BNNアーカイブ 遙かなる大地の果てに ~聖なる器~ |
ローカルニュース [戻る] 遙かなる大地の果てに ~聖なる器~ 投稿日:2003年6月10日 Izumo 「これで全部ですよ」 グラグラと山積みになって今にも崩れ落ちそうな本の上に、頼まれた本を整えながらロックに渡す。机の上もすごい有様だ。無造作に開かれた本は開かれたまま何段にも積み重ねられ、かろうじて机が見えるところはロックの手の届く場所だけになっている。 見かねたジーンが片付けようとするとロックは言った。 「あ、そのままにして置いてくれないか?」 他人から見れば、単に雑然と本が散らかってるだけに見れるこの状態も、ロックにとっては十分に整頓されており、どこに何があるのか分かっているようだ。 ジーンは、やれやれという表情を浮かべつつも、無造作に開かれた本のひとつに目が止まった。 「先生、これは?」 「呪いにかけられた人に贈る本」(錬金術師 アーウェン著)の一説より抜粋。 「呪いには幾つかの種類がある。身体を蝕むもの、物に宿り持ち主を呪縛するもの、その者の未来を呪うもの・・・。生まれ出でた人の命がいつかは老いて死ぬという運命も、一つの呪いかも知れない」 「もし呪いを解きたいのなら一番有効なのは“奇跡の水”と言われる水である。この水を口に含み飲み干せば体内から身体を蝕んでいた呪いを排出し浄化することが出来るらしい。ただし奇跡の水はそのままで飲むことが出来ない。その水は清らか過ぎて猛毒であり、“聖なる器”以外ですくおうとすればたちまち普通の水になってしまう」 -------------------------------------------------------------------------------- 「-聖なる器は遥か悠久の時代より存在するといわれる伝説の鉱石から作られる。作成者はオフィディアンと呼ばれるヘビの一族で、人ではないらしい。何故彼らがそんなものを作ったのか全くもって不明だが、私の仮説では猛毒を体内で維持するために作ったと考えている。聖なる器に注がれし液体は純粋且つ限りない純度を保ち、悠久の時代から息づく不思議な力が体内からあらゆる呪毒を浄化し体外へ出してくれる。そう、これはあくまで予測だが、命の終末である“死”という呪いすらも浄化出来るのではないだろうか-」 「効能でいえば、グレーターキュアポーションと酷似する。しかし決定的な違いは毒素のみならず呪素すら解くということだ。もしあなたが、呪われた事を自覚するなら、“奇跡の水”と“聖なる器”を探してみては如何だろうか?もちろん、それは、“探しつづける呪い”かも知れないが」 ロックはガシガシと頭をかきながら言った。 「ああ、それはある学者の呪いを解く方法の論説なんだが、どうも腑に落ちなくてね」 きょとんとした顔をしながらジーンは聞く。 「腑に落ちない…ですか?」 「こちらの本では、また違った解釈なんですよ」 ロックは積み重ねられた本の山を崩すと、一冊の本をジーンの前に開いた。 「違う解釈ですか?」 二人は難しい顔をしながら別の本をのぞき込んだ。 18:37 2017/07/03
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by horibaka
| 2017-05-06 18:36
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