……」グレインはぶつぶつ文句を言いながらマストを下り、甲板に立った。「モーディン、船の向きを変えるぞ、手伝え。この嵐じゃ、オレたちにはとても歯が……、モーディン?」彼は甲板を踏みつけるようにしてモーディンのところへ歩いて行くと、彼の目の前に立ち、小柄な弟の顔を見下ろした。モーディンの黒くて長い髪は風にもまれ、怒った猫の尻尾のように背中で暴れていた。それは、彼のギラギラとした鋭い眼差しによく似合っていた。

「兄さん……西へ行こう。西はまだ見てないだろ。西を確かめなくちゃ」モーディンは海図から目を離さずに言った。

「それより空を見ろ。今すぐ引き返すんだ」グレインは海図を手で押しのけた。そうしてようやく、グレインはモーディンと目を合わせることができた。「急いで逃げないと、オレたちはこの嵐の昼飯にされちまうぞ」

「でも、まだ西を見てないじゃないか、兄さん。西にいるかもしれないんだぜ」モーディンの眼差しは力強く、しかし悲しげだった。

「もう2年も探して会えないでいるんだぞ」グレインは弟の肩を掴んで言った。「無茶をすれば、会えるもんにも永遠に会えなくなる」

グレインはため息をつき、遠くを眺めた。「もう一度、ゆっくり考え直すべきときかもしれない」

「どういう意味だ」モーディンは食ってかかった。

グレインは甲板をゆっくり歩きながら言った。「1年以上もかけて探し歩いてきたんだ。オレだって、お前と同じぐらい父さんに会いたいよ。だが……モーディン、現実を見つめるんだ。父さんはもう帰ってこない。帰る気があるなら、とっくに帰ってきてるさ」

「父さんは冒険家なんだぜ。どこにいようと元気でやってるさ」モーディンは西のほうを見て言った。

グレインはがっくりと肩を落とした。同じことを何度言えばわかってくれるのだろうか。「もし、父さんと生きて再会できる運命にあるなら……」

「生きてるさ」

「再会できる運命にあるなら、いつかかならず会える。だが、今ここでハイウォーターもろともオレたちまで海に飲み込まれたら、すべてが水の泡だ」モーディンの表情は虚ろなままだった。「針路を変える。手伝え。この嵐は、しばらくここに留まりそうだからな」モーディンは未練がましく再び西の方角に目をやると、しぶしぶ兄の手伝いを始めた。

嵐から抜け出ようと黒い雲の下を何時間も航行したが、泡立つ高波はますます激しくハイウォーター号を揺さぶり、船体は気分を悪くした海の怪物のような悲鳴をあげた。風の強さが尋常ではなくなったため、兄弟は慌てて帆を畳んだ。あとは、容赦なく叩きつける波しぶきに目を開けることもままならず、2人は甲板の手すりにしがみついているのがやっとだった。

「こいつは普通じゃない!」グレインは吹き荒れる風のなかで叫んだ。

「完璧な兄さんが判断を誤るなんてな!」モーディンが怒鳴り返した。

「そうじゃない、ハイウォーターだ!この船の様子が変なんだ!」大きな波に煽られ、無理な力に抵抗して甲高い音を立てるマストに気を配りながらグレンは答えた。「船の速力が増してる!帆を畳んだのに、前より速く動いてるんだ。オレたちは流されてるんだよ!」

激しく打ち付ける雨の中でモーディンは大きく目を見開いた。「兄さん!潮の流れがこんなに速いのは、たぶんアレのせいだ」

グレンは船首のほうへ目を向けると、そのまま表情を凍らせた。驚いたグレンは、甲板の上に身を乗り出し、遠くの海面を凝視した。グレンには、そこで海が突然途切れ、海が虚空に流れ落ちているように思えた。しかし、嵐にかすむ水平線をよく見ると、それは海の中の巨大な割れ目だった。その周囲では、いくつもの潮の流れが合流している。ハイウォーターは、その割れ目に引き込まれるように、ぐんぐん速度を上げてゆく。咄嗟にグレンは、そこに待つ自分たちの運命を悟った。

グレンはきびすを返すと必死の思いでモーディンに駆け寄った。「渦巻きだ!しっかり捕まってろ!渦巻きだ!モーディン!どもでもいからしっかり捕まって、絶対に手を離すんじゃないぞ!」

船は、まさに嵐の中の砂粒のように、ものすごい速さで渦巻きに引き込まれていった。ハイウォーターは渦巻きの縁に達すると、甲板の兄弟を放り出さんばかりに、恐ろしげに回転する水面に沿って大きく右に傾いた。そのまま船は、さらに速度を上げ、風切り音を立てながら渦巻きの内壁に沿って回転を始めた。槍のように横殴りに渦巻く雨を通して、モーディンは渦巻きの口が遠ざかるのを眺めていた。船は、巨大な海の壁を下へ下へと落ちているようだ。深度を増すにつれ、周囲は次第に暗くなり、やがて船は漆黒の闇に包まれてしまった。モーディンが最後に聞いたのは、マストが粉々に砕け散る音だった。


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肌をかすめてゆく寒さ以外に何も感じなくなってから、何年もの時が経ったような気がする。光も音も、空気や温度さえも消えうせ、ただ猛烈な速度で吹き抜ける冷たい闇だけが存在しているようだ。相変わらず渦巻きの中でもみくちゃにされている状態にありながら、なぜか周囲は静かだった。自分は死んでしまったのか、あるいは何らかの方法で無意識状態の自分自身を感じているのか、モーディンには判断がつかなかった。体の感覚はなくなっていたが、混乱に襲われながらも、頭で考えることはできた。時間はどこかへ飛んでいってしまったようだ。だが、永遠の中に閉じ込められたという気もしなかった。

光が闇を貫き、モーディンの混乱を打ち砕いた。その瞬間、暗く荒れ狂う波にもまれ回転するハイウォーター号の手すりにまだしがみついている自分自身を、彼はかすかに見ることができた。船体は真っ二つに折れているようだった。へし折れたマストは、ギザギザの折れ口を壊れた甲板から突き出していた。ぐるぐると回る光の中に、一瞬、グレインの姿が浮かび上がった。だが、生きているのか死んでいるのか、そこまでは確認ができなかった。光は、闇を切り裂くように次第に強くなっていった。船は不安定に揺れながら、その光に向かって進んでいる。光る裂け目の中へハイウォーター号の残骸が流れ込むと、光はどんどん大きくなり、ついには、さっきまで彼らを包んでいた闇に代わって光が周囲に広がった。同時にモーディンの感覚は薄れていった。

光は、現れたときと同じように、突然消えうせた。そしてモーディンは、再び闇に落ちた。


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「この人は大丈夫そうだよ、ファラ(Falah)」

モーディンは手足に体温が戻ってくるのを感じとった。そして、閉じた瞼の外側で光と影が動いている様子を感じることができた。顔と髪の毛には砂粒の感触。ローブはぐっしょり塗れている。彼の目に再び周囲の様子が映し出されてゆくと、そこには彼に覆いかぶさるようにして立ってる大男の姿があった。彼は微笑んでいた。少し離れた場所では、若く美しい女性に支えられてグレインが立ち上がろうとしていた。

「ここは……いったい?」モーディンは立ち上がろうとしたが、足に力が入らずよろけてしまった。すかさず大男が彼の肩を掴み、転ばないように立たせてくれた。

「慌てなさんな。まあ、落ち着いて」男は低い声で言った。「あそこを通ってきて、五体満足でいられるだけでも感謝しなくちゃな。このゲートウォーター湖(Gatewater Lake)の岸にゃ、生存者と同じぐらいの数の死体があがる」

グレインは、若い女性に支えられながら倒れ込むようにしてモーディンに駆け寄ると、彼の頭を両手で掴んで言った。「無事だったか、モーディン?」

「ああ……うん。そうみたいだ」モーディンは呆然と答えた。しかし、兄を見つめる彼の顔からは、かすかに笑みがこぼれた。モーディンは、自分を助けてくれた男のほうを振り返った。「ここはどこですか?トリンシックからは遠いのですか?」そこは、彼らのほかには見渡すかぎり水と砂の土地だった。

男は気まずそうに若い女性のほうを見ると、モーディンに向き直って答えた。「ああ、気の毒だが、トリンシックはずっと向こうだ。オレはグレベル・ブランズマン(Grevel Brandsman)。そしてこれは、娘のファラだ」彼は女性を指し示した。

彼女は兄弟に微笑み、小さな声で言った。「ようこそ、マラス(Malas)へ」







5:11 2017/06/20

by horibaka | 2017-06-05 05:09 | その他 | Comments(0)
BNNアーカイブ ダーク・ファセット

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ダーク・ファセット

投稿日:2002年12月23日





オリジナルのブリタニアには、不死の宝珠(Gem Of Immortality)の破片、すなわち“シャード”があり、ウルティマ オンラインの世界はこの中に存在しています。ここに紹介するのは、シャード研究の第一人者であるひとりの魔法学者の評論です……

クレイニン(Clainin)著、不死の宝珠の残骸に関する記録『シャードの観測』より抜粋。
若輩魔法使いだったころの私は、その昔に異世界の来訪者が破壊した不死の宝珠の力について、思いを馳せたものだ。モンデイン(Mondain)は恐ろしい悪魔だった。彼は完全な形をしていた不死の宝珠の力を操り、全ソーサリアを手中に収め、たった一人ですべてを支配した。これをもし、善良にして高徳な人物が手にしていたなら、同様に強大な力を発揮して世界の悪を抹殺できただろうか? 私は、宝珠が人の役に立ち、ブリタニアに悪が芽生えれば、片端から根絶されるという夢の世界に憧れを抱いていた。そのため、宝珠が破壊されてしまったことを悔やみ、別の方法でモンデインを倒し、宝珠を無事に奪い返す手立てはなかったものかと考えた。しかし、シャード研究を重ねるにつれて、かつて私を魅了したユートピアの空想は、無知な若者の青臭い夢物語に過ぎなかったと思い知るようになった。宝珠の中に、どす黒い怨念が封じ込められているという推測を裏付けるに足る証拠が出揃ってしまったからだ。

過去の評論でも解説したように、不死の宝珠は、破壊されると同時に私たちの宇宙と深い繋がりを持つようになった。その結果、それぞれの破片の中にソーサリアの複製が生じたのである。前回の評論では、そのすべての複製世界に私たちの複製が暮らしていて、それぞれ異なる人生を歩んでいる可能性があると私は述べた(私はときどき、私自身の複製もそれらの世界に存在するのか、また彼らはどんな人生を送っているのかを無性に知りたくなることがある)。複製ソーサリアは、私たちの目には宝珠の破片の中に浮かぶ小さな天体としか映らないため、その世界の詳細な様子を見ることは難しい。しかし、いろいろなことがわかってきた。シャードは、もともとの不死の宝珠の形をとどめてはいない。同様に、その中の複製世界も、元の世界とまったく同じではないのだ。各シャードのそれぞれの結晶面“ファセット”には、それぞれ異なる世界が存在する。比較的大きく、均一な形をしたファセットでは、私たちが住む元ブリタニアと比べると地形の一部にわずかな差異はあるものの、ほぼ正確な複製の世界を見ることができる。それに対して、小さく歪な形をしたファセットには、このブリタニアとは似ても似つかぬ世界が存在している。その住人たちの文明も、私たちが知るどの文明とも大きくかけ離れたものに違いない。通常はどのシャードにも、山脈に囲まれ白く浮き出た大都市を中央に構える大陸を有する、際立ったファセットと、南部に湿地帯、北部に砂漠という古代の地勢を残す原始大陸のファセットがひとつずつある。これはあくまで私の仮説だが、不完全な、ときとして鋭い角を持つファセットの形が、元はブリタニアの複製であったものを奇妙な別世界に変形させてしまったのではないだろうか。世界を収納している容器の形が変われば、空間、時間、魔法といったあらゆる要素も、新しい形の世界に適合するよう変化するはずだ。さらに、それぞれのファセットで、過去、現在、未来が新しい形と辻褄を合わせるように劇的に変化してしまっていることは十分に考えられる。つまり、時系列の遡及訂正だ。こうした世界の遠い昔や遠い未来に、いかなる奇怪な新文明が築かれたかと問われても、私たちの想像が及ぶところではない。

シャードの住民は、ファセット間を移動できるようだ。シャード内のひとつのファセットから別のファセットへの物理的な旅行はどう見ても不可能だが、魔法か、あるいはムーンゲートを使えば可能性はある。前にも述べたとおり、シャードの外から眺めることしかできない私たちには、正確なところはわからない。しかし、一部のファセットには、人類または高度な知的文明の流入によってのみ起こり得る変化が明白に現れているのだ。それまで明らかに無人だったあるファセットでは、城のような建造物が突然に出現した。また別のファセットでは道路が延びてゆき、森が切り開かれる様子を目撃している。そこに私は疑問を抱き続けてきた。これらのファセットは、なぜこれほど長い間完全に無人のまま放置されていたのか、それがなぜ今になって突然人の手が入るようになったのかと。そして今、私はひとつのヒントを手に入れた。それは、パズルの新しい局面を開く新しいピースだと私は信じている。

すべてのシャードには、ひとつだけ他とは明らかに異なるファセットが含まれている。私はそれを暗黒の結晶面、すなわち“ダーク・ファセット”と呼んでいる。ダーク・ファセットは、そこだけ光を吸収しているかのように、全体が闇に包まれている。そこにも世界が閉じ込められているのだが、それは私が夢想だにしていなかった世界だった。大陸は、全方位に広がる巨大な虚空の中央に位置している。まるで、暗い星の海の中に浮かぶ大きな島といった感じだ。自然の法則をどれほどまでに捻じ曲げれば、このような世界が存在可能になるのか、私には見当もつかない。世界全体が大きな魔法によって保持されているのだろうか。この謎は、残りの生涯をかけて考えても解明されることはないだろう。それどころか、知れば知るほど深まるばかりだ。

私は幾度となく、ダーク・ファセットで起こった天変地異を目撃してきた。少しずつ大陸が崩壊してゆくのだ。まるで巨大地震によって大地が切り崩され、その破片が次々と暗い奈落に落ちてゆくように見える。ダーク・ファセットでは、そうした大災害の度ごとに、そこに暮らす生命も一緒に消滅したかのように見える。それまで続いてきた人類社会の発達の印は途絶え、都市も闇の中へ消え去ってしまうからだ。しかし、あらゆる生命の痕跡が失われたと思いきや、やがてまたダーク・ファセットにどうした理屈からか文明が蘇る。そして、崩壊のプロセスが新たに繰り返されるのだ。これを踏まえて今、私の過去の記録を読み返してみると、ダーク・ファセットの世界が崩壊した直後に、同じシャードの別のファセットに人口の増加が認められる。このことから、ダーク・ファセットの大災害は、そこと繋がりを持つ他のファセットとの間に何らかの関連性があると結論せざるを得ない。障壁のようなものが崩れ始めているのだろうか。さらに私は、あのダーク・ファセットを包んでいる巨大な影が、モンデインの悪意を反映したものではないかと思えてならない。それは、ダーク・ファセットの中の世界と同様に、醜く捻じ曲がった怨念だ。

以上の謎は、シャードの中の世界に入り実際に探索しない限り、永遠に解くことはできないだろう。少し前までは、その奇怪な現実世界をぜひこの目で見てみたいと願っていたのだが、今は、その世界の住人に対する恐怖心が先に立つ。そこには、私たちの想像を絶する恐ろしい魔物が潜んでいるように思えてならないからだ。








5:13 2017/06/19

by horibaka | 2017-06-04 05:11 | その他 | Comments(0)
BNNアーカイブ Sakura

このストーリーは、桜シャードが誕生したときのお話ですね。
悲しくて切ないお話ですが。。。
いまでも桜シャードにだけ、その場所には1本の桜の木があります。



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Sakura

投稿日:2002年10月21日


全シャード
サクラ(Sakura)はブナの林に奇妙な光る物を見つけた。激しい胸騒ぎがした。それが奇妙な物体ではなく、良く知っている物だったからだ。

「ムーンゲート・・・」ムーンゲートがここにある事の意味は、彼女には明らかだった。

「ママ?」

「ごめんなさい、ママちょっと用事があるの。先にパパの所に行っててくれる?」

「うん!ママも早くね!」笑顔で応え、見送ったサクラの顔は蒼白だった。サクラはムーンゲートに近づき、その向うへと一歩踏み出した。





「やあ・・・」男はばつが悪そうに声をかけた。

「本当にすまないと思っている。君は今はもう家族を持っている身だし、十分ソーサリアに身を捧げてきた。それに・・・」表情を変えず、自分を見つめるサクラを見て、大きくため息をついた。

「君に言い訳をしても仕方がない事だったな。これを見て欲しい」男はバッグから水晶を取り出した。

「これは・・・」それは水晶の破片だった。3つの破片が癒着しかけており、その間にもう一つの水晶ができあがりつつある様だった。

「そうだ。破片だ。3つの破片がお互いに結合しかけている。しかも信じられない事だが、その間にもう一つ破片が形成されかけている」

「あり得ないわ。砕いた時にその力も粉砕されたはず。自ら再生する事なんて・・・」

「私もそう思う。だが、破片は結合され、生成されようとしている。どうにか阻止しなければならない。最低でも結合だけは防がなければ」

サクラの顔は人形の様に白く、青ざめていた。破片に落としていた視線を男に戻した。男も顔色を失い、表情も窺う事ができなかった。二人の視線が合った時、男は言った。

「行ってもらえるか?」サクラも驚いた様子はなかった。

男の顔はいよいよ蒼白になっていた。視線は4つの水晶へと向けられていた。





「入りたまえ!」男は元気良く階下の声に応えた。

「失礼します市長。ちょっとご報告申し上げたい事が・・・」

「なんなりと言いたまえ。祈願碑兼醸造所の出来がすばらしく、私はもういつでも上機嫌だよ!ただ、建設地の地割れだけが少々心配の種ではあるが」

「そう、その地割れの事なのです、フィニガン(Finnigan)市長。突然地割れが消えてしまいました」フィニガンは立ち上がり言った。

「ほう!割れた地面が閉じるとは尋常ではありませんな!一体なにがあったのですか?」

男は頭を掻いて言った。

「それが・・・よく分からないのです。現場を視察に行くと、地割れが影も形もなくなっており、そこに桜の木が一本生えていました」フィニガンは男に背を向けた。

「奇妙。奇妙ですねそれは。何か見えざる力が働いたかの様な、何とも言えない奇怪さを感じますね」

男は本に書き留める準備をしながら尋ねた。

「調査団を編成なさいますか?」背を向けたままフィニガンは言った。

「そうですね・・・調査官を一人と助手を一人」

「・・・調査官と助手一人、ですか?」

「はい。二人で結構です。どうも私にはもはや何も手がかりが得られない様な、すばらしくも悲しい様な予感がするのです」

少し間をおいて、男が応えた。

「かしこまりました。すぐに手配いたします。あ、それともう一つ、スカラ・ブレイのクリフォード(Clifford)代表が行方不明との事です」

「卓越したレンジャーが行方不明とは。奇妙な事は続くものですね。必要であればいつでも捜査に協力するとスカラ・ブレイに連絡しておいて下さい」





男は岩に座っていた。いつから座っていたか、彼自身すぐには思い出せなかった。日が昇るのを7度までは数えていたが、その後はよく分からなくなっていた。不意に男は顔を上げた。遠くから羊の鳴き声が聞こえた。牧童が羊を追いながら、彼の前にさしかかった。

「旦那、随分深刻そうな顔をしてなさるが、追い剥ぎにでも会いなすったか?」男はぼんやりと牧童を見つめていたが、思い出した様に口を開いた。

「人を待っているんです」再び口を開くのに随分時間がかかった。

「どうしても会って、連れ帰らなければならないんです」

「はあ、待ち人ですか。もう随分経ちますか」男はまた応えるのに時間を要した。男の答えを聞いて牧童は鼻白み、男の膝に手を置いて話した。

「旦那、そのお方にはきっと事情がありなすったんだと思いますよ。一度お帰りなさい。旦那がどうにかなっちまう。なに、その方ともまたすぐ会えますよ」

ぽんと男の膝を叩き、酒を渡して牧童は歩いていった。牧童と羊の群れが道の向うに遠ざかり、小さくなって遂には消えても、男は動こうとしなかった。男はバッグの口を開いた。そこには4つの水晶の破片があった。4つともばらばらに、バッグの中に転がっていた。随分長い間、男は水晶を見つめていた。男は口を開いた。

「破片は守られた。彼の地に同じ名を持つ木を植えて、水晶にも名を残し、再び会う時まで君の記憶を残そう」

その直後男の姿は消えていた。水晶は後に発見されている。その水晶は誰ともなく名付けられ、今ではSakuraと呼ばれている。









7:34 2017/06/18

by horibaka | 2017-06-02 07:43 | その他 | Comments(0)