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ワールドニュース [戻る] 真実と大逆 投稿日:2007年1月20日 Leurocian Malnagrane, High Archmage and Traveling Bard “力無くして生きることはできぬ。違うか?” 彼を嘲る声が地下から聞こえてくるたびに、ゴーラン・ザーロフ(Goran Zarlov)は口元を歪ませた。その声にも、だいぶ慣れた。ここ数カ月というもの、その声はゴーランを嘲り、導き、そしほどなくして、ゴーランは究極の真理と多元的宇宙についての知識を理解し、人知を超えたもって苦しめてきた。 とも暗い力でさえも、彼の意志で操ることができるようになっていた。彼の前に立ちはだかるのは、たったひとつの扉だけだった……。 ゴーランはブラックロックの塊をバックパックから取り出すと、神秘の力を引き出すべく古の呪文を詠唱しはじめた。荒れ狂う風の中で、呪文が滝のように舞う。突然、足元から膨大なエネルギーが湧き起こり、ブリタニア金庫室のドアを吹き飛ばした。 古代魔法によるエネルギーがパチパチと音をたてていたが、やがてふっと消えた。開いた扉の先にある部屋に入るとき、ゴーランは自らが成し遂げたことに狂喜せずにはいられなかった。 ブリタニア金庫室から数階上では、ガードや訪問者たちが大きな揺れを感じていた。バランスを崩して転倒する者もいた。家具は倒れ、城に住む者たちは大混乱に陥った。 「武器を持て! 武器を持つんだ! 何者かが神聖なる金庫に侵入したぞ!」 ロイヤルガードのキャプテンであるサー・ジョフリー(Sir Geoffrey the Captain of the Royal Guard) は周囲のガードたちに号令し、急いで階段を降りた。高位の宮廷魔術師たちは、魔法防御が破られたこと、隠された階段が暴かれたこと、そして彼らのうちの誰かが裏切ったことを悟った。 捜し求めていたものをゴーランが頭上に掲げると、例の声が彼の頭の中で大きく鳴り響いた。 “その本、真実の本を、デスパイスまで持ってこい。そうすれば褒美を授けよう” その直後、ガードたちは侵入者と対峙せんと部屋へ入ったが、ゴーランが唱えたリコールの呪文の響きだけが、空っぽの部屋にこだましていた。 「真実の本だ」 ジョフリーは絶望に打ちひしがれ、動くこともできずに言った。 「盗まれてしまった」 ゴーランはデスパイスの入り口に自らを実体化させると、周囲を見回し、頭の中の声に耳を傾けた。不明瞭な声と太古の昔に失われた言葉が、何度も何度も謳うように鳴り響いていた。それらの声がゴーランを跪かせると、彼は悲鳴を上げた。 白昼夢のようだった。抗うことを許さない、威圧的で陰のようなものたちがデスパイスの入り口に浮かんでいた。それらは暗黒の言葉によって、ゴーランの精神を蝕み続けた。 “本をよこせ……いますぐに!” その恐ろしい陰が命令を発した。ゴーランは本とブラックロックをきつく握り締めながら、のろのろと陰に近づいた。 ゴーランがダンジョンの入り口に差し掛かったとき、ロイヤルガードたちがゲートを通って現れた。ロイヤルガードの上級魔術師たちは、破壊の呪文を詠唱し始めた。恐るべき数々の魔力のボルトが空気を切り裂き、目標へと一気に放たれた。いくつものエナジーボルトが、ゴーランの持つブラックロックと、本から発せられた力によってかき消された。 突然地中からものすごい力が湧き起こってゴーランの体が粉々に砕け散ると、彼の苦悶の叫びがぷっつりと途切れた。真実の本は彼の手から滑り落ち、地面に触れる前に……消えてしまった。 「すぐにライキュームに知らせねば」 上級宮廷魔術師のゾーラ(Zorla)が言った。 「ライキュームなら何が起こったかわかるに違いない」 21:25 2017/09/01
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by horibaka
| 2017-08-15 21:20
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