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BNNアーカイブ 老婆イヌ 第二章 【2/2】


「それにタウンクライヤーの話だと、その本はイヌお婆様と話した直後に見つかったそうじゃない。覚えてる?」

ケンは振り向こうともしないで言った。

「そうだね」

彼がそんな素っ気無い返事をするとは思っていなかったので、彼女は急に居心地の悪い気分になった。しかしハーモニーは既に歩いて銀行の中に入っていたので、マヤは部屋に戻るまでは何も話さないようにしようと決めた。

結局、マヤがケンと2人きりで話す機会は訪れなかった。その夜はハーモニーと本をくまなく読み、彼女からこれまで聞いたことのなかった古代の戦いについての歴史を教わった。それによると、かつて世界の大半がひとりの男によって征服されそうになったが、別の男がなんとかそれを食い止めたという。それは、以前父親から聞いた話を思い出させて、彼女の心に深く刻まれることになった。

ひとしきり話が済んだ後、新しい情報提供者がいないか確認したいからと言って、ケンはひとりでキャッツ・レイヤーに出かけた。マヤはベッドに横になって先ほどの話について考え、父親が話してくれた昔話の詳細を思い出そうとしたが、すぐに眠ってしまった。

翌日も手掛かりのない日が過ぎて、ケンはさらに鬱屈し、マヤも同じように不機嫌になっていた。ハーモニーは、ふたりが陰気であることなどお構いなしに明るく、ひとりで秘薬を買いに出かけることにした。そのため、ケンとマヤはふたりで情報収集をすることになった。

「なにが不満なの?」

ケンがその日に使う予定のゴールドが入った小袋を彼女に投げた。マヤはそれを掴んだが、彼の投げ方は思っていたよりも乱暴だった。

「不満って?」
「そうよ! あなたの不満のことよ! もう何日もそんな状態じゃない!」

ケンはマヤのほうに一歩踏み出して、平静な声で言った。

「何日も、だって? 理由は明白だ。そうだろ?」
「どんな理由よ?」

彼女には分からなかった。

「これさ!」

彼は、部屋を見回しながら手を振って声を荒げた。

「どうしてこんなことをしてるんだ!?」
「イヌお婆様を探すためよ! 忘れたの? 手伝ってくれるっていったじゃない!」
「マヤ、何のためにだい?」

彼女は彼を見上げ、驚くと同時に少し腹を立てた。

「何が言いたいのよ!」

マヤは思わず大声を出したが、ケンも怯まない。

「イヌ婆はもう見つかった。彼女は元気だ」

ケンはマヤが何か言うのを待ったが、彼女は目に涙を溜めていた。

「マヤ、君のせいじゃない。イヌ婆は放っておいてもらいたいんだよ」

マヤはケンに背を向けて、腕を組んだ。

「わかってるわよ!」
「だったら、どうしてここにいるんだい?」

ケンは尋ねようとしたが、マヤが振り返って彼の両肩を掴んだ。

「じゃあ、あなたがまだここにいるのは、どういうことなのよ!」

ふたりはそのまま睨み合った。一週間ぶんの鬱屈した感情が堰を切って流れ出したが、ケンには答えが見つからなかった。マヤは彼の肩から手を放し、一歩後ろにさがった。怒ったあと別のことで頭が一杯だったので、マヤは傍らで空気の舞うかすかな物音に気付かなかった。

「すまなかった……」

彼は何か言おうとした。

「どうしたの、マヤ?」

ハーモニーはそう言って、2人の方に屈んで彼女をじっとみた。マヤは悲鳴をあげ、ケンが後ずさりした。

「ここ、私のリコール地点なのよ。お気の毒さま」

彼女は笑った。





その夜は全員がキャッツ・レイヤーで過ごしたが、今回は特別な目的があった。ハーモニーが突然部屋に戻ったのは、エルストンがその夜、彼らに酒場に来るよう頼んだからだった。彼がある傭兵グループと接触したところ、彼らがイヌの情報を持っていて、その情報を売りたがっているとのことだった。

いつもの隅のテーブルに座って周囲の客の会話に耳を傾けていたが、誰も彼らに話しかけてこないので、ハーモニーはマヤにサイコロとカップの "ハイ&ロー" の遊び方を教えていた。

「そうすると、もしサイコロの目が7で、私がハイを選んでいたら私の負けなの?」
「そうよ」

そう答えると、ハーモニーはサイコロをマヤに手渡した。

「じゃあ、今度はどう? ハイか、ローか7か?」
「そうね、ロー!」

マヤがカップを振ると、サイコロは飛び出してテーブルを転がっていった。先に飛び出したサイコロはマグに当たって跳ね返り、テーブルの端で止まった。もうひとつは、テーブルから落ちて床の上を転がり、客のブーツのつま先の上に乗った。
ブーツを履いた長身の男性客はバーとテーブルの間に立ち、マグを片手に彼の知人たちが座っている隣のテーブルに移動し始めた。ハーモニーが叫んだ。

「動かないで!」

酒場の半数の目が咄嗟に赤毛の少女に注がれたが、彼女はその男のほうに駆け寄ると足元にうずくまり、出た目が変わってしまわないようにブーツのつま先からサイコロをつまみ上げた。

「2よ!」

彼女はケンのほうを見た。恥ずかしさでケンはうつむいたが、会話が途切れた周囲の静寂さに比べると少々大きすぎる声で答えた。

「3だ!」

ハーモニーはサイコロを手に乗せてマヤの方に走り、彼女の手を握って言った。

「あなたの勝ちよ!」

ケンが先ほどの男性に目をやっている間、マヤとハーモニーは勝利を祝っていた。その男は肩越しにバーを振り返り、エルストンのいる方向を向いて頷いた。エルストンは頷き返した。そして突然、その男は彼ら3人の方に向かってきた。

「失礼ながら……」

彼は、手に持ったマグをテーブルに置きながら話した。

「ある老女に関する情報を探していると聞きましたが?」

ゴールドの小さな袋と交換に、彼らは最近イヌの噂を聞かない理由を知った。マヤはその傭兵に丁寧にお礼を述べ、彼らが立ち去ると同時に宿へと急いで帰り始めた。

「マヤ! 待てよ!」

ケンが叫び、足早に歩いて彼女に追いついた。

「だって、わかるわけがなかったんだし!」

ハーモニーも加わって言った。マヤは立ち止まらずに、大声で言った。

「家にいるですって! 砂漠の家に戻って、今までずっとそこにいたなんて!」
「いや、そういうわけでもないんだ!」

ケンがそう言って、ハーモニーと一緒にマヤの隣にならんだ。マヤは少し歩調を緩め、冷静さを取り戻していった。

「そうね、今までずっとじゃないわ。でも、ほとんどそうだったのよ!」
「でも、少なくともいまはルナにいることがわかっているわ」

そう言って、ハーモニーはマヤを慰めようとした。マヤは、まっすぐ前を向いたまま答えた。

「ええ。明日の朝すぐに、そこに向かうわよ」





「巨大ね」

マヤはそう言うと、頑丈な砂岩の壁の先端を見上げた。彼らは、都市の城壁と中心の大きな建物の間にある中庭のような場所にいた。ブリテインと同様にそこかしこに人がいるが、大部分の人の流れはその建物のほうに向かっていた。
彼らが玄関口を歩いているとき、マヤはその建築物について訪ねた。

「本当のことは、誰にもよくわからないの」

ハーモニーが答えた。

「ムーンゲートがマラスに繋がるようになったときから、ルナはいまの状態だったから」

ケンが追いついてきた。

「ということは、この建物は最初からここにあったということかい?」

ハーモニーは頷いた。

「これも、城壁も、いくつかの廃墟も、アンブラも……」

建物の中心部に来たので、次第に話し声が聞き取りにくくなっていた。

ケンとマヤを連れて、ハーモニーは建物の中央廊下の側面や回廊の周囲を案内した。イヌの姿が見当たらないのでマヤがハーモニーに向かって叫びそうになったとき、突然群衆が静かになった。建物の中心部から群集に向かって叫んでいる声が聞こえたが、その声は男性のものだった。さらに喧騒が収まると、その男の話す内容が聞き取れるようになった。

「我が善良なる朋友たちよ!」

その男は群集に熱く語っていた。

「ご清聴を。お知らせしたいことがあるのです!」

誰かが何か言う前に、彼は続けた。

「皆さまもご存知のイヌという人物について調査をするため、わたくしバーナード・デゥ・ルーは、この女性の予言の信憑性を確証すべく、調査隊を結成しようとしております」

彼は息を吸い込むと、熱烈な調子で続けた。群集も止めようとはせず、低いつぶやきがそこかしこで広がっていた。

「皆さまもご承知のとおり、この不可解な女性は、誰にも理解できないおかしなことを口走っております。しかしです!」

そう言って、彼は隣に立っている若者の方を向いた。

「しかしながら、ここにいるヴィンセントは、彼女のメッセージを解読したと言うのです。ヴィンセント! さあ!」

ヴィンセントは一歩前に出ると、乱れた髪の毛に手を走らせた。しばらく彼は聴衆と目を合わせるのを避けているように見えたが、やがてまっすぐに前を向いて彼らの目をしっかり見据えた。

「まず最初に、私はこうした予言の類を信じるものでないことをご承知ください」

バーナードは深く頷いた。聴衆のうち数名が声援をあげて、彼を支持した。

「それを前提としまして、彼女は姿を消すまえに、はっきりと次のように話しました。『ちをたどるおんよおなおそれ』」
「ワケがわからないぞ!」

前列の男が叫んだ。

「そう、そこなのです。我々が問題にしているのもそれなのです」
「もったいぶるな!」

別の誰かが叫んだ。

「ええ、彼女の頭が混乱しているというのはわかっていて……彼女の何かが上手く働いていないわけですが、そこで私は彼女が口にした単語を書き付けて、それらをよくよく考え、何か意味のある事柄を導き出そうとしました」

バーナードは彼の背中を叩いた。

「そして、彼はほんとうにそれを導き出したのです!」

ヴィンセントは俯いてクスリと笑い、思わずにやけそうになるのを隠した。

「そうです。少なくとも我々はそう考えています。そこに書かれた単語を見ているとき、私は最近のニュースに載っていた言葉のパズルに関する記事を思い出しました。覚えていらっしゃる方はいるでしょうか、このイヌという女性もその記事に含まれていたことを?」

聴衆の中にまばらに肯定する声が聞こえたので、彼は微笑んで話を続けた。

「そうした手掛かりに導かれて、私はそのメッセージのなかのいくつかの文字を並べ直してみました。そして、遂に、驚くべき結論に達したのです!」

先ほど叫んだ男性が、今回も声を上げた。

「それで、何だったんだ?」

ヴィンセントはその男性を凝視し、一呼吸置いてから、ようやく返答した。

「おどるおんなたちをおそれよ!」

ヴィンセントの顔が興奮で輝いたが、聴衆はひどく静まり返ったので、彼は次に何を言われるかと思って気が沈んでいった。

「ファンダンサー道場ね!」

マヤが唐突に叫んだ。聴衆の一部がこのひどく滑稽な「啓示」を笑おうとしていた矢先に、彼女はヴィンセントの説明に没入し、衝動的にそう言ったのだった。バーナードはとても喜んでいた。

「ええ、そうなのです、お嬢さん!」

彼はおもむろに聴衆の中に分け入り、彼女の腕を掴んで台の上に引っ張り上げると、マヤの周りをせわしなく歩き回った。

「ご覧のとおり、皆さまのうちの少なくともお一人が理解されました。やはり、この謎には何かがあるのです!」

ケンとハーモニーも聴衆を押しのけて、マヤの方に行こうとした。バーナードはふたりが進んできた意味を誤解した。

「おぉ! 誇り高き冒険者が、もうお2人! これで5名となりました。他にも加わる方はおりませんか?」

ケンは反論しようとしたが、マヤが首を振った。ハーモニーはそんな状況をまったく意に介していないらしく、彼らがバーナードの側に立っている間、暇そうにナップサックをごそごそやっていた。まさに、バーナードの熱意とカリスマが功を奏して、道場の探検に興味をもつ十数名がさらにグループに加わった。

聴衆が散会した後、バーナードは全員を建物の2階へ案内した。そして大理石のベンチに腰掛けると、彼らは互いに自己紹介した。バーナードが攻撃プランを説明している最中に、マヤが発言した。

「すみません、イヌお婆様がどこに行ったかご存知ではありませんか?」

彼は中断されたことを気に留めていないらしく、彼女の方に向き直った。

「大変残念ですが、お嬢さん、心当たりがありません。我々が彼女の最後の言葉を辿るのは、そのためなのです!」

ヴィンセントも横から言葉を挟んだ。

「このイヌという人物については、どこを探すべきか皆目見当が付きません。先ほどお話したとおり、目の前に残された手掛かりを辿りたいと思っているのです」

彼女が礼を述べるとバーナードは計画の説明を再開し、その間マヤもケンとハーモニーと一緒に話し合った。そして、他に手掛かりがない以上、彼らについて行き何が起こるのか見届けるのが最善だということで同意した。彼らがその結論に達すると同時に、バーナードが全員に声をかけた。

「それでは、参りましょうか?」





森のはずれに開いたゲートからグループのメンバーが次々と姿を現し、道場の前にある砂の中庭に立った。マヤはこれまで見たことがなかったのだが、それは彼女の両親が寝る前に話してくれた怖い話で出てくるものと寸分違わぬものだった。

「マヤ、こっち!」

ケンが叫んで彼女の腕を掴み、パーティーの中央へ押し込んだ。すでに彼らは、少なくとも十数人のファンダンサーに囲まれていて、道場の入り口からさらに多くが滑り出してきていた。視界の隅に革鎧をまとった戦士が出たり消えたりした。間違いなく敵の円陣は狭くなってきている。
マヤは他の人たちをちらりと振り返ったが、彼らの冷静さが場違いに思えた。ハーモニーまでが、呪文書のページを静かに繰っていて、まるでそれが日常茶飯事でもあるかのようだった。

「そういうものかもしれないわね」

マヤは苦々しく思った。ケンが彼女の側まで来て剣を抜き、身構えた。

「もし何かあったら、ゲートに飛び込めばいい」

とケンが言った。

「そうね……」

彼女が脇差を抜いたとき、ハーモニーが突然言った。

「心配しなくていいわよ。テイマーが数人いるし。それに、少なくとも半分は魔術師だからね」

ハーモニーは微笑むと、先ほどから選ぼうとしていた呪文のページに指を置いた。

「これがいいわ」

彼女はそう言うと、ナップサックに手を突っ込んでごそごそと秘薬を探し始めた。マヤとケンはお互い頷きあって、ハーモニーを見ていた。ファンダンサーと忍者はいまも彼らを取り巻いていて、森と道場の間に蟹爪型の陣形を作りつつあった。
数人の魔術師が召喚呪文を唱え始めると、柔らかな物音が空気を満たした。ハーモニーはまだじっとしていたが、呪文を唱え始めたときには、深く集中しているように見えた。

「In……」

マヤは剣先を前に向け、目の前の砂に視線を置きながら、彼女たちに近づこうとするかもしれない隠れた敵を見落とすまいとしていた。

「Jux……」

ケンは2人のファンダンサーを注視していた。それは森の端を行き来していたが、彼ら3人のグループに照準を合わせているように思えたからである。

「Hur……」

ハーモニーはもう目を閉じていた。柔らかな光が呪文書から湧き出て、彼女の両腕を上昇していた。

「Ylem!」

ハーモニーを包んでいた光が突然凝縮し、彼らの目の前を過ぎて、道場の前庭へと走り抜けた。その光は瞬きながら形を成し、奇妙な金属の物体に変わった。太陽の光を反射しながら、それはゆっくりと回転しはじめ、だんだんと速度を増していった。

「あれは何?」

マヤがハーモニーに尋ねた。彼女はまた呪文書をめくっていた。

「ブレードスピリット」

彼女は、顔も上げずに、素っ気無く言った。
マヤはその奇妙な物体をじっと眺めた。それはさらに回転速度を上げていて、鋭い不自然な音を立て始めたかと思うと、鋭利な金属の刃が中央から広がっていった。
彼女には信じられないことに、それは魂を持たない剣士のようにファンダンサーたちの注視のなか、群れの方へと進んでいった。刃の裂く音が聞こえ、瞬く間にその魔法の物体は、少なくとも3人を倒して道を開いた。彼女がようやく目をハーモニーに戻すと、彼女はちょうど次の呪文を探し終えたところだった。

「見事だね、第5サークルか!」

別の魔術師がハーモニーに向かって叫んだ。

「我々も協力しよう!」

その言葉とともに、地面が半ダースの紫のエネルギーの塊でうまった。それはブレードスピリットと同じように回転を早め、目標に向かっていった。目に見えない魔法のエネルギーが獲物目掛けて飛び出していった。ハーモニーは動きを止め、瞬きすると、顔を上げた。

「ああ、エナジーボルテックス!」

マヤはすばやく尋ねた。

「どれがそうなの?」
「もう勝負はついたみたいね」

ハーモニーはそう言って、拍子抜けしたように呪文書をナップサックに戻した。

予想どおりだった。数分の間にさらに多くのエナジーボルテックスと召喚されたペットによって、一帯は制圧されていた。このような生々しい力を見たことがないマヤとケンには、信じられない光景だった。
数人の魔術師がポーションを飲んだり、お互いに簡単な強化魔法を掛け合ったりしていた。テイマーたちは、ペットをそばに待機させていた。マヤは巨大な竜が彼女と目を合わせるたびに、震えを抑えられなかった。
バーナードは道場の入り口の階段に立って、身振りで全員に話を聞くように促した。

「我々のひとりひとりが眼を光らせて、少しでも異常なものがないか注意するようにいたしましょう」
「ファンダンサーたちが隠したがっている何かが、ここにあります。我々はそれを見つけ出さねばなりません!」

グループに歓声が起こったが、マヤとケンは黙っていた。この僅かな数のブリタニア人がこれほどの力を持つことを知るにつけ、自分たちがどれほど無知で無防備であるかを心の奥底で考えざるを得なかったからである。マヤは、侍や忍者の一団が島の奥地で生涯をかけて鍛錬し、このようなことができるようになるという伝説を聞いたことはあったが、実際に誰かがやっているのを見ることになろうとは予想もしなかったからである。
バーナードが身を屈めて入り口を通ると、すぐに彼ら全員も道場の地下道の奥深くに入っていた。彼らが迷路のような通路を深く進んでいく間、ハーモニーはしばしば呪文を唱え、そのあとで呪文の名前や効果をマヤに説明しながら、怖がる素振りもなくマヤに話しかけていた。

曲がりくねった通路を進むうちに、数時間が過ぎていた。この寄せ集めの探検隊が、マヤの故郷では間断なき脅威と考えられているものに対して、これほど効率よく対処していることに彼女は驚かざるを得なかった。彼らがこの場所を破壊して全てを終わらせてくれればいいのにと思いそうになったが、このパーティーのメンバーはヒーローというよりハンターに近く、そんなことは彼らの胸に浮かばないのだろうとも感じた。

ある場所で、彼らは召喚デーモンの待ち伏せに会った。はじめのうちは誰も気にしなかったが、彼らが召喚デーモンの一匹に相当なダメージを与えたとき、それが突然テイマーのメアたちを襲った。
他のデーモンが無数の呪文で手も足も出せないでいるときに、そのモンスターは一匹のメアを八つ裂きにして、彼らの目の前で食ってしまった。彼らをぞっとさせたのは、そのデーモンが唸り声をあげて立ち上がり、新たに力を取り戻して彼らの目の前に立ちはだかったときのこと。その体には、傷跡ひとつ残っていなかったからである。

しかし一人の魔術師が命がけで走り出て、後ほどハーモニーから聞いたところのマスディスペルという呪文を唱えたことで、一気にカタが付くことになった。そのデーモンの形相は苦痛で歪み、彼とその仲間たちは魔法の光になかに吸い込まれていった。

そこまでは彼らも幸運だったので、マヤもほぼ安心して、グループに訪れた変化を眺めながらダンジョンの深みへと進んでいった。バーナードの顔から微笑みが消え、テイマーが連れている動物の炎で目の前の道を照らしながら進んでいった。ハーモニーはグレーター・ヒールの魔法の巻物を何本か取り出して、ベルトに差し込み、すぐに使えるようにしていた。ケンとマヤも武器を手に持って準備をしていたが、ときおり瀕死のモンスターに対処することを除けば、ただ他の人たちの後を付いていくだけだった。

「休憩にいたしましょうか?」

彼らが行き止まりにぶつかり、その部屋の居住者たちをなんとか掃除し終わった後、バーナードがそう提案した。ドラゴンが彼らの部屋への入り口を守り、グループはこれからの計画について話し合った。

たまたま降りかかった不運を問題にする冒険者たちと、バーナード、ヴィンセントとの間で、口論が持ち上がった。マヤには彼らが不満をいう理由がわからなかった。彼らが敵から奪ったゴールドや宝石を集めているのを見ていたからである。
そしてマヤは、デーモンの襲撃でメアを失ったテイマーを見て、そのグループの苛立ちを少し理解した。マヤは彼のところに歩いていって何か話しかけたかったが、そのときケンが彼女に向かって叫んだ。

「マヤ、こっち! これを見ろよ!」

彼は、床の片隅にある巨大な角のついた頭骸を指差していた。バーナードにもそれが聞こえたので、気分を変えるいい機会だと思って、急いで歩いてきて言った。

「ああ、デーモンの頭骨ですね。なんと貴重なものを!」

全員がバーナードの視線をたどり、ちょうどケンがその巨大な頭骨のそばを歩いて反対側に来たのを次の瞬間、彼の姿は忽然と消えてしまった。

「ケン!」

マヤが叫んだ。バーナードが駆け出し、残りの人たちも彼の周りに集まった。マヤとハーモニーは肘で周囲をかきわけて前に進んだ。さきほどケンが立っていたところには、大きな穴が開いていた。彼は奇しくも、隠し扉を発見したのだ。

「おーい!」

バーナードが穴に向かって叫ぶと、彼らはうめき声が帰ってくるのを聞いた。マヤは彼を追って何も考えずに飛び降りた。
数分後、グループの大部分はケンの見つけた入り口から下へと降りていた。さきほどのテイマーはドラゴンの飼い主と一緒に部屋にとどまって背後を守り、彼らはケンに怪我がないかどうか世話をしていた。

「だれかお願いできますか?」

薄暗いトンネルを見下ろしながら、ヴィンセントが言った。マヤには、数人の魔術師が同時に "In Lor" と言うのが聞こえ、次の瞬間に目の前の道が明るく照らされた。彼女は光源がどこにあるのかを探そうとしたが、皆がトンネルを降り始めたので彼女もハーモニーについて歩きだした。遠くから、低く響く音が聞こえていた。
彼らがいたのは、狭くて曲がりくねった道で、ときどき小さな部屋に繋がっていた。それぞれの部屋には何者かに使われていた痕跡があったが、そのダンジョンの住人はなかなか見つからなかった。

ある角を曲がったとき、彼らは天井が高く間取りも広い大きな部屋に出た。しかし彼らの注意を引いたのは、部屋の隅にうずくまる大きなデーモンだった。ハーモニーは本能的に呪文書に手を伸ばし、ケンは静かに剣を抜いた。
数人の魔術師が召喚呪文を唱えはじめたときに、デーモンの目がカッと開き、裂けた大きな口から低くうねるような音が聞こえてきた。

「立ち去れ!」

(第三章へ続く)








23:19 2017/08/15

by horibaka | 2017-07-13 23:17 | その他 | Comments(0)
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